28.師弟関係の可能性
「さすが某の見込んだ猫。すでに5つの歩を集めるどころか、18すべての歩も身につけてくるとは…」
ジョンさんの元へ戻ってきた。
18すべての歩とは?と思ったら、どうやら生活魔法や、あと各属性の初級MP5魔法も一部含まれるらしい。
前から、漢字の魔法とカタカナの魔法があるのが不思議だったのだ。最初は生活魔法だけがそうなのかと思ってたけど、初級MP5魔法にも地味に漢字の魔法が混ざってるからね。『灯』とか。あと『暗』『雷』『接』『治癒』なんかもそう。
どういう法則?て思ってたんだけど、あれは遁術の流用?というか、流派が混ざっちゃったみたいな感じなんだって。へえー!
元々はたぶんカタカナの名前があったんだろうけど、効果が似ていて発音が簡単な方へ引っ張られたのだろう、とのこと。
『ティルソイル』より『耕土』の方が音が短いとか、そういうことか。なるほどね~。
そんな雑学を聞きつつ、新しく無道の走の術を教わる。
「無道の走は、歩の『練糸』の派生でもある。自らの魔力を糸にするのが『練糸』、そして『魔紡』は魔法の込められたものから魔力の糸を引き出す術よ」
「ほおん…」
…どゆこと??
ジョンさんが手を出せというので、猫は再びちょーだいのお手、おピンクの肉球。ミーさんはベビーピンクの肉球でしたな。肉球の色、ピンクといってもそれぞれに個性があるもの。
さておき、猫の手に置かれたのは糸、ではなく、玉。
これは見覚えがとてもあります。
「『魔法玉』にゃん?」
「いかにも。猫も知っておったか」
「猫、錬金術師にゃんよ~」
「おお、それは喜ばしい」
ジョンさんいわく、『魔紡』とは『魔法玉』から魔力を引き出して糸にする魔法だそうだ。これによって引き出された糸には、『魔法玉』に込められていた魔法が宿っている。
「『二重詠唱』で魔法と『練糸』を使うのと同等の効果が得られる。が、『魔法玉』から引き出す利点は、己の使えぬ魔法であっても使えることだ」
なるほど。
無属性しか持ってなくても『魔法玉』を揃えておけば多種多様な糸が出せる、と。
「…『魔法玉』を投げればいいにゃん?」
「『魔法玉』は待機には向かぬ」
罠を張ったり、持続性のある効果を発揮するのには向かない。それはそう。
つまりだ。
『雷魔法玉』でビリビリ感電する蜘蛛の巣を作ったり、『光魔法玉』で光り続ける糸玉を作ったり、が出来る。
な、なるほど???
『鍵魔法玉』とかだとビミョーだな?
「もちろん組み合わせには十分気を付ける必要がある」
「猫は自分で『魔法玉』作れるけど、自分が使えない魔法の『魔法玉』は買うしかないにゃん?」
「それは当然、そうなる。この村には専門の錬金術師はおらぬゆえ、自由都市から取り寄せることになるな」
お取り寄せ!?
「『魔法玉』が売ってるお店なんてあるにゃん?」
「もちろんある。猫は錬金術師の店に行ったことがないのか?」
「ないにゃんね~、鷹の目商店街には詳しくないにゃん」
「鳩ポッポ商店街にもあるぞ」
「にゃん!?」
鳩ポッポ商店街についてはそれなりに詳しいつもりだったので、ちょっと屈辱感…。
鳩ポッポ商店街の方は生産向け、鷹の目商店街の方は戦闘向けの魔法玉の取り扱いがあるそうだ。ジョンさんから両方のGPSを発行してもらう。
……お、鷹の目商店街の方はかなり奥地にあるのね。上級者向けの区画だ。道理で見たことないはずだ。
鳩ポッポ商店街の方は、脇道だなあ。本屋さんもそうだけど、こんなんGPSないと辿り着けないだろっていう店、結構あるよね。そこ入っていいの?て道がかなり多かったりする、自由都市。
今ふと思ったんだけど、これ、両方とも錬金術師のお店、てことよな。
ということは錬金術師のNPCがいる。
もしかして、もしかすると、錬金術師の師匠になってくれたりしちゃう!?
ROM金術師よりNPCの方が秘密主義じゃなかったりするんじゃない!?
自由都市に帰る楽しみが増えてしまったなー!
そういえば、アトノ島に行くときに、叔父さんが自由都市で錬金術師やってるっていう漁師の少年がいたな、あの貝殻の。
あの人も探したらいるのかなあ、て思ってたのだった。まずはアトノ島というかポーツであの少年漁師を探すところからになりそうで、果てしない人探しクエストだけども。
くぅ、GPSもらっておけばよかった…! 叔父さんの個人情報くれるかどうかわからんけど。
ハイ。
錬金術師に会いに行く前に、まず『魔紡』を覚えます。
といっても、意外と簡単だった。
スススッと出来てしまったのでジョンさんには驚かれた。
猫は錬成陣で『魔法玉』に魔法を込める方を知っているから、逆に魔力を引き出すのもわかりやすいのかもしれない。
無属性で『練糸』をする前に、まず『ビー玉』にプールするような。実際に『ビー玉』使うわけではないんだけども。
『接』で『魔法玉』から押し出して、ちょっと『ジュエル』しておくような。しないんだけども。
そのプールした魔力で糸を作るのが『魔紡』だ。魔力の糸玉を先に作るという意味では間に『渦』もいれているような気もするし、なんだかいくつかの簡単な魔法を組み合わせて使っているようで、ちょっと面白い。
こういうのって魔法のランクが上がるほどに、ややこしくなってくるんだろうねえ。
「そういえば、気を練る術はどこへ行ったにゃん??」
「練っておろう。今、まさに。更に魔法玉を使えば、魔力(MP)をその分節約できる」
「た、たしかに…!」
ジョンさんのいう「気を練る」はたぶん『魔力操作』だな。『魔紡』は、『トランスファー』を回すのに似た操作感がある。
前に『右巻き、左巻き』ていう魔道具の魔力構造に関する本を読んだんだけど、そのときに「属性によって巻き方が異なる」て話が書いてあった。それを踏襲するのか、火属性の『火魔法玉』から引き出すのと、光属性の『光魔法玉』から引き出すのでは巻き取り方が違うっぽい。
うーん、『闇魔法玉』なんか完全に光と逆転してる。猫は『光魔法玉』のがやりやすいな。これ、属性で得意不得意ありそう。
属性を持ってるかどうかというより、ミニゲームやるのに右ボタンが得意か左ボタンが得意か、みたいな違い。
全属性試してみて、使いやすい『魔法玉』を揃えるのがいいのか、それとも使いにくいのは練習するのがいいのか、悩むところ。
ハイ。
悩みつつも『魔紡』を無事に習得した。
ついでにピロンと通知音とともにウィンドウが現れ、『無属性魔法』のラーニングを教えてくれた。
やったぜ。
…やったぜ!!!
ついに!
魔法ラーニングはほんとにあったんだ…!
無属性魔法は『渦』『インパクト』『ジュエル』『トランスファー』『マジックセンス』『フック』『パウダー』『ターゲット』『接』『練糸』『魔紡』と11個目。
11個目で覚えるのか、それとも『ジュエル』は『魔法オーブ』で習得したからノーカンなのか。…うん、たぶんノーカンだなこれ。
そうじゃなければ、インプットで魔法10個でもラーニング出来ているはずだ。それで出来ているなら、金でSP節約する方法として掲示板や攻略サイトに出てないのはおかしい。
あと、もしかしたらだけど、師匠がいる、というのも必要なのかもしれないな~、とちょっと思ったりした。ジョブ派生の条件みたいだし、そういうのありそうかなと。
つまりこの『無属性魔法』ラーニングはジョンさんのおかげ。
…、あんまりありがたい気持ちが沸いてこない不思議よ……。
「さて、猫よ。次は異なる道の走の術を覚えてくるか、あるいは再び歩を5つ覚えてきたら、新たな無道の跳を授けよう」
やはり跳ぶのか。
「にゃん~、それって、この村以外にも教えてくれる人がいるにゃん?」
この村で更に5個の術を覚えるのは、さすがに無理だと思うのよ。さすがに見知らぬ人の家に「たーのもー」ってするのは猫もためらわれる。
ジョンさんは目を糸のように細めて笑った。やめて怖い。
思わずNPCマークの色を確認してしまう。この限りなく黄色に近い黄緑カラーよ!
「もちろんこの村だけとは限らぬ。我々はどこにでもいる蜘蛛ゆえ」
蜘蛛の巣○ェット買ってこなきゃ…と使命感を抱きたくなる笑顔だ。
ピロロンと音がしてウィンドウが生えたと思ったらジョブ『ニンジャ』に就任していた。
アイエエエエ!
…いや、わかってたけど!
十八道遁術はどうなったのさ、と思ったら『生活魔法(十八道遁術)』になってる。なんてこった。猫の生活魔法さんが汚染された…!
統合ラーニングおめでとうSPを楽しみにしてたのに裏切られた…、おのれジョンさん。
まあ18属性おめでとうはもらったけども。
生活魔法が基礎になってるってことは、この世界のニンジャって、忍ぶ者というより、亡国の血筋を抱えて耐え忍ぶモノって意味でニンジャなのかもしかして?
昔はともかく、特に今は隠れたりしてないやつだったりする?
ちょっと腑に落ちない気持ちになりつつ、猫もニンジャの仲間入りをしたのだった。
猫は…、猫はちゃんと忍ぶぞ!!
そんなこんなで明日には自由都市へ帰る予定。
今日は特に予定もなく、村でやることもないので、マイルームのソファでくつろぎつつ掲示板を眺めている。
村の周辺うろうろしながら採取とか、ちょいちょい出るジェリやらフルクの亜種やらと様子見つつ戦ってみたけど、やっぱり村周辺は適正LVギリということもあり、かなりきつい。
数回でギブアップ、戦闘はお預けとした。
ジェリはともかく、フルクは仲間を呼ぶから、猫とは相性が悪い。
ミミットが出たと思ったらマッスルミミットだったので、ピピちゃんが頭をよぎってちょっと怯んでしまったりした。猫がためらってたらルイが突撃してしまったので、ちゃんと倒したけど。ルイったらお強い。さすが!
村外で長く狩りを続けるのは難しいし、村の中は一通り巡ってしまったしで、マイルームまったりなのだ。
なぜ掲示板をみているかというと、なんと『マレビトダンジョン』の続報が来たのである!
公開された情報を見る限りでは、黒月夜で鏡月夜のイベントだったけど、おそらく精霊関係ノータッチだったっぽい。
隠してたらわからんけどもね。
幽世の澱みにいって神さまに遇うイベントについても触れてなかったので、なかったのか、いかなかったのかも不明。
イベントとしてはこちらと同じく、クエストからの堕ち神戦だったそうだ。
そして堕ち神退治で終わった後、クエスト中になんか怪しかったけど結局なにもなかったなあという場所を調べにいったそうな。
すると『DPを使いますか? 0/500』という表示が出た。ためしにDPを使ってみたところ、『マレビトダンジョン』が生えたそうだ。
DP消費方法が来た!!
『マレビトダンジョン』は3章21話
『右巻き、左巻き』2章37話
ともに名前程度が出てくる
※マレビトダンジョンの登場回間違えてたので訂正
魔法ラーニングについては猫が正解で、
・魔法10個覚える
・師匠から魔法を教わる
両方揃えて初めてラーニング。
魔法師NPCが師匠になってもらうには、教本で7つ以上魔法を覚えている必要がある。すると「見所がある」と師弟関係を結ぶイベントが発生する。場合によっては、魔法師の派生ジョブへも発展する。猫の場合、これがニンジャだった。魔法師+○○の複合職。
○○の部分は人によって異なり、魔法師+料理人で忍者飯極めるものもいる。スタミナならまかせろー
評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。
昨日はお祝いをありがとうございました。
私だけが楽しい物語が、私と誰かの楽しい物語になって、私とみんなの楽しい物語になっていく。そんな感慨があります。
これからも私が楽しい物語が、あなたの楽しい物語でありますように。
楽しく書くぞー!