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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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26.ニャアン!

お待たせしました、連載再開です


◆前回までのあらすじ◆

隠者の村のNPCジョンからニンジャになるための課題を出された猫。せっかくだから妖精が使うという幻属性の魔法を得たいと考えた。

そして村をうろついていて思い出した。

黒月夜にBOSS戦した泉に、妖精がいたということを…!

ついでに祠も参っとこ。

 結論からいうと、泉まで行かずともかくれんぼの神の祠はあった。そう、探し物の神の祠の隣に。

 見つけると祠が移動してるのは、神殿巡礼のときもそうだったね。


 どうやら猫は『探し物の神』よりも、『かくれんぼの神』の方が加護が大きいらしい。名前をもらった分だろう。祠の存在感がかくれんぼの神の方がある。具体的にいうと発光してる感じが強め。

 こういう変化があるんだなあ。神の寵愛とか受けたら、祠がキラッキラに輝いちゃったりするんだろうか。ゲーミング祠…。それはそれでちょっと面白そうな。


 お世話になりましたにゃーん!とそれぞれにお祈り。特に何事も無し!

 探し物してないし隠れてもいないし、毎回なにかある方が怖いよな、とは思えども、なんかあってほしいと思ってしまう複雑なプレイヤー心よ。


 祈り終えたら泉へ。ちゃんとセーフティエリア伝いに行けるルートで移動。


 あれ? 大分雰囲気変わったな。

 深い森に隠された暗い泉、という感じだったのに、今は木漏れ日が射し込んで水面が輝く、きれいな泉だ。

 これはクエスト終えたからここはもう怪しくありませんよ!アピールだろうか。

 …黒月夜の精霊スポット、大岩の方になっちゃったりしてない? 大丈夫??


 通せんぼ妖精は、探したら泉の傍の岩で休んでいた。猫を見るとぴゅんと飛んできて、頭上高く上っていく。ちらりと猫を見下ろして、何かをポンと放り投げてきた。そしてバイバイ、と手を振って消えた。手を振り返す暇もなかった。

 投げられたものはプレゼントだったようで、猫のインベントリに自動で吸い込まれている。


 プレゼントはそのまま、NPCからの贈り物で、どんな大きさでどんな渡され方をしようとも自動でインベントリに収納される。

 攻略サイトでちらっと見たけど、崖から落ちてしまうプレイヤーにNPCが「なんということだ!」と言いながら木箱でプレゼントを投げつけてきたイベントがあるらしい。「なんということだ!」でコメント欄が埋まっていた。

 つまり妖精が投げる石くらいどうということはないのである。


 インベントリを確認すると、妖精からのプレゼントは『金月影かなつきかげ』だった。

 おお、これ『ムーンストーン』からの変化したやつだ。


 ティアラさんから聞いたけど『ムーンキャッチ』は球体しか作れないそうだ。それ以外の形にすると『ムーンキャッチ』にはならない。いずれは硝子で『ムーンキャッチ』のレシピも試したいところだが、まだまだ『硝子瓶』も失敗が多く、腕が足りないのだとか。

 ティアラさんは「精進ですわね!」と気合いを入れていたので、出来るのも意外と早いかもしれない。1人じゃないしね。楽しみ。


 妖精からもらった『金月影』は、球体ではなく柱状結晶。水晶に似ているが、水晶をはじめとする石英は六角柱状結晶になるので、柱状結晶のこれは長石と思われる。

 『水晶石』が丸っこくて透明度の高いアイテムなので、水晶と名はつくが石英ではないか、公式が鉱物にあまり興味ないのかな~とか思っていたのだが、長石が柱状結晶で描かれてるってことは、やはり『水晶石』は石英じゃない、の方が正解なのかなー。いや、宝石が魔物産だったりする時点で地学とは全然関係ない話になるからわからんけども。

 ハイ。猫としては『ムーンストーン』が柱状結晶なのは嬉しい。


 形状といえば、『宝硝子ビジュー』では形によって精霊の好みがあったから、『ムーンストーン』には入りたくない、入れないって精霊も、もしかしたらいるのかもしれない。『ムーンキャッチ』も同じく。両方用意しておくと安心かな?


 あれこれ考えつつ、川沿いを下って大岩に到着。

 昼に見る大岩は、泉に負けず劣らずキラキラしている。加護のせいなのか、それとも単純に日差しにきらめいてるのか判断がつかない。きれいな岩になったもんねえ。

 相変わらず蔦は巻き付いているけど、それさえもシャラさまを見た後は飾りのように感じる。


 ちなみに精霊、同化率100%になると自動で『固定』されるらしい。シャラさまは大岩に入ると同時に同化率100%→神格化だったようだ。

 用意された鍵穴に鍵がしっかりはまった感。


 この大岩は泉にあった異界の扉を封じるために祠としたものの名残だ。泉の異界の扉は大岩が崩れた後も、神さまが頑張って封じていたが、祠もなく、忘れ去られていったことで堕ちてしまった。そして異界の扉が広がりかけていたところに今回プレイヤーがやってきた。滅びた堕ち神さまは、自らの体を世界へ還すことで異界の扉を封じる。

 大岩は元々泉と対の存在だったので、泉の扉が広がったときに、こちらにも異界の扉が開きかけていたようだ。それをシャラさまを祀ることで封じ込めた。


 ……とまあ、こんな感じだったらしい。

 泉はわかってたけど、大岩にも異界の扉があるのは知らんかったな…。


 これ、シャラさまルートにいかなかったらここにミニダンジョンかなにかが生えたんだろうか。

 ちょっと悪いことをしてしまったような、でもこれはこれでよかったような。

 まあ何かを選ぶということは、常に選ばなかった何かがあるということだ。哲学!


 さて、シャラさまにもお祈りしておこう。

 これからも村をよろしくにゃーん!


『あなたの縁が続きますよう』

「にゃん!」


 返答があってちょっと嬉しい。

 絆値はんち系加護はいくらあってもよいもの。




 一周して村へ戻ってきた。

 妖精さんから幻属性はやはり無理だったが、帰る前に一度は泉も大岩も祠も巡っておこうと思ってたからね。ちょうどよかった。


 さて次はどこを探そうかな~と村を歩いていると、ギルド前に見覚えのない荷車が止まっている。おや。プレイヤーかな、NPCかな?

 荷車の横で水樽に頭を突っ込んでいるのは、大きな鳥だ。おお、鳥型の歩行モンスター初めて……じゃないな、ペングーがいた。大型の・・・鳥型歩行モンスターは初めて見る。

 体高2m以上ありそう。エミューっぽい。このくらい大きいと、魔法型じゃなくてタンクだろうなあ。クチバシでっかい。翼はツヤツヤ、しっかりお手入れされた愛され鳥だな。


「ニャアン!」


 猫の声?

 振り向くと、そこにはふんわりと白い毛並みの猫。

 羽根つき帽子に狩猟コート、カボチャパンツ、長靴。ふんわりと長いふわふわ尻尾には青いリボン。

 NPCの風猫族だ!

 ふわふわ白毛の風猫族はぴょんと飛ぶように猫の元までやってくると、猫の両手を掴んでくるくると回った。うわわわ。


「今日はなァんてニャンだふる! 我が同胞、初めましてニャン!」

「は、はじめましてにゃん! 」


 大きな青い猫目に長い睫毛。ピンクのお鼻にピンと立ったおひげ。笑うようにゆったりとまばたきするのがびっくりセクシー。なんてこった、ふんわり尻尾の先までつやつやキューティクルの美猫だ。

 え、かわいい。

 風猫族、かわいいな!? お猫さまだ!


「ニャニャーン! どこでもいつでもがっつり商売、ミーのお店に御用ニャン?」


 猫の手を放してくるっとターン、そして両手を広げてポーズ。あざとい! かわいい!

 なおニャニャーンのニュアンスは「じゃじゃーん」である。


「何のお店にゃん?」

「ミーのお店ニャン。商品は気まぐれ一期一会、ここであったが百年目ニャン~。早い者勝ち、持ってけドロボー、衛兵さんだってミーに夢中ニャン?」


 口上を言いつつ、荷車の幌を開けて商品を手際よく並べていく。テキパキしている。


「ニャン! ミーの店へようこそ同胞、今日はお安くしちゃうニャン!」


 ふんわりほっぺにまふまふの手を当ててぶりっこポーズ。推せる…!


 しかし猫も、だてに風猫族をやっていない。自分の種族のことは、ちゃんと学習済である。覚えててよかった風猫族マニュアル。


 風猫族はこう見えて強かで、ケチで、投げやりで、根に持つ種族なのだ!


 特に風猫族相手の値段交渉はご法度。

 風猫族はそのときどきで適当に、売りたいものを売りたい値段で売っている。相場観というものがなく、自分に必要ないもの、相手が必要にしているものは安く、とりあえず間に合わせで出しているものは高かったり、適当な値付けがされている。

 だからといって、よかれと思っても値段交渉をしてはいけない。なにせ相手は猫なのだ。新しく値付けするのが面倒なのである! …実にわかりみが深い。


 なので交渉するとすごく嫌がられるし、好感度が下がると言われている。

 相場よりはるかに安値であってもその値段のまま買ってしまえばいいし、気になるなら「お釣りは取っておいて」するとそちらはニッコリ受け取ってくれる。攻略サイトに書いてあった。

 なお『騙すと良くないことが起きる』と言われる風猫族だが、売り物が安いのを何も言わずに買うのは『騙す』には入らないそう。そこが要注意なんだって。


 ミーさん……名前がミーなのか一人称がmeミーなのかわからないけど、仮称ミーさんの店は、荷馬車の中に小さな絨毯を敷いて、ところ狭しと広げられている。


 大小さまざまな石の欠片、束ねられた植物、何かの花びらを瓶詰めしたもの多数。

 いろいろな形に削られた木片、つぎはぎのある革ポーチ、何が入ってるかわからない小さな巾着袋。

 色とりどりの鳥の羽、蝶の羽、虫の羽、いろいろなサイズがそろっている。こっちは爪、こっちは牙。小さかったり大きかったり、欠けてたり変色してたりもする。小動物や、魚の骨。あるいは獣の割れた頭蓋骨。不揃いの鱗。

 サイズの揃ってない紙束に、左上に穴を開けて紐を通しただけの何かのデザイン画。たぶん地図?の切れ端。羽ペン、インク、印章、蝋燭、ランプとスプーン、筆、なんか丸い…ペーパーウェイト?


 すごい。

 なにこれすごい、何がなんなのかさっぱり何もわからないけど、猫、こういうの大好き!

 お、おお、お店ごとください、出来たら店主さんも一緒に…!という変態ムーヴをかましそうになるところをぐっと堪える。


 深呼吸、深呼吸だぞ、ラン。



「全部くださいにゃん」

「ニャアン!?!?」




 お猫さまに怒られてしまった。


「ミーたちがお買い物大好きなのはわかってるけど、お買い物には美学がないと駄目ニャン!」

「び、美学」

「同胞も商売人ならわかるニャン? もし目の前の商売人が店のものを全部買ったらどう思うニャン?」


 商売人が店のものを全部買う? ちょっと欲しくなってしまったのでは?と真顔で返しそうになったが、一旦とどまる。


 ええと、たとえば自由都市で露店してて、商人が買いに来て、「この店のもの全部ください」と…。


「転売にゃんね!」

「そうニャン!!」

「にゃああ~~、そんなつもりは欠片もなかったにゃん~~!」

「つもりがあったら戦争ニャン~~!」


 ぺしぺしと肉球ふわふわ猫パンチをされる。あああん。

 なお荷馬車に入れてもらい、膝を付き合わせて座りつつの会話である。風猫族、関節が柔らかいからか、ナチュラルに正座する。


「申し訳なかったにゃん~、あまりにも好みのお店過ぎて買い占めたくなっちゃったにゃ…」

「ミーのお店は最高だから仕方ないニャン! 反省出来る同胞はどうすればいいかわかるニャン?」


 白猫は青い目をぱちぱちとウィンクする。

 うっかり貢ぎたくなるところだが、違う。


 風猫族マニュアルその2!

 風猫族は、自分が出来る範囲内で頼られるのが好きだ。わりと世話焼きな部類に入る。

 しかし自身の「楽しみ」の範囲内でしか手を貸してはくれないため、人によっては突然手を離されたとか、気まぐれな手伝いと感じることもある。

 猫にとってはそらそうよ、な点でもある。猫ちゃんが献身的だったら解釈違いもいいところ。


 風猫族の対応は「求めよ、さらば与えられん」であり「そこにないならないですね」だ。


 つまり今、ミーさんが求めているのは――猫からの要望!

 「こんなアイテムを探してます」という話を聞きたいのだ。…たぶん!


 猫が探してるアイテムか~~。



ニャアン!

ついに猫以外の風猫族の登場ニャン!

次回もにゃん×ニャンのにゃン倍増でお送りします。


(当たり前すぎて書いてなかったけど、猫も猫になる程度には猫派なので、お猫さまに弱い)


休載中も、評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。いつも励みになってます。

Xで感想くれる方もありがとう、ブクマはだいたい私の犯行です(閲覧用鍵垢ゆえ影から失礼しております)


今週も月曜から金曜まで猫をお届けします。

まったりいきましょう~。

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫からの要望! ミーを飼いたい、でしょ?
[一言] 待ってたにゃ〜ん!と読み進めたら倍増にゃ〜ん幸せにゃ〜ん 今後も楽しみにしてるにゃ〜ん
[良い点] 猫増えた!大歓喜! [一言] 猫パンチはご褒美です。 リアルでも、猫の下僕は貢ぐ運命ですから
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