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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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22.弟子への勧誘

 鏡月夜のクエスト、3日かかったのでなんだか感慨深い。ばたばた忙しかったからか、終わってみたらあっという間だった。

 気になる今回のクエストのリザルトはこちら!


 クリア報酬はDPが合計で40、そしておめでとうSP10、シャラさんからの加護(人によっては探し物やかくれんぼの神付き)、精霊、または精霊のパワーアップ。

 金銭的な報酬は、村から事件解決の御礼ということでそれぞれに2万zが支払われた。これは…ポータル代! 交通費支給、てやつですな。


 個々人がギルド経由で依頼受けた分については分配するほどの大金にはならないし、それぞれ依頼達成のための持ち出しもあるし、これはそのまま個人のポッケにしまって終わりだ。

 ギルドを通して依頼を受ける形で進むクエストが多かったので、ランクポイントはそこそこ稼げた。


 BOSS戦は『闇人形』も堕ち神もドロップ無し。

 闇人形は、実はシャイアネイラさんと融合したときに、首から下も崩れ去ってしまった。なのでそもそも残ってない。そして堕ち神も、泥で体が作られていただけで中身はなかったらしく、溶けて終わりだったんだって。


 それから、商人の後日談、というか前日譚。


 商人は落札した人形が思ったようにはならずムシャクシャしていたところ、学園都市で人形師を名乗る人物から声をかけられたらしい。

 そこでシャイアネイラさんについて聞き、その人形は双子なので、一人分では直せず価値がない、二人分あるなら買い取ろう、と大金を示されたそうな。

 その人形は元々その人形師のものだったが盗まれてしまったのだ……などと言葉巧みに操られ、シャイアネイラさんを盗み出す計画に乗せられたそうな。

 村を闇風邪にして全員寝込んだら警備も薄くなるね!みたいな杜撰な計画だ。その手段や方法についても、人形師に言われた通りにやった、とのこと。


 たぶんここから、学園都市方面で連続クエストとかに発展していくんじゃなかろうか。おそらくは人形を修理・製作する方、人形創作家ドールメイカーのクエストだろう。

 これは『鍛冶』『細工』『ガラス工』『陶芸』、そして『精霊』が噛み合ったことで出てきたものと思われる。硝子連合、大勝利にゃん?


 ちなみに送られてきた荷物は大量の『光風邪薬』で、商人としてはシャイアネイラさんを盗み出したあと、薬を残して発つ予定だったみたい。

 猫たちが関わってなければ、もしかしたらシャイアネイラさんは盗まれてしまうけど、その後にみんなの風邪は薬で治って元通り…な感じだったのかも?

 なお本人は闇風邪の対策していたんだけど、目覚めた闇人形から一撃食らって倒れたらしい。民間人にBOSSのデバフ攻撃はたいへん効く。そらそうよ。


 そんなわけで猫としてはちょっとスッキリしない終わりだったけど、元々、猫のLVで出てくるクエストではなかっただろうから、そこは仕方なし!


 まとめてみると金銭的にはぜんぜんだったけど、ポイントその他はまあまあよい感じだったのではないかな?


 それに、このクエストをクリアしたことで解禁されたこともある。

 話はまずナナちゃんから出てきた。


「お礼になるかはわかりませんが、私たちが持つ技術や知識について、あなたたちが求めるものであれば、お教えしましょう」


 そう、ようやく精霊使いのチュートリアルが解禁されたのである!

 やったぜ。


 それを皮切りに、隠者の村で得られるジョブ知識関連に新しい道が出たりしたらしい。『調薬』なら新たなレシピと特殊アーツのような形で。

 猫も農業ギルドで新たな種が解禁されたりしたけど、そういうのとはまた別で、件の邪道クエスト関連で、新しいのが出たんだって。


 猫はまだそっちのクエスト触ってないから関係ないな~とか考えてたらとんでもないのがきちゃった。



「そなたには完敗であった」

「……戦った覚えがないにゃん」


 ジョンさんである。


「一度ならず、二度までも背に手を当てられるなど一生の不覚…ッ!」

「いつの間に鬼ごっこしてたにゃん???」

それがしの身体に許可なく触れたものなど、これまでいなかったというのに!」


 なんかやたら悔しがっているけど、最後のはいただけないな!

 猫がセクハラしたみたいじゃん!


「看病にゃんよ~!」

「くっ、情けなど不要!」


 さすがジョンさん、人の話を聞く気がまったくないな!?

 助けてナナちゃん先生!


「あらまあ、ジョン。おまえもようやく弟子を取る気になったのですね」


 先生、味方じゃなかった。


「ハッ。この猫ならば、某の技を伝えるに不足はありませぬ」

「不足あるにゃん。めっちゃあるにゃん! このか弱い猫に何をやらせる気にゃん!?」


 ジョンさんは斥候系と噂こそあるけど、クリアした人が黙秘してるので何のスキルかは謎ってことになってる。でも対戦した人からは素早さ特化でトリッキーな暗殺系だろうとのこと。


 猫は逃げ隠れするのは得意だけど、逃げ隠れしながら急所を狙うとかは、荷が重い。

 猫、自慢じゃないが戦略系は下手くそだし。トリッキーな撹乱とか、ムリムリ。


「猫ちゃんや、弟子になるならないはともかく、お話だけでも聞いといたら?」


 邪道系派生が特にないため一緒に村歩きしていた、お暇なフーテンさんに諭されてしまった。


 本日、すでに硝子連合とのアライアンスは解散している。分配するものも特になかったので、あっさりしたものだった。

 解散といっても学園都市に帰っちゃったわけではなくて、精霊使いのチュートリアルを受けたり、邪道関連のクエストを受けたりでまだまだ隠者の村に残っているしね。フレ登録もみんなとしてもらった。

 それでもチャットがガヤガヤしてないのがちょっとだけ寂しく感じてしまう。なんだかお祭りの後みたい。


『邪道系は派生スキルもあるらしいけど、学習アーツが多いからSPいらないし、取っておいた方がお得だと思うよ~』


 補足説明がPTチャットで届く。

 ゲーム関連の話題をNPCに出すと好感度下がることもあるらしいから、その配慮だろう。こまやか。


「お話聞いたら『話を聞いた以上、返事はハイかわかったのどちらかだ』みたいなやつじゃないにゃん?」

「話を聞いたときにはすべてが終わっている。安心するがいい」

「これほど安心できない話もなかなかないにゃんね~~」

「さすジョン~~」


 フーテンさんがめっちゃ笑ってるのが腹立つ。キィ!他人事だと思って!


「猫よりこっちのフーテンさんの方が見所があったりなかったりしないにゃん?」

「ちょ」

「ふむ……」


 ずずいとフーテンさんを前に出してみると、ジョンさんは目を細めてじろじろと眺める。どうですか、このやわらか具合。


「ほう、トゴノキが巡っておるな」


 トゴノキ???

 頭にはてなが飛び交ったが、ログを読んでわかった。『十五とご』か!

 魔法師のフーテンさん見て十五ってことは、たぶん属性のことだろう。


「そなたに某が教える術はない。しかし手習いでよければ『イザヨイの書(巻ノ一)』を読んでゆくといい」


 イザヨイ…十六夜? いや、でもこっちはログもカタカナだな。なんだろ?

 属性っぽい話が出たあとに手習いといったし教本と思ったんだけど、違うんだろうか。魔法名がイザヨイとか??


「猫もその本読みたいにゃん」

「そなたは気を使うことに長けてはおらん」

「にゃ」


 そりゃ気遣いの人なフーテンさんと比べたら、猫は気遣いがなってないかもしれない……。いや、違うな?

 気…、属性魔法スキルを持ってないってことか?? 『生活魔法』さんじゃダメ?

 長けてはいない、というのであればもしかしたら魔力かMPが足りないという可能性もある。

 ううむ、全部当てはまってしまうな。どれだ。


「術法を学ぶ前に、気を高める術を学ぶがよい。あるいは、気を集める術を。そして某が教える術にはそれが含まれている」

「詳しい話を聞かせてもらうにゃん!」


 MPなり魔力なりを高めたり集めたりする方法があるならぜひ知りたいですね!


『助けて息をするように新要素を釣り上げる猫ちゃんが怖い』

「あっ、PT猫ちゃんしかおらんかった…!」

「怖くないにゃんよ~~」


 チャットをした後でミスに気づくのあるある。

 すまんね、猫はルイがいるから、フーテンさんにはいつものPTは崩して組んでもらっているのだ。リーさんたちとはアライアンスで繋がってる。


 というか猫だってフーテンさんを生贄に捧げようとしただけで、16属性目みたいなのを掘り当てるつもりはなかったんだよ!!



 魔法師の邪道系は『呪言』という『詠唱』の派生アーツなんだそうな。専用装備としてハミを装備することで詠唱の効果が高まる。特にデバフ系魔法に強い。

 銜はくつわともいうあの馬に噛ませるアレ。あれの人体版。杖の代替品であり、どちらかというと指揮杖に近いそう。

 いろいろな意味でかなり玄人向けのアーツに思えるが、手ぶらかつ指輪も無し、実質無詠唱、デバフに効果が高い、ということで戦士系、弓師系には重宝されているそう。鎧兜なら面頬下ろしちゃえば、銜噛んでてもわからんしね。エドさんもそういやマスク装備だった。あれはそういうことだったのか…?


 魔法の発動体としては指輪もあるけど、指輪は多少なりとも器用値を下げてしまうので、器用にあまり振れない戦士職や、器用こそ重要になる弓装備にとっては悩ましい存在なのだとか。知らんかった。


 フーテンさんもアーツとして覚えはしたけど、砲台的には不要な技なので使ってなかったそうだ。そして使ってなかったからか、今回で新しい魔法師の邪道系は増えなかったらしい。

 ヤマビコさんやエドさんは『呪言』を結構使ってたんで、新しいのが出たそうな。


 ううむ、つくづく砲台魔法師って求道的というか、ストイックよな。超特化型、スキルの方向が一辺倒。猫には絶対無理なやつだ。


「俺には猫ちゃんみたいに手広くやる方が難しいから、その辺は向き不向きだね~」

「猫は手広くというか行き当たりばったりにゃんね~」


 その時々でやりたいことに流されている自覚がある。だからこそ、SPだけは死守しているわけだけども。

 邪道系、スキルのこともあればアーツのこともあるっていうから、ドキドキだ。

 ジョンさんのはなんだろうね?




ついに猫も邪道になるときがきた。


どんなネタ装備でもメリットがあれば人は装備するし、気がつけばそれが標準装備になってしまったりするもの。


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。


感想返信中に気づいたんですけど、もしかして感想主の一人称が猫のときあります!?猫になってる…てコト!?

だとしたら返信がとんちんかんになってることもあったかもしれません。ギェ、すみません…。

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― 新着の感想 ―
あー、忍者が巻物咥えてニンニンするみたいなものかな?
[一言] >ついに猫も邪道になるときがきた。 邪道な猫…邪道猫…ジャドウネコ…? ジャコウネコみたいな響きで良いにゃん
[良い点] >「……戦った覚えがないにゃん」 >不足あるにゃん。めっちゃあるにゃん! >どうですか、このやわらか具合。 >『助けて息をするように新要素(中略)~「怖くないにゃんよ~~」 今回、ツボに…
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