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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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20.神さまの救い方

 ナナちゃんは人形遣いでもあるけど、本職は精霊使いの方だそうで、精霊のことを親切に教えてくれる。ありがたや~。

 イベント終わったら精霊使いのジョブについてもちゃんと教えてくれるのかもしれないな。期待が高まる。


『ナナちゃん…。俺には精霊のことなんて一言も話してくれなかったんだが?』

『君はナナちゃんさまにいったい何をしたのかね』

『正直に白状したまえよ』

『普通に献身的に看病しましたけど!?』

『単純にナナちゃんとの好感度が低い説』

『なんで!?』

『チュートリアルしたかしてないかの差では?』

『そうであってくれ…!ジョンが倒せない八つ当たりに5回ぶちのめしたからじゃないよね!?』

『いや間違いなくそれよ。そら低いわ』

『なんでもクソもねーわ』

『お前にナナちゃんさま を任せたのが間違いだった!!』


 人数がたくさんいると、チャットがにぎやかで退屈しない。


 『光源』をポワポワ浮かべて川を下っていき、大岩までみんなで行くことに。


 フィールド移動になるので「イベント中だから何も起きないだろうけど、念のため~」とフーテンさんたちが猫の護衛に来てくれた。

 近くにジョンさんたちNPCもいたのだが「ジョンは信用ならない」とエドさんも言うので…。

 この期に及んでもジョンさん黄色なんだぜ。


 そんなわけでNPC組とは一旦離れる。代わりに硝子連合からNPCの護衛を出してくれるようだ。「ジョンが裏切ったときには俺に構わず逃げろ…ッ!」とか言ってたけどそんな展開はきっとない。あったらトンチキすぎる。さすがに別イベントにしてくれ。



 フーテンさんたちと合流。

 かさばる戦闘装備を半分片づけてくれたのでコンパクトだ。彼らのLVならこの辺で奇襲を受けてもこれで問題ないってことだろう。舐めプ……いやいやいや。

 頭を完全に覆われてる装備だと表情とかわからんし、話すときには戦闘装備って不便だよね。


「お疲れさまにゃん~、大山椒魚は強かったにゃ?」


 範囲攻撃が広すぎて猫には近づくこともままならなかったBOSS戦について聞いてみた。


「強かったというか、タフだったね~、さすが竜」

「竜だったにゃん!?」


 大山椒魚じゃなくて!?


「堕ち神といえば竜なんやで」

「でもなりかけみたいな、中途半端な竜だったわね」


 完全な堕ち神にはなってなかったんだろうか。段階的に堕ちて、最終的に竜になる?

 ちなみに竜とドラゴンは別なんだって。

 竜、と表記はなってるけど、性質的には龍の意味が強いんかね? 強くていろいろな生き物が混ざっている、というイメージの発露なのかも。

 その辺はいまいちわからない。今度、また本でも探しておこう。どの辺にあるんだろねえ。


 しかし中途半端な竜か~…。


「にゃん~、やっぱり更正の余地があったかもしれないにゃんねえ…」

「あったとしても、全員気がつかなかったんだからそこは仕方ないさ」

「たぶん農業関連だったと思うから悔しいにゃん~」

「おん? 農業他になんかありそうだった?」


 幽世かくりよよどみで考えていた、泉の底を浚う説を出してみるがしかし、あまり同意は得られない。


「それだと農家のやることが多すぎる」

「ヒーラーを農家と仮定すればアライアンスにひとりってことはまあないだろうけど、ヒーラーが必ずしも神官農家とは限らないし、6人いた今回は普通に多かったと思うよ?」

「せや、それで終わらんかったっちゅーことは、そもそも取らせる気がないイベントだったんちゃう?」

「今回でもDP20取れてるしねえ」


 そう言われてみるとたしかに。

 ならば、エクストラステージ的なオマケ要素に過ぎなかったんだろうか。これやっておくと戦闘なしでクリア出来ますよ~、とか。


「もしそこにイベントがあったとしても、土を掘るなら採掘だった可能性もあるわ」

「採掘師か、あるいは土魔法師とかね~。どっちにしろ猫ちゃんには手の出せない領域よ~」


 それはそう。

 くう、過ぎたことは仕方ないんだけど、やっぱりちょっとモヤっちゃうのだ。そういうシナリオと言われればそれまでなんだけども!


「そういえば、チャットの感じからすると、もしかして猫ちゃん先に戻ってきてた?」

「猫が一番最初だったにゃんね~。みんなかくれんぼに時間かかったにゃ?」

「あれかくれんぼだったの!?」

「にゃん?」


 見つかっちゃった、て言ってたし、たぶんかくれんぼだった、よね?

 神さまの名前が名前だし、今どこにいるか当てるか、誰がいるかを当てると返事をしてくれる感じだったのかな~と振り返って思ってたんだけど。


「猫はどこにいるか当てたら、神さまがお話ししてくれたにゃんよ」

「どこ…、どこかのダンジョンの中だったってこと?」

「にゃん~、幽世の澱みとか、世界の狭間とかって前は言ってたにゃん。神さまたちの住むところ?らしいにゃ」

「神ってそんな微妙なところに住んでるのかい?」


 そこは猫もノーコメントだ。

 たぶんどこの世界でもない場所…みたいなニュアンスだと思うけども。


「もしかしてあの泉の『まぁだだよ』ってのがヒントだったのかね?」

「あ~~、『もういいかい?』とか声かければもしかしていけたやつ?」

「神さま会えなかったにゃ?」

「会えんかったなあ」

「『灯』を使っても明るくならないし、手探りで調べたら箱?部屋?の中にいるみたいだから、時間経過を待つことにしたんだよ。徐々に壁が崩れてきたしね」


 ぽろぽろと光りながら崩れていく壁から、ふわふわ光が近くに寄ってきて、そこでフーテンさんがもしかしてと気がつき『ムーンキャッチ』を出すと、光が吸い込まれたそうな。

 みんなにも『ムーンキャッチ』を配り、それぞれ精霊を捕まえてきたらしい。ちゃっかりしている、さすがだ。


「お名前つけたにゃ?」

「そうだった。名付けしないといけないんだったねえ」


 それぞれムーンキャッチを手に持ったままだったようで、とんと指で触れて名をつけている。

 それぞれちょっと微妙な顔になるのをニコニコ見守ってしまった猫である。ンフフ。

 名付けた子を人質にSPをむしられた後、SPを戻される気持ちはどうだい…。


 フーテンさんが猫を見たあと、ため息のように笑って、うなずいた。


「ほらねえ~~」


 え? なに、予想ついてた?

 猫が目をパチパチすると、額をぴす、とヤマビコさんに突かれた。


「普通は新しいスキルを取る検証付き合ってくれ言うたら、きっちり詳細を示すもんなんやで?」

「にゃん~、……言われてみれば、そうにゃんね?」


 これは失礼。

 ぴすぴす、ともう二度つつかれた。あいてて。


「ネタバレに配慮したつもりだったにゃん~」

「それにしてはめちゃくちゃ笑顔だったわねランちゃん」

「にゃふふん」


 楽しむ心が漏れ出てしまったな。


「元々猫ちゃんにもらったようなSPだしね~。まあいいか~て感じだったけど。猫ちゃんのことだから何らかの返還はありそうと思ってたし」

「猫は信頼に応える出来る猫にゃんよ~」

「スキル儲けたのは事実や。おおきにな」


 ヤマビコさんは肩をすくめて笑った。別に怒ってるとか気分を害したとかいうわけではなく、猫のために一応忠告してくれたんだろう。

 猫は目先の欲望まっしぐらな猫だからね!



 あれこれと話している内に、大岩へ到着。


 相変わらず川の音がすごい。

 一応『灯』は上げているんだけど、それでもなお暗い。猫は『暗視』もあるからもう少し見えてもおかしくないんだけど、手の届く範囲はともかく、遠くなんか全然見えない。

 たぶんこれは、黒月夜だからだろう。前の月夜はもっと明るかった。


 ナナちゃんがこちらを見るのにうなずくと、彼女はシャイアネイラさんを促す。

 猫たちは川を渡らず、この場で見守る。安全第一。


 精霊だけあって浮いているシャイアネイラさんは川風も気にせず、音もなく浮かび上がって川の上を歩きはじめた。

 ほのかに発光しているので、ヒレの足下を水が流れていくのがよくわかる。川の上を滑るように歩いているのに、長い髪もドレスの裾も、川風とは違う動きでやわらかにひるがえる。それがまるで背景と人物を適当に合成したようで、違和感がすごい。

 幽霊が見えたらこんな感じなんだろな~。現世うつしよの法則が通用しない、みたいな。


 ごうごうと川の音が聞こえる中、シャイアネイラさんは大岩へと辿り着く。


 シャイアネイラさんの発光のお陰で、暗くて見えなかった大岩もぼんやりと見える。彼女が大岩に手を添えると、纏っていた光のきらめきが渦巻きながら大岩のヒビへと吸い込まれ始めた。

 なんだろ、やっぱり文字なのかな? 読めない記号の群れがポツポツと順番に夜空へ浮かび上がり、燐光を上げては消えていく。精霊スポットでみた、終わり間際の漁り火?に似ているような。


 見ているうちに、大岩そのものが発光するように輝き、いつの間にかシャイアネイラさんの姿は見えなくなっていた。無事に入れたのだろうか。


 瞬間、ガラガラと大きな音を立てて岩の表面が剥がれ落ち、ふっと停電になったように真っ暗になる。


 ぅえっ、また幽世の澱み!? と身構えたけどそうじゃないな、川の音はするし、みんなもどよめいている。単純に光が消えただけっぽい。

 しばらくすると、ぽわ、と光が浮かび上がる。蛍のような、小さな光。ぽわ、ぽわ、と増えていく。

 だんだん増えていく光で、大岩の全貌が明らかになる。


 全体的に大岩は一回り小さくなった。

 そしてまるで斜めに切り取ろうとしたような、と猫が感じた、蔦の伸びたヒビ辺りで切り取られるように割れている。主に崩れたのはそこで、それ以外も一皮剥けたように色を変えている。

 まるでドでかい黒曜石だ。不思議と伸びていた蔦はそのまま、石を守るようにぐるりと一巡りしたまま。なんだかしめ縄っぽい。



『おめでとうございます。月のくびきがひとつ繋がれました。SP10とDP20を獲得しました』



 ???

 ………や、ったぜ?


 え、これやったぜしていいやつ?

 軛とかいってるけど大丈夫??

 でもおめでとうされてるし、悩ましいやつだな!?


『月の軛……とは??』

『え、しらん、初耳』

『単語からすると月を繋ぎ止める?』

『たぶんそう?』

『金月解禁くるー?』

 

 その可能性もあるのか。どうなるんだろ?



精霊関係は、感想欄で「ヤドカリ」て表した方がいらしたけどなんかそんな感じ!

(ネタ枠感想と思ってネタ返信した後に気づくわかりやすさ)(ありがとうございます)

大きくなるには新しい住処が必要なんですってよ。



評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

今週もお疲れさまでした。

次回の更新は5/27(月)です。

(先週はみ出た分がやはり収まりきらず。無念の来週に続く…!)

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[良い点] エドワーズさん、隠密に補正もらえるはずの「かくれんぼの神」から加護を貰えず。。。 猫さんも最後に神様の本体?が部屋であることに気づいたから、お名前を教えたけど、そこまで行ける人は少なそうで…
[良い点] 更新にゃーん [一言] こりゃ恐らく何段階かすとっ飛ばしたな? それも猫だけじゃなくて全員思い当たるところもなさそうな気配…… やどかり……言われてみれば確かに大きくなるにつれて住処を変…
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