表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
107/281

13.それゆけ錬金術

 まず考えるのはとりあえず『闇人形』本体はともかく、泉闇虫イズミノヤミムシ対策だな。

 光魔法玉ひかりまほうだまは当然、必要として。


 泉闇虫は『黒くてウゾウゾした虫』で思わず焼き払おうとして広範囲に火がつくくらいだから、群れるのだろう。そして商人が大きな瓶で宿に運んでいて、1匹は外に出てた。これは壺から出たというよりは、服とかについてたんだろうね。

 てことでサイズもきっとそんなに大きくない。いくら夜でも、30cmの虫が体についてたらわかろうて。


 そんなわけで推定10cm以下の虫。こんなん狙って撃ってたら日が暮れ、いや、月も落ちる。

 つまり必要なのは範囲攻撃か。


 『光源』『灯』は、攻撃判定のない魔法だ。例外として光が弱点のものには効果があるが、ダメージではなく怯みを与えるものに過ぎない。

 ややこしいのだが『光源』そのものではダメージを与えられないが、魔法玉にこめれば、ぶつけるとダメージが入る。これは『魔法玉をぶつけたことによるダメージに属性効果が乗る』からだ。

 そしてどういう計算式なのかは不明なのだが、なぜか『ライトバレット』程度の攻撃力が出る。なお『ライトバレット』を込めた魔法玉はその上の『ライトボール』程度の攻撃力が出る…、と、込める魔法より威力が微妙に高まるのが魔法玉による投擲攻撃だったりする。なお掲示板情報。投擲スレよ、検証ありがとう…。


 投擲の攻撃力分が乗るから…という話もあるが、軽く放って当てるだけでもこの効果が出るので、謎の仕様らしい。しかし直接当てないとダメ。

 地面に投げてその周辺を範囲攻撃!みたいな魔法玉は、現状存在しない。

 そんなわけで『光魔法玉』も、転がしてシュワシュワ~とはいかない。


 硝子連合はみな窯を扱う都合なのか、火属性か土属性魔法の持ち主が多い。唯一、調薬の人だけは水属性持ち。光属性はいない。まあ神官になるんじゃなきゃ取らない属性だからねえ。

 このままだと泉闇虫対策が『焼き払う』一択になってしまう。見える山火事の未来…。守らなきゃ、山森。


 ううむ、しかし範囲攻撃アイテムな~。

 聖水のような感じで、バシャッと撒けるアイテムだったらいいのだろうか?

 しかし錬成陣で魔法玉ではなく、水を作る方法なんてあるのか??

 わからん…、とりあえずあれこれ試してみるか。



 錬成陣は、こめたい魔法をダイレクトに使っても、確率で成功する。確率を上げるなら『ビー玉』をプールポートとして使い、最初にこめたい魔法をプールさせてから、無属性魔法『セツ』で押し出す。

 魔法が入ると、アイテムは最初がどんな形であれ飴のように熔けてくるんと丸まって、透き通った玉になる。

 これが魔法玉の基本的な作り方だ。

 『接』よりも『渦』の方が心なしか成功率が高い気もするのだが、習熟度と経験値の問題で今は『接』を使うようにしている。


 プールポート不使用でも確率で成功するので、くるんと丸くなるのが無属性魔法の力…とは言いきれない。

 でも最後に押し込める?押し出す?魔法を使えるならば、そこをあえて水属性にしたら、出来るものが水になったりはしないだろうか?


 てことで実験開始。


 使用する低品質『七宝魚の鱗』の青。

 こめる魔力は光だけど、水にしたいからまずは水属性にしてみる。青は元々の低品質もそこそこあったしね。お試しだ。


 まずは光魔法『灯』をプールさせて、これを水魔法『クリエイトウォーター』で押し出す。


 砕け散った。

 失敗だ。もう一度試してみるけど、やはり砕け散る。


 そう初めからうまくはいかないか。念のため、他の属性のない最低品質素材でも試してみる。

 砕け散る。

 ……んん? なんか砕け散り方が違うな。


 もう一回、低品質の鱗を試す。

 うん、やっぱり違う。普通の素材が弾けるように消えるのに対して、鱗は蒸発するような消え方。


 ん~~?

 ちょっとわからん。なんかヒントないかな、と本棚から『真円の書』を持ってくる。

 買っててよかった『真円の書』。『メモリー』から読んでもいいけど、せっかくだからあえての物理本。


「にゃ」


 えっ。

 本に栞が挟まってるんだが!!?


 ヒェ、我が家も『不思議な栞』被害を受けるの!? 『動く文字』も!? む、虫干ししないとダメだった!?


 めちゃくちゃ焦ったけど、栞の挟まった頁を開くと栞は溶けるように消えた。そして、頁の文字列がふわりと光る。


 ……中央に魔力を注ぐアイテムを置き、媒体となるもの(主に粉か水滴)を真円に振り撒いた後、魔力源に魔力を注ぐと、魔力路を通ってアイテムへ魔力が注がれる。

 その際、適切な魔力を注ぐことが重要だ。多すぎると増幅してアイテムが破壊されるし、少ないと減衰してアイテムまで魔力が通らない――


 あ。

 粉か水滴。そうだ、媒体に使ってみようと思ってすっかり忘れてた。


 というか、え?

 本の、参考になる部分に今、栞が挟まってた…てこと??


 もしかして本を所有する意味って、趣味だけじゃなくてそういうこと!!?

 わあ、 『メモリー』あるから物理本の購入とか趣味以外にないと思ってた…。


 というか今パラパラしてて気づいたけど、この本、読めない部分があるな。猫が読める部分って、全体の四分の一もないような。

 もしかして、種族LVとか習熟度によって、本で手に入る知識の量って違ったりするのでは…?

 だって猫、『真円の書』は読み終えたと思ってたもの。読み終えたから買えたわけだし。


 ……てことは、もしかしてLV上がれば上がるほど本の読破って難しくなるのか。そのとき読める量を読破しておけば本屋さんには並ぶみたいだけど、LVが上がって読める量が増えたらラインナップから消えちゃったりする??

 いや、一部の特殊な本だけがそうなのかも。『月と精霊の扉』はみんなに読んでもらったけど、猫と内容変わらないみたいだったし……、いやあれは猫の所持品だったから?

 お、おお、わからなくなってきたぞ!


 しかしまだ買ってない本はさておき、既に購入済みの本も油断できないのは間違いない。

 定期的に本棚の本、読み直してみないとだ。


 あああ、待て待て、もしかしてこれ教本もだったりする?? だから物理的に本という形で存在したり?

 そして10冊分の保管を推奨されているのも、SPのため以外にもそういうことだったり…する!?


 うわー! めちゃくちゃ気になる!

 でも今は時間がないのでまた今度ーー!!




 びっくりして作業が止まってしまったが、ソファでちょっとゴロゴロして、気を取り直してもう一度、錬金術に戻るぞ。


 鱗を置いて、ビー玉置いて、『パウダー』を振り撒く。

 粉が陣に吸い込まれて消える。これでいいのかな? 念のためもう一回『パウダー』してみる……、砕けた。これは失敗だ。弾けた感じだったもん。『パウダー』は1回だけ、はい。


 錬成陣は魔法を込めるリズムも重要なので、予定にない臨機応変『パウダー』でタイミングがずれたせいもあるかもしれない。でもとりあえずは最初『パウダー』だけでやろう。


 『パウダー』『灯』『クリエイトウォーター』。

 にゃあ、蒸発だ。失敗。


 ん~~? これ、蒸発っぽい消えかたてことは、もしかして霧、水にはなってる、とか?

 実は成功してた?


 なら鱗の代わりに、水を留めておける『ガラス瓶』とかどうだろう。

 ……砕け散りはしないけど変化もない。目を凝らしても中が曇ってさえいないな。これは失敗。


 『ガラス瓶』が変化したわけじゃないから、適切な魔力ってやつが他の素材とは違うのかもしれん。減衰して魔力が届かないってやつ。

 『中が空洞のアイテム』と『傷のあるアイテム』では、基準が違うのかもしれない。


 んー…。

 でもそれなら発生する霧(?)を閉じ込めるのはどうしたらいいんだ。


 むう、予め『ガラス瓶』の中に水を入れておくのはどうだろう。空洞を狭めておけば少ない魔力でも変化があるかもだし、変化があった分は水に溶け込む、といいな!


 まずは万能選手『浄水』を入れてみる。インベントリに樽で入ってるけど、樽から注ぐのは大変なので、瓶に直接『ピュリファイ』。

 栓をして、錬成陣に設置。


 『パウダー』『灯』『クリエイトウォーター』……お! 光った!


 出来たアイテムは『光水』。説明は『10分光る』。

 んんん、微妙!!!


 しかし水に付与することは出来たので前進だ。

 次は…、『パウダー』を『ガラス瓶』に入れて錬成したらどうなるんだろう。消えちゃうかな?

 まあやってみよう。


 出来た。

 出来たけど『光の粉(劣)』で説明は『光属性を放つ粉(消失まで 9:59)』。はい、カウントダウン始まってる。10分で消える粉です。インベントリにも入らない。まあ元が『パウダー』だからね。

 劣ってことは、完璧な『光の粉』ならインベントリにも入るのだろう。


 んん~~、て悩んでたけど、ふと気がついた。

 押し出しを『クリエイトウォーター』じゃなくて、『パウダー』でやったらどうだろう?


 水じゃなくても、撒ければいいんだ。『パウダー』なら『接』と同じMP5魔法だし、更に無属性魔法。もしかして『クリエイトウォーター』より芽があるのでは?


 そんなわけで一旦『ガラス瓶』はしまい、無属性だし『七宝魚の鱗』の透明な低品質を。


 『パウダー』『灯』そして『パウダー』。ポンと弾けた!……と思ったけど違う! 粉だ! ハッピーパウダーしたぞ!


 出来たのは『魔法の粉(光)』。説明は『光属性の魔法の粉』。しかし量はめっちゃ少ない。小さじ1くらい。しかしインベントリにも入れることが出来る。

 うーん、これを実際使うとなると、大量に作る必要があるな……。まあパウダーも拡大しないとこのくらいしか出ないし、こんなもんかなあ。


 拡大『パウダー』するなら光属性のクリーム色っぽい白の鱗にした方がいいんかな? ちなみに聖属性は青っぽい白だ。

 ついでにこのカウントダウンしてるお粉、最初の『パウダー』代わりに使っちゃおう。どうせ消えるしもったいない。


 『光の粉(劣)』をパラパラして『灯』、拡大『パウダー』。

 ボフンと失敗。あいやー。


 粉がダメだったか?と『パウダー』『灯』拡大『パウダー』でやってみるがまたボフン。

 なんでだろう、と考えてて気がついた。最後の押し出し魔法を拡大したらダメじゃん。

 てことは粉は小さじ1ずつしか作れないのか!


 ぐでん、とソファに転がる。

 めっちゃめんどいにゃん~~。



めちゃくちゃ久しぶりになってしまった錬金術回、ついでにちょっとだけ本も添えて。

猫、ようやく『パウダー』を錬金術に使う。


次回ももうちょっと錬金術回。

そしてついに月夜がやってくる!


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] いずれ大量生産に適したものくる〜?
[一言] 真円じゃなくて菱形とかワンランク大きい錬成陣ならもっと量作れたりしない…?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ