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ブレーメンの錬金術師は散財したい  作者: 初鹿余フツカ
3章 金欠猫には旅をさせよ~誘惑の山旅編~
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12.クエスト考察

 あれ、ここって。

 マップを見ると、やっぱりそうだ。


「大穴の泉の裏手にゃんね」

「あの大岩と対で語られてるやつか」

「そうにゃ、さっき表から行ってきたにゃ。妖精が通せんぼ?してるにゃん」

「ほう? もしかして妖精族で呼ばれてたやつ?」

「そうにゃん、動物型じゃなかったから何もわからなかったにゃ。空飛んでたから地人族もたぶん会話は無理にゃんね~」

「妖精族もいろいろあってややこしいよな」


 はい。

 人族以外の種族特徴ってやつは、なかなかややこしいのである。獣人族もいろいろあるみたいだしね。この辺はその種族になってないとヘルプにも出ないので、他種族のことは意外とよくわからないものである。


 ちなみに同じ妖精族だが、ルイネアは妖精とは会話できないらしい。正統派な感じなのに、わりとハズレ感があるのがルイネアだ。

 妖精族は幽世かくりよから来た妖精を祖先に持つ存在なんだけど、ルイネアだけは幽世出身じゃなくて、いにしえにこの世界が生まれたときから存在している妖精を祖にした種族なんじゃないか、といわれている。妖精と話せないのもそのせいじゃないかという。

 ルイネの林檎関連を調べてたときにチラッと見た考察スレ情報なので、本当かどうかは知らない。



「裏から行けば大穴に入れる、とか?」

「にゃん~、たぶんここがゴールだと思うにゃ」


 『灯』を鬱蒼とした森の暗がりへ投げ込むと、一瞬光ったあと消える。


 もーいーかーい。


『まぁだだよ』


 まだでした。

 知ってた!


「今のか?」

「そうにゃん~。まだだと加護くれないにゃ?」

「もらえてないねえ。まだってことは、これは明日に持ち越しかな?」

「だろうな。『隠密』にボーナスかかるなら欲しい加護だが」

「『隠れる』にボーナスにゃんね~」

「…まあ、『隠密』にもあるだろ、きっと」

「結局、追いかけてきたけど『闇人形』じゃなかったってことかねえ」

「にゃん~、たぶん『かくれんぼの神』が隠してるんじゃないかと思うにゃ」

「ほう?」


 あの泉はおそらくアトノ島の祠のような異界の扉になっていて、そこに『今はない』っていう3番目の神の祠があって、かくれんぼの神が隠して守ってる…、と猫は予想している。


 そしてアトノ島の魚よろしく、『闇人形』も、月夜がくるまでは現れない存在なんじゃないかと。


 アトノ島も、祠自体は縁結びの神のだったけど、守ってるのは運送の神っぽかったもんね。二重に神が関わってる……はずだ。

 たぶん、アトノ島もフラグが足りてないと運送神は出てこなくて、縁結びの神と会って終わるのかな~と思ったんだよね。

 だから今回もフラグが足りないとかくれんぼの神か、失われた神か、どちらかの神は出てこないんじゃないかと。


「『探し物の神』は?」

「ポーツのときはもうひとつ、白月夜の謎も残ってたにゃ。そっちがたぶん釣り神さまだと思うにゃん? だからここにももうひとつ、別のクエストが眠ってるかもしれないにゃん」

「なるほど」

「探し物ね~~」


 二人は顔を見合わせてぬるい笑みを浮かべている。なんか思い当たる節があったんでしょうね…。いいのよ、ネタバレしても?

 見上げて首を傾げると、エドさんは首を横に振り、フーテンさんはへらりと笑った。


「明日のが終わってからだね~」





 猫が祠探しをしたりしている間、他に村で起きていたことは以下の通り。


 まず倉の中で聞こえた音楽はド定番の数え歌で、内容を全部集めてみると、どうも今回の黒月夜を指してると思われる節があった。

 年4回、春夏秋冬それぞれの季節で、黒月と鏡月が入れ替わる日があるらしい。その日がわかるような歌だったんだって。メモしとこ。



 それからくだんの山火事事件。

 あれは黒くてウゾウゾした虫を大量に見かけて驚いた末に火を放ってしまったらしい。

 その虫こそ噂のクロッコこと泉闇虫イズミノヤミムシだ。ついに出た!

 普通の虫と違い実態のない虫で、黒月が近くなると泉の周辺で大量発生するんだって。黒月には精霊スポットが現れるので、一部ではこの虫が羽化してあの光になると考えられているとか。

 山火事を起こした人物、虫大嫌いの人族女性タレイアさんが「ヤダ―――――――!!」と絶叫していた。

 山だからね。虫からは逃げられない…。


 気になるのは、山火事地帯は泉周辺ではなかったことだ。もっと村に近い場所。村までは来ないって言ってたし、なんでまたそんなとこにあったのか? 移動してる??



 そして粗麦畑の収穫を行っていたヤマビコさんが鍬をへし折った事件。

 畑の中に光の魔石が埋まっており、それにクリーンヒットしたらしい。魔石は無事、鍬が折れた。魔石ってめっちゃ固いんだって。


 光? 闇じゃなくて? どゆこと? と一時アライアンスチャットで疑問符が飛び交ったが、憶測としてなるほどと思ったのはティアラさんの「今回はイレギュラー回」説だ。


 今回はどうやら黒月ではなく鏡月らしく、本来の黒月とは別のイベントが起きている可能性がある。

 であればどの辺が特別イベントなのかというと『闇人形』関連なのではないか。『闇人形』が運び込まれたせいで、村人が体調を崩したのが今回だ。

 でも普段の黒月も、村人は体調を崩すのではないか?


 ヤマビコさんが魔石が埋まってた件を農業ギルドへ報告したところによると、畑の土の属性が偏っていると、出来る作物の属性もそちらへ寄ってしまうんだって。そして属性の偏った食べ物だけを長く食べていると、体に異変をきたすんだそうな。

 この村の人はみんな粗麦粥を食べているから、長く魔石が埋まったままだったら別の属性風邪にかかっていたかもしれない、と。

 ちなみに粗麦粥で風邪の回復が急速に早まってるのも、粗麦粥が栄養満点だからというのもあるけど、光属性の粗麦になってたからなんだって。

 そういう繋がりもあったんだねえ。


 で、今回はそういうふうにうまく機能してるけど、ここで闇風邪が流行ってなかったら話は別だ。

 村人は光属性の食べ物によって変調をきたし、光風邪を引いたかもしれない。

 そうなるとこのイベントのメインは『畑に埋まっている魔石の発見』になるだろう。


 だから今回も、事件に全然関係ないように思われる『農業』から始まるイベントだったのではないか……というのがティアラさんの憶測だ。


 うん、これはたしかにそうなのかも~って気がした。


『てことは埋まってる魔石はランダム?』

『あ、その魔石の話、わかりましたよ! おばあちゃんの探し物クエストからなんですけど…』


 さっき祠で探し物を当ててもらった人、小人族女性で『楽士』持ちのサッサさん。なお彼女の正式名称はササササ・サッササーであり、猫は彼女も一発で覚えられた。

 そんなサッサさんによると、おばあちゃんの探し物クエストとは、宿に泊まってるおばあちゃんから始まるクエストだったらしい。


 おばあちゃんはこの村の出身だったが、今は違う都市で暮らしており、里帰りに来ていた。しかし身内は既にないため、宿に泊まっていた。

 そもそもが親に疎まれる生まれで、人生も山あり谷あり大変だったそうな。祖母から唯一もらった形見の『光魔石の首飾り』を、兄弟に取り上げられそうになったおばあちゃんは、仲良しのカラスに託した。いつか取りに来るからそれまで隠していて、と。


 探し物クエストは『光魔石の首飾り』を探すクエスト、と思われたのだが、首飾りが見つかってクエストクリアにはなったものの、おばあちゃんの憂いは晴れず、なんだかモヤモヤした終わり方だったらしい。

 真相としては、実はおばあちゃんが探していたのは仲良しのカラスの方だったのだ、というオチ。


 肝心の探していたカラスはと言えば、いわれた通りに形見の首飾りを預かり、おばあちゃんが帰るのを待っていた。しかしわずかに遅く、すでに寿命を迎えてしまっていたらしい。

 カラスは長らく装備していた光の魔石により、光属性に進化して魔物になっていた。そんな魔物が息絶えたわけで、自らも大きな光の魔石を残した。

 死んだ場所が粗麦畑だったので、この一年掘り返されることもなく、気づかれずにいた……、というのが背景ストーリーだったとか。


『てことは光固定かね?』

『たぶん。でもおばあちゃんが固定じゃない可能性もあるかな? 村人じゃないし』

『それはそうかも』


 属性ランダムかは不明だが、村全体が何らかの属性風邪にかかるイベントは、確定だったのかもしれない。


 これがメインの流れだとすると、そこから光属性の魔物となっていたカラスはなぜ死んだのか?て話になっていきそう。たぶん山探索シナリオだな。更なる探し物クエスト。

 そっちは『探し物の神』担当の異界の扉なのかも?


 ちなみに昨日フーテンさんたちが濁してたのは、既存クエストの中に山狩りのようにして魔物やアイテムを探すクエストがあるんだそうな。

 それの拡大版みたいな感じだろうね~、とのこと。すごい大変そう。


 なお今回は情報収集の結果、古くからいる白いカラスで、ずいぶん年老いていた、最近は飛ぶのも弱っていたようだ…など証言が得られたため、おそらく老衰で間違いないだろうと決着している。


『おばあちゃんは『闇人形』とは繋がりそうにない感じ?』

『おばあちゃんも宿にいたので、宿に泊まってる商人が怪しいことしてたのを目撃してましたよ!』


 なんでも夕暮れに出掛けていって、夜中に帰ってきたときには大きな瓶を抱えていたのだとか。

 そしてたまたま花摘みで廊下に出ていたおばあちゃんにちょっとぶつかったのだが、舌打ちして去っていったらしい。その際、黒い虫が落ちたのでビックリしたそうな。でもビックリしている内に、虫を見失ってしまった。


『おばあちゃんは、宿に嫌がらせでもするのかと思って念のため宿へ『黒い虫を商人が持ち込んでた』て伝えておいたそうです!』

『これは泉闇虫かな?』

『そうっぽい。壺いっぱいの闇虫、きちゃいましたなあ』


 ヤダーーー!!と何処かから絶叫が聞こえたような気がしないでもない。アライアンスには流れなかったので空耳か。


『泉闇虫で闇人形に闇パワー充填した?』

『それが可能なのだとしたら、ギミック戦闘の気配ですなぁ』

『泉闇虫対策か~~』


 村の近くに闇虫発生してたのも、商人による移動が原因かな?

 薬屋のおばあちゃんも壺いっぱいの闇虫に漬け込まない限り、みたいなことを言っていたので、漬け込んだら影響を受ける程度に闇属性魔力を発揮しちゃうのだろう、たぶん。

 昨夜1日というのではなく、もっと前から繰り返していたとしたら、その闇虫の移動が風邪の一因になった可能性もあるかもしれない。



 ちなみに今はすでに夜時間。

 日が沈んだので解散して、各々おうち(マイルーム)で好きに過ごしつつのチャットで報告会だ。


 猫も久々にマイルームで錬金術してます。んっふふ、ソファがあるとゴロゴロしちゃって全然捗らない。

 ソファ引換券で手に入れた素敵なソファ、たしかに座り心地が素敵。ふかふかごろごろにゃん~。

 しかし遊んでる場合ではないな。


 物理デバッファーになるためにも、猫は嫌がらせアイテムをつくらねば!



アライアンスで挑んでるので、猫以外の人もあれこれ進めてた模様。

他の人が進めている部分、説明が多くなりがちですまないねぇ。


ちなみにヤマビコは粗麦粥関連クエをまとめて受けており、農家で新たに発生した『粗麦を放置したことで品質が下がってしまったな』『このままだと枯れちゃうかもしれないし植え替えた方がいいかも(チラッ)』のクエストを拾って、粗麦を根こそぎ刈り取った後、植え直すという重労働クエをしているところだった。なおたまたまギルドにいたリーはヤマビコに捕まり、このクエに駆り出された。

労働力を逃がさない村…!


次回は本当に久々になってしまった錬金術回。

ようやく!!


評価、ブクマ、イイネ、感想、誤字報告ありがとうございます。


240514 第三の祠について前話の表記に統一し、『今はいない』→『今はない』に変更しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 [一言] クエスト掘り返しすぎて荒れとる
[気になる点] 前話『今はない、今はいる』 今話『今はいない』 [一言] VRMMO特有のMAP広すぎて目標物が見つからない現象でクエスト放置されてまくってる予感  プレイヤー苦情「クエストクリアでき…
[良い点] ソファーでくつろいでる猫さんかわいーー。 通常の黒月夜のクエストがどうなってるのかなど、気になるプレイヤーは多そうですね。しかしクエスト全部掘り返そうとしたらなかなかの大変なお仕事になっ…
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