9話
ディムガルフとやり取りがあった翌朝、リンはそん村長宅にいた。
「ふーんじゃあリンは英雄様の弟子になるんだ。これから一緒に勉強出来ると思ってたから残念だなぁ。」
「羨ましいが俺らもディムガルフ様の推薦入学になったし、それに勉強次第にではいつでも会えるなりそうだしな。」
「街までは一緒に行けるからそれまではよろしくね。」
『袖振り合うも多生の縁と申す訳だし3人で友情を今の内に育みなさい若人達よ。』
3人に念話で語りかけてくるロキに3人はクスリと笑い楽しく朝食を食べていた。
ロキは基本的に人前には姿を現さないようディムガルフに言われている為基本的には念話でのやり取りになる。
幼い精霊は顕現していると魔力感知で感じとられるらしく、特別な魔道具があれば未熟な精霊を支配する事が出来るという理由からなるべく姿を見せない方が良いと3人は説明されていた。
特にヴィルとニュラは今後気を付ける必要性があると手紙に書かれており危険性を認識していた。
一方その頃ディムガルフは村の入り口で領主から派遣された一団と話しをしていた。
「では旧街道沿いの廃村は現在湖になっているのですか?」
「そうだ、〖聖水〗で蓋をしなければアレの瘴気が拡散するからな。私は神聖魔術には特化してないのでね、聖女が到着するまでは監視に留め到着次第、これを渡してくれ。」
ディムガルフが取り出したのは幾重にも封印術式が刻まれた箱で文字は明滅を繰り返しており中に物が入っているのが明滅している事で分かるようになってる。
一団の指揮官は息を飲む、箱は明らかに〖アーティファクト〗失われた技術によって造られた国宝級の魔道具である。
「中身はアレの牙の破片だ、それを媒体に聖女には浄化をして貰う。それと手紙を聖女、領主、両名に渡してくれ。」
「受けたわりました………出来ればディムガルフ殿にも来て頂きたいところですが……。」
指揮官が手紙を高級魔道具〖ディメンションボックス〗にしまうと期待のこもった眼をしていたがディムガルフは顔を横に振り否定する。
「私にも予定があってね此れから学術都市〖マバジャン〗に行くのだ。」
「あー、候補生の方々を送るのでしたか?という事は噂のお運び方で送られるとは候補生方々が羨ましいですね。」
「さてな、あれの感想は人による………最後にこれが拘束解除のキーワードだ、残念だが彼らは魔道契約違反でスキルを失って自暴自棄になっている、保護してやってくれ。」
キーワードの書かれた羊皮紙を指揮官は受け取り、なんとも言えない表情を浮かべた。
「大方、魔道と魔法の違いを理解せず契約したのでしょうが。どちらにせよ自己責任ですので、我が部隊で訓練生として迎える程度ですぞ?。」
「問題があれば放り出せ、そこまで面倒など見る必用ないからな。」
ディムガルフが残された彼らに事の真相を聞こうとした時彼らは【デーモンズハンド】の情報を不必要なとこまでディムガルフに話してしまった。
助かりたい一心だった彼らは魔道契約に定める"契約者同士の情報を自ら自発的に話す事を禁止する事項に違反した為、彼らが持つユニークスキルは彼らの身体を抜けデーモンズハンドが持つ魔道契約書に封印されてデーモンズハンドが所有者になっている。
「では我々は〖デーモンズハンド〗の痕跡調査、及び封印領域監視の任に付きます。ディムガルフ殿では裁定神〖アイネディアの祝福を〗。」
「貴殿達にアイネディアの祝福を。」
裁定神〖アイネディア〗は清廉潔白、断罪、正道を司る神で騎士や司法に関わる人間が信仰する神である。
彼らが持つ天秤と聖剣を象ったネックレスは仄かに光を放っており光が消えた時は信仰を裏切った時の為彼らの信用は厚い。
ネックレスの効果を偽った偽物がもし見つかると彼らアイネディアの信徒は詐称に関わった人間を徹底的潰しに信徒全体で動く為犯罪者達からは恐れられている。
その為"託された依頼や任務は必ず成し遂げますよ"という意味あいで信者達はの良く使う言葉だ。
その為礼儀として"アテネディアの祝福を"と返答し私も任務が無事に達成出来る事を願っているとを伝えるのだ。
彼らの部隊が去っていくのをディムガルフが見届けていると、丁度リン達が村の者達との別れの挨拶を終えてディムガルフの方へと来ていた。
「ディムガルフさんあの騎士達は?」
「今回の騒動の処理を依頼した領主の〖裁定騎士団〗の物達だ。君たちもこれで心配する事はないぞ。」
「裁定騎士って魔道学院の卒業生で固めたエリート集団じゃねぇか。すげぇ俺もいつかあの人達と働くかも知れないのかぁ。」
「私の村に来てもらった事あるよ。村の領域を広げる時に魔物避けの結界を張り直して貰った時は凄く綺麗で、私も精霊魔法使いたい!て思ったしカッコいいなぁ~。」
だがリンは彼らが乗り物なしでここまでどうやって来たのか眺めていると村からある程度離れた彼らは軽くその場で飛んだ瞬間だった。
「えっ消えた?裁定騎士って時空魔法使えるんだ。」
「リンあれは〖グラビティブーツ〗と風の精霊魔法の合わせ技だ。君にもあれくらいは出来るようにいずれなってもらうぞ。」
「えぇ~…………。」
「「頑張ってなリン」」
急速に遠ざかる彼らをなんとか見つけたリンが絶対無理とゲンナリしたのをみて二人は憂いた表情で励まされて少し気持ちを持ち直した。
「でぇじょーぶだぁ~僕が付いてるのだよリンまか▪せな▪さい!」
サムズアップしてウィンクするロキににっこりしてリンは優しく抱き締める。
「えぇそうね私には貴方がいるわ。」
「なんだい?僕のモフモフで癒され……イタタダ!!ダメえーモフモフには優しくぅぅ。」
リンはロキの頬っぺたたグニグニ引っ張りムカっときた心を落ち浮かせるのだった。
その後ディムガルフに付いてる来るよう言われて村より離れた丘の上まで来たディムガルフはリン達に離れるように促す。
そして腰着けたポーチから魔法陣が複雑に描かれた紋章を取り出すと魔力を込めて地面押し付けた時だった。
「"我が盟約をかわせし彼の者よ魔力を道しるべに我が元へ来たれ。"サモン!〖エラドゥハ〗!!」
地面転写した魔法陣は急激に広がり光が増すと空に幾重もの古代文字が帯びになり漂いそして急速に魔法陣の中央にと吸い込まれる。
魔法陣は回転し始めて魔法陣内が光で見えなくなった時だっだ。
『くぁ~退屈であったぞディム。いきなり駆け出すから見失ったではないか、我が一人で動くのは不味いというのにあんな森で隠れさせおって。』
「すまないな、だが目的の娘は見つかった彼女がそうだ。」
「「「ド、ドラゴン?!」」」
大きな瞳そしてリンなどひと飲みするその巨体はリンをチラリと見てリン達は愕然と巨体を見上げた。
そんなリン達を気にせずにディムガルフを訝しげに見てエラドゥハは鼻を近づける。
『スンスン……腐臭と次元の奴の匂いがするな、奴が殺された?しかもアンデッドになる程の怨念だと?』
エラドゥハがイラただしげに尻尾を振ると大地が揺れリン達はその迫力に後退る。
「それは今夜話そう、今は彼らを学術都市マバジャンに運びたい。」
『ムゥ……まぁ良いか、では乗れ人間の子らよ。』
リン達は恐る恐るエラドゥハの背に乗りディムガルフが合図すると一気に急上昇し飛び始めた。
「「キャャャア!!」」
「ヒィァァア!」
「行けぇ!エラドゥハの〖空を飛ぶ〗攻撃!」
(うるさい奴らだ……特に精霊今度ふざけたら振り落としてくれる。)
何処からとって来たのか帽子を被りボールを持つロキを不快に想うエラドゥハは学術都市マバジャンに向けて速度を上げ雲の上を飛び行くのだった。