14話
ギィルが選んだ店は一階が豪華な洋風レストラン、二階が雅で落ち着いた空間での和食料理。 そして三階は──。
「旨い!これは貝か?お、これは鳥だな!」
「ハハ、ほんと美味しそうに食べるねエラドゥハくんは。」
「こんなに美味し串焼き食ったことねぇ……都会はすげぇな。」
「凄い美味しいよぉ簡単な串焼きなのに美味しすぎるぅぅ。」
「もうニュラ頬にタレついてるよ、拭いてあげるからちょっと待ってね。」
「ありがとうリン、でもこれ美味しよリンも食べてみて。」
プロの料理人により造られる格段に美味しく仕上げた庶民料理の店だ。
店員がタレを塗り香ばしい匂いをさせた様々な串焼きをエラドゥハはクシが山盛りに成る程に食べていてギィルは久しぶりに見たエラドゥハの食べッぷりを微笑ましく眺めていた。
ビィルは自分が今まで食べて来た串焼きより見た目同じなのに格段に美味しい串焼きに驚愕しており、ニュラは感動の余りの泣きながら食べていた。
ギィルの部下や魔道学院の者達は三階の入り口近くの席でロキにマナラインこ詳しい位置や気付いた事などを食事をしながら聞き取りをしていた。
「僕が丁度ここで〖マナライン〗から流れる純粋な魔力〖マナ〗を感じて、あっこれ良い寝床じゃね?って思ったのサ。」
ロキは自分の武勇伝を語るかのようにイチゴミルクをテイスティングしてドヤる。
「成る程………確かにそこは小さな泉がありましたな。」
「魔物の出現率が低く錬金術に使用する素材も採取出来ない小さな森がマナラインの吹き出しているのは驚きですね。」
「ふ~やれやれ、何故驚きなんだい?誰だって寝床を荒らさせたくないだろ?ではいったい誰が魔物や人が興味をなくすようにしたか………ふふ、諸君もうおわかりだねぇ。」
まるで種明かしする探偵気取りで説明するロキに感心した顔の者達にますますドヤァとしながら更なる情報をミュージカル調に語る有頂天極まるロキは煽てられるだけだと知るよしもない。
((((こ芝居辞めてくれないかなこの精霊。))))
内心ロキの話し方を皆げんなりしていた。
そんなロキをスルーしてディムガルフはギィルの隣の席座った。
「お疲れ様です一杯どうぞ。」
「ラシュルル水か有り難く貰おう。」
〖ラシュルル〗は育成時に与えられる魔力の属性によって味が変わり熟成させるとアルコールではなく炭酸が精製される変わった果樹だ。
「酸味と甘味のバランスが良い……旨い。」
「風と土の魔力配分に苦労しました、やっとあの時のラシュルルが再現できましたよ。」
ギィルがまだ少年だった過去、ディムガルフに弟子入りし大陸中を冒険して兄弟弟子達と星空の下で飲んだ大切な思い出の味。
「天空大陸の時だったか………懐かしいな、君はあの時に出会った天族の娘と結婚したそうだが上手くいっているか?」
「習慣の違いで戸惑う事も有りますが幸せな家庭を築けていると思います。それに妻は妊娠してその時は──…………すみませんディム師匠。」
ギィルは妻の事を嬉しそうに話した時ディムガルフが抱くだろう気持ちに気付き申し訳なさそうに謝った。
「私は弟子に嫉妬するほど小さな器ではないぞ?毎月一度は話せるのだしな。それに今の私には希望がある。」
ディムガルフはリンを見るとリンも気付いたのか軽く手を振り笑顔でニュラ達と話しをしている。
「彼女が、ですか?確かに私から見ても彼女は何か大きな事をやってくれそうな感じがしますね、まぁロキくんは既にやってしまってますが。」
「彼女は盤外の駒だ誰の持ち駒ではない……そこに期待してる。」
「まぁしがらみがらあると自由に動けないですからねぇ。兄弟弟子達でも連絡取れない人は結構いますし。」
ディムガルフとギィルは串焼きを数本食べた後にディムガルフは気になる事をギィルに質問する。
「バーバラ、ガルフ、ベルガモット、アーベルこの名で聞き覚えのない名は有るか?」
「最近連絡つかない兄弟弟子の名前ですね。しかしアーベルって誰ですか?」
「…………もう弟子ではない者の名だ気にするな。」
ギィルは一瞬の殺気を感じ取りその名を思い出そうとするが全く出て来ない上に何故か誰の話しだったかも気にしなくなっていた。
「あれ?何の話ししてましたっけ?」
「いやそろそろ時間だとな、久しぶり話せて良かった。しばらくはこのマバジャンに留まってリンの基礎訓練に入る。教会の出方次第ではあるがな。」
ギィルも確かにこれ以上は宴になってしまうなとロキやリンの方をみて頃合いだと皆に伝え店に伝票を貰ったが予想以上の会計に苦笑して皆馬車に乗り店を後にした。
(アーベルお前はまだ神を怨んでいるのか?)
デーモンハンド達から感じた既視感は確信変わったディムガルフだがこれ以上こちらに干渉しない限りはデーモンハンドを詮索する事を決めた。
全ては彼の悲願成就の為に。