12話
リン達が学術都市マバジャンに着いたどう時刻のとある古びた屋敷に〖デーモンズハンド〗幹部のギタクとルゥブィヤは来ていた。
黒いロリータファションの小柄な女の子が頬を膨らませて手に持つガラスの箱を眺め屋敷の奥へと歩いていた。
「はぁーあ、マジ災厄なんねぇ。せっかく魔王に進化しかけたドラゴンゾンビだったのに〖死滅〗の爺ぃが来るわ封印されて素材が目玉と爪1個とか嫌なんねぇ。」
『ほーんとだよぉこれじゃ〖再誕〗出来ない、ナイナイだよぉ。』
「しょうがねぇだろ、お前も俺もディムガルフに協力しなければ死んでたんだぞ。」
『アレハ、異例すギたな、だが、オカゲでお互い覚醒シタロ?ルゥブィヤ、リバイ』
ギタクの精霊ディフェルモは新名を得て死闘の最中覚醒を果たし〖残影の精霊シャーモル〗となったがギタクとルゥブィヤが強くなるとドラゴンゾンビも更に進化して大災厄の魔王級に後一歩まで来て劣勢になっていた。
今更新たに増援を呼ぶ余裕も時間もない状況に死を覚悟したときディムガルフは現れた。
ディムガルフは鬼神のごとき動きでドラゴンゾンビを追い込み、二人にディムガルフが渡した魔道具を規定の位置に設置するよう言われてやむ無く協力する羽目になった。
「私の奥の手を使えば使役できたんなんねぇ……多分。」
『ルゥブィヤちゃん使役したら意識乗っ取られてたカモカモだよぉ。ヤバヤバだょ……。』
「全くダンジョンは大量発生するは、教会が大きく動くは〖瘴気溜まり〗は増える、うちの大将は人員拡大しろと言う………全くよぉ疲れるぜぇ。」
『ダンジョン大量ハッ生はアキラカニおかしい……我らソトの精霊ガ増えたラ頷くむしろ無くナルハズだ。』
『私達は穢れた魔力をパクパクして元気にナルナルだからねぇ。何でだろう?』
ダンジョンは生物から発生した魔力に付く負の感情を精製したダンジョン魔物を処理する事で浄化する神々が作った施設だ。
そのダンジョンが増えると言うのは負の感情が現状のダンジョンの数では処理不能と言う時しか起こり得ない。
そして外の世界から来た理を"世界を歪ませず弄れる"精霊である彼らにはダンジョンが増える事、事態が異常なのだとはっきり分かる。
「どのみち大将には今回の事報告しねぇとな。」
「いやだょ、怒られたくないんねぇ……。」
再奥にある大きな扉を気が重く感じる中二人は入る。
「残影のギタク任務失敗で帰還しました。」
「同じく救援依頼、死操のルゥブィヤ任務失敗にて帰還しました。」
「ご苦労様、二人共良く生きて帰って来たね。まさか第一境界守護竜、〖次元竜ア〗が殺されてるのは誰も知らなかった事だ。知れただけ御の字だよ。」
二人は顔を見合せた。
「何だ大将使い魔で観てたのか?」
「アーベル様、境界竜って世界に異物が入らないよう見張ってる竜ですか?」
『マジマジ?私達は休眠状態でこの世界来たから知らなかったよぉ。』
「俺と言うよりマクスウェルがね。」
アーベルの横に長身のこの世の者とも思えないくらい美形の男が姿を見せる。
「奴は強かった隙を見て我はこの世界に入り、この世界の精霊王に認められた。奴が死ぬのは本来あり得ないのだ。」
『相変わらず堅物ねぇ、マクマクがそう言うならお手上げだし私し~らない。』
『貴様ハ、マクスウェル様にたいして不敬スギだぞ。』
「えぇと要はマクスウェルの旦那が見たあのドラゴンゾンビは知っているドラゴンだった。」
「死ぬはずないんドラゴンは死んでたんねぇ?…………アーベル様かなり時間掛かるけどこの"瞳"が何を見たか修復しても宜しいですか?」
アーベルは少し考えてからガラスの箱の中にある瞳をじっと見つめた。
「今は駄目だね"それは知ってはいけない者の呪い"がかかっている。」
「我が解除する、半年後だ、頼む。」
『マクマクが半年で呪い解くからそしたらルゥブィヤちゃん目玉の修復ぴく♪だってぇ。』
『貴様イイカゲンな言い方、俺でもキレるぞ。』
「外の精霊はうちの以外癖強ぇのは何でだ?」
ギタクは他幹部達といると普通がなにか分からなくなっていた。
「今回の任務で予定の半分の人員補充になったわけで成功した部隊は育成に入る。だから君たちに次の仕事だ死亡率が急上昇している地域の調査そして標的を見つけ暗殺をしてもらう。」
「お、お休み欲しいんよぉ……。」
「大将もしかして怒ってるか?」
「ははは!まさか、師匠に契約済みの人員を取られたのなんか気にしてないともさ。使い魔を預けるから仕事終わったら1ヶ月の鍛練時間を上げよう。主に交渉術の鍛練だよ良かったね。」
二人はガクリと肩をおとし重い足取りで次の仕事に向かうのだった。