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9 ユリカにじじょーせつめい



「 ユリカ、俺がここに来るまでの話したいから、家に来てほしいんじゃけど。駄目?」


クエストを終えギルドで、報酬を受け取ったあと夕陽は、ユリカにそんなお願いをした。


「わたくしは、かまいませんわよ」

「マジ。じゃ、早速」

「待って下さい。宿に、荷物取りに行かせて下さいな」

「 ええけど、まさか」


夕陽は、嫌な予感がしてユリカに訊いてみた。


「泊まるに、決まってるじゃありませんか」


  ユリカは、当然と言わんばかりの口調で言う。

そしてユリカの顔には、「コイツ、何を言っているんだ?」と書いてあった。




「何か不都合な事でもありますの?」

「 いやその。ヴァネッサさんに、ユリカが泊まってもええか訊かんといけんし」


 夕陽は、しどろもどろに言い訳を考える。

ヴァネッサと暮らす家には、お客が泊まるような部屋は、無い。当然、ユリカは夕陽と一緒の部屋に泊まる事になる。

同年代の少女と同じ空間で寝るなんて無理だと思う。


「 ヴァネッサ様には、今訊けばよろしいのでは?」

「 うう。わかった」


夕陽は、ユリカの泊まる許可を貰いに、ヴァネッサのいる書庫へ向かった。


「 という訳で、ユリカを泊めてもいいですか?」

「 いいよ。 ユウヒの友達なら大歓迎だ」


密かに、駄目って言ってくれんかなと思ってた夕陽は、ヴァネッサがあっさりとOKした事にがっかりした。



「 なんだい。その顔は?」

「 別に。なんでもありません」



 夕陽は、ヴァネッサから目をそらす。

しかし、ヴァネッサはそんな夕陽の態度を、見逃さなかった。



「 ははあ。さては、そのユリカって娘と同じ空間で寝るのが嫌なんだね?」

「だって無理なんですもん!女子と一晩も一緒なんて!」



 夕陽は、ボショボショとボヤく。夕陽には、姉や妹はいないが、中学生になるまできょうだいの様に育った幼なじみのひなとは、四六時中一緒だったが、そんなひなでさえ、一緒に寝たのは、保育園の頃か小学一年生になったくらいだったと記憶している。

 十年以上、女の子と一緒の同じ部屋で寝ていないのだ。

だから、無理だと思った。


 


「 いひゃい。なんひゅるんでひゅか? ( 痛い。何するんですか?)」


ヴァネッサにいきなり頬をつねられて、抗議する夕陽。


「 ユウヒ。いい加減に、女の自覚を持ちな」


ヴァネッサは、真剣な顔で夕陽を叱る。


「 なりたくて、なった訳じゃないのは、解ってるさ。でもね、そろそろ男としての意識捨てな。ちょっとずつでいいけどね。あたしは、今回の事は、いいきっかけだと思うけど」


ヴァネッサは、それだけ言うと仕事に戻った。


「 男としての意識捨てなかあ。ヴァネッサさんの言う通りじゃ」


 

夕陽は、ヴァネッサに言われた事を噛みしめながら、ユリカの元に戻った。


「 遅かったですわね」

「 ちょっとな。あっヴァネッサさんが大歓迎だって」

「 まあ。嬉しい。では、行きましょ」


ユリカは、夕陽の手を引いてウキウキと、ギルドから出て行った。



「どうぞ」

「お邪魔します」

「やったーお家に着いた。夕陽、あたしあっちで、遊んでるよー」


家に着くなり、そらは、夕陽の肩から降りると、庭の方へ走っていった。


「 雀とか苛めるなよ。そら」

「 わかったー」


 夕陽は、そらにそんな注意をするとユリカを自室へ案内した。


「 適当に座っといて。俺、お茶淹れてくるけん」

「 分かりました」

は、そらにそんな注意をするとユリカを自室へ案内した。


「 適当に座っといて。俺、お茶淹れてくるけん」

「 分かりました」


夕陽は、下げていたメッセンジャーバッグを部屋の隅に置かれた机の上に置くと、台所に向かう。

手を洗ってから、ヤカンに水を入れコンロにかける。

火をつけ夕陽はカップと紅茶を準備する。


ちなみに、台所のコンロはとある魔法使いが発明したもので、少しの魔力で火をつける事が出来る代物である。


しばらくして、お湯が沸くと夕陽は、紅茶を淹れる。お盆にのせて自室に戻る。


「 お待たせ」


夕陽は、自分のベッドに座っていたユリカに、手渡すと机の椅子に座る。

一口飲むと、夕陽は口を開いた。


「 どっから、話そうかな」


少し考えて、夕陽は最初、ここにいた時の事から話はじめた。


「 神様が、適当な事してくれたお陰で、俺は、日本からここに来てしもうたし。女になってしもうたって訳なんよ」

「 なんて事ですか? 呆れましたわ。死んだのは、仕方ないですけど。その後は、災難でしたわね」


ユリカは、ぷりぷりと怒りながらそんな事を言う。


「 まあね」


夕陽は、そう言って紅茶を啜る。


「 時に、ユウヒさん。元男性というのは、わかったんですけど、その証拠といいますか。写真とかありませんの?」

「 無くもないけど」


夕陽は、紅茶のカップを机に置くと、メッセンジャーバッグから、スマホを取り出す。


「 何ですの?この機械」

「 スマートフォンって言うて、携帯電話なんじゃけど、この中に、写真とか入っとる」

「 スマートフォンは、知らないですけど、携帯電話は、知ってます。おばあ様の知り合いの日本人に、見せて頂いたことありますから。あれが進化した物と考えて、よろしいのかしら」


ユリカは、小首を傾げつつ、訊いてきた。


「うん。まあ、そんなところじゃ。あった」


夕陽は、スマホを操作して目当ての写真を見つけた。友人と撮った写真だ。

ユリカは、覗きこんで一言。


「 確かに、体つきで男性だと分かりますけど、今とあまり変わらないですわね」

「 子供の頃は、よく女の子と間違えられよった。可愛い女の子ねぇって言われるの嫌じゃた」


夕陽が、しみじみと昔話をしていると、ユリカが、ジッと夕陽の顔を見つめていた。


―――無自覚とは、恐ろしいですわ。今も十分可愛いのに、気付いてませんわね。


ユリカは、そっとため息をつくと、夕陽にこう言った。


「 ユウヒさん。これから、女性として最低限必要な事をわたくしが、指導して差し上げます。厳しくいきますから、覚悟してくださいね」

「 はい」


ニッコリと笑顔で話すユリカにビビる夕陽だった。




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