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8 ユリカと一緒に

ヴァネッサの仕事を手伝っていた夕陽は、受付の女性スタッフに呼ばれるとヴァネッサに断りを入れてから受付に向かった。


「ユウヒさん」


 夕陽に気が付いたユリカがにぱっと笑顔で振り返る。

普段のお嬢様口調とはかけ離れ、仲のいい友人、それも飛び切り仲のいい親友にでも会ったかのような笑顔で、夕陽をユリカは迎えた。




 


「 ごめん。待たせたか?」

「 いいえ、全然。それより、肩に乗ってる猫さん。契約精霊ですわよね? 寝てらっしゃるけど」

 

 ユリカが指差す先は、夕陽の肩に乗り器用に眠るそらがいた。


 最初に出合った頃より夕陽になついたのだろうが、今のそらは契約精霊というより、飼い主が大好き過ぎて、飼い主の身体にくっつかないと眠れない猫のような状態だ。

 最近のそらは、こんな感じでクエスト以外の時は

基本、本物の猫の如くだらけて寝ている。

なお、本人は知らいないが、白目を剝いて寝ているので、知らない人が見たら大概びっくりされる。




「 そら。起きろや。このぐうたらニャンコ。

恥ずかしいじゃろ」

「 う〜 ぐうたらニャンコ違う、そらだもん」


よく分からない事を言うそらを夕陽は叱る。


「 寝ぼけとらんで、ええけ、ユリカに挨拶しろ。」

「 あーども、そらです」


 面倒くさそうに顔を上げると、テキトーにユリカに挨拶をすると、こてんと夕陽の肩へ身を預け、グーグー寝始めた。




「 なかなか、ユニークな精霊ですわね」


ユリカは、クスクスと笑いながら言う。


「 恥ずかしい。ああ、それより、パーティーの届け出さんと」

「 そうですわね。早く済ませてしまないと、クエスト受けれません」


ユリカは、そう言って受付の女性スタッフに声をかけ手続きに必要な書類を貰う。


二人は、書類に必要事項を書き込み提出すると、早速、クエストの依頼票を確認する。


「 えーと、あった。俺が目をつけたやつ」

「 モンスターの駆除依頼ですわね。西の森近くの村に畑を荒らすシマヘビ十匹ですか」


この世界のヘビは、全てモンスターである為危険な生物である。

畑を荒らすだけならまだしも、人間を襲って魔力を吸いとるので、対処する術を持たない人にとって厄介なのである。


「 ユリカは、飛行魔法は使える?」

「 ええ。使えます」


二人は、パーティーの届け出もクエストの依頼の手続きも済ませると、西の森付近まで向かう為に、準備していた。


杖を標準状態スタンダードからブルームに変えて出発する。


「 ユウヒさん」

「 何?」

「 変な事訊きますけど、属性はまさか全部使えます? 」

「 一応、全部使える。 やっぱり、変?」


 夕陽は、実のところ、全属性を扱えるので気味悪いと言われいるのを気にしていたから、ユリカもそうなのかと、警戒していたのだ。



「いえ、わたくしの亡くなった祖母もそうでした。四つ全ての属性使えましたので」

「 へー。そうなんじゃ。凄い人なんじゃね」

「 わたくしが、言いたいのはそういう事ではなくて、ユウヒさん。あなたも、日本人でしょう?」

「 えっうん。まあ」


ユリカの指摘に驚きつつも、夕陽は頷く。


「 やっぱり、 ギルドマスターもですわね。ご自分からそう仰られたので」

「 ユリカのおばあさんもか?」

「 そうです。祖母は、ごくまれに現れる日本人を『転生者』と呼んでました。日本人が、こちらに来てしまう理由を突き止める為に、ずっと、調べてたらしいので。生憎、それが達成する前に、亡くなったので、わたくしが祖母から引き継いたのです。アルジェの町に来たのも、それが理由ですわ。」

「 それでか。ユリカの名前が、日本人みたいなん」

「 そうです。 理由は、他にもありますけど。また、あとで話します。そろそろ目的のようですし」


ーーーうう、中途半端に話を切られると気になるけど、今はクエストに集中せんと。



ユリカは、手にした地図で確認しながら言う。

いつもの間に起きていたのか、そらが、前足で方向を示しながら言う。



「 目的地は、あってるよー。 この前、行った西の森が近い。おひげが、ピクピク反応中にゃ」


 ドヤ顔で話すそらのひげは、ピクピクというより、ピコンピコンと波打っていた。


「 そら、いつの間に起きたんな。それに、おひげが、反応中って」

「 まんまにゃ。そらのおひげは、一度行った場所覚えてる。目的地に近い所ならおひげが、反応するの」

 えっへんとそらは、胸をそらした。

自分の特技が披露出来てご満悦だ。



「 まあ、凄い。そらさん」

「 わーい。誉められた。夕陽も、誉めろ!」

「 へー。凄い。凄い」


夕陽は、適当に誉めた。そらは、お気に召さなかったようで、ふて寝を始めた。


二人は、降り立つと近くにいた村人に、ギルドに依頼されたシマヘビ駆除の件で来た事を告げると、村長の元に案内された。


「 お前達が、今回の依頼を引き受けた冒険者か?」

「 ええ。そうです」

「 小娘。しかも、魔法使いか。まあ、この依頼は、剣士じゃ難しいしな」


二人を見て不快な顔をする村長。夕陽とユリカは、顔を見合せ頷くと、夕陽が口を開く。


「 ギルドに連絡して、他の人に替わってもらいましょうか?」

「 えっ ? そんな事したら」

「 違約金の事ですか? あなたが気にする事じゃないですわよね? 別に、クエストを受けれなくなる訳じゃありませんもの」

「 そうです」


二人の反応に、困る村長。ギルドに依頼すれば魔法使いが、来る事は予想していた。

冒険者をやっている魔法使いは、がめついわ、態度がとにかく横柄。それが、世間における魔法使いのイメージだ。


しかし、この二人はそんな世間のイメージからあまりにもかけ離れている。


「 いや、すまんかった。二人にお願いしよう。こっちに来てくれ」

「はい」


村長は、二人をシマヘビの被害にあってる畑に案内する。


「 ここなんだよ。サツマイモ荒らされて困ってるんだよ、このままじゃ今年の収穫が、0になっちまう」

「 サツマイモ。魔力回復の効能がありますからね。シマヘビの好物です」

「 ここのシマヘビ駆除したらいいんですね?」

「 おう、頼んだよ。オレは、あっちで作業さてるからよ」


村長は、そそくさと逃げる。


「 シマヘビ見たくないから逃げましたわね。あの方」

「 そんなに、気色悪い?」

「 見たら分かりますわ」


ユリカは、そう言うと地面を指で示す。

にょろにょろと、見た目は、ミミズそっくりな生き物。但し、サイズ1mくらいである。


「 確かにキモい。こんなヘビがおるんかいしかも、十匹も」


夕陽は顔をしかめて、言う。ユリカは、冷静な

目で観察する。


「 わたくし達の魔力に反応したんですわね」

「 昨日話に出た、オーラに反応したって事?」

「 そうですわ。さっ、魔法で切りきざんで差し上げましょ。このヘビ共」

「 ユリカ、目が怖い」

「気のせいです」

「 とっと、やりますか」



夕陽は、杖を構え詠唱する。


「 風よ。魔物を切り裂く刃となれ。ウィンドブレード」



キイキイと奇声を発していた五匹のシマヘビは、風に切り裂かれて、消えた。


「 何か落ちとる?」

 

 シマヘビがいた辺りに、キラキラと虹色に光る物が複数落ちていた。

夕陽は、その内の一つを拾い、観察する。


「石? 宝石じゃないし。なんじゃろ?」

「魔石だね。 ギルドに持っていけば結構な値段で、売れるよ」

「 へー」


夕陽は、肩から下げているメッセンジャーバッグにしまう。


「 ユウヒさん。終わりましたの?」

「 うん。 終わった。ユリカ何持っとん?」


夕陽は、ユリカが手に持っている半透明の物を不思議そうに見る。


「 これ、鱗ですわ。ヘビ共の。倒したら体の一部が何故か残るんです」

「 へっ 気づかんかった」


夕陽は、自分が倒したシマヘビがいたあたりを確認する。

確かに、キラキラと光る鱗を見つけた。


「 魔石は、すぐ気付いたのに」


夕陽は、鱗を拾うとメッセンジャーバッグに入れる。倒した証拠を、持って帰る必要があるのを思い出したのだ。


夕陽はユリカの元に戻ると、村長に報告に行く。


「 依頼のシマヘビ駆除完了しましたわ」

「 助かったよ。ほい、ギルドに出す書類。サインしといた」


最初に出会った時とは違い、村長はニコニコと応対する。


「 ありがとうございます。村長さん。そうだ、これ」


夕陽は、シマヘビが残した魔石を村長に手渡す。


「これ、魔石だろ? 」

「 そうです 」

「 ギルドに持っていけば、高く売れるだろう」

「 だからです。 俺は、大金に興味ありませんしね。このクエストの報酬で十分です。魔石こいつをどうするかは、村長さんが決めてください」

「 はあ、分かったよ」


夕陽は村長に魔石を手渡すと、ユリカと一緒にギルドに戻った。


「 ユウヒさん。本当に、女性ですの? 行動が、男前過ぎじゃありません」

「 うーん。そうかあ?」

「 そうですわよ。あとがさつといいますか、スカートじゃないにしても、キュロットスカートでも下着が、見え隠れするのに気にせずにまたを広げてすわるでしょ」


ーーーうーん。こりゃ俺の過去の話さんといけんの。



夕陽は、ユリカの話を聞き流しながらそう思った。

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