17 決断
「うっん・・・・・ここは?」
夕陽が目を覚ますと白い天井と消毒液に似た匂いがした。脇を見ると点滴がぶら下がっているのが見えた。
「お目覚めですか?」
夕陽が視線をキョロキョロとさせていたら、左側からユリカの冷ややかな声が聞こえる。
恐る恐る首を向けると、怒りの目で夕陽をユリカが見ていた。
そして___
「あなた、どれだけ無茶したかわかっていますの?」
ユリカは、ガミガミと説教を始めた。
「 杖を手放すわ、ソラの忠告は無視するわ。大怪我した状態で魔法使用するわ。全く、何を考えていますの」
「全く。返す言葉もありません」
「分かれば、よろしいのです」
ユリカは、言いたい事を言うと、ベッドの側のテーブルの上から、水差しを取ってコップに水を注ぎ飲む。
一息ついてこう言った。
「 ヴァネッサ様やソラからも、お説教されると思いますわ。覚悟なさいませ。ユウヒさん。」
「 うっ 」
夕陽は、ユリカの一言に苦い顔になった。
その後、ヴァネッサとそらから、しこたまお説教をくらった。
「分かったね?」
「はい。反省してます。 それと、皆に話さなきゃいけん事があるんです。」
「なんだい? 話してみな」
「えーとですね」
夕陽は、夢の中で神様に、言われた事をヴァネッサ達に話した。
「なるほど。 あたしは、日本に戻れるならそうした方が、いいと思うけどね。」
「私も、そう思いますわ。ユウヒさんと離れるのは、寂しいですが」
「そらも、そう思うけど、そらも一緒は、駄目なの? そらは、夕陽と離れるの。やだよ。」
「 えーと」
夕陽は、そらの一言に、困惑する。夕陽だって、そらと離れたくない。日本には、戻りたいのは、事実だ。
けれど、そらと一緒に戻れないなら、日本へ戻るのを諦めるか、もしくは、そらをヴァネッサやユリカに託すしかない。
「 とにかく、今日1日考えてみな」
「はい」
ヴァネッサとユリカは、病室から出て行ったが、そらは病室に残り、とことこと夕陽のそばまできて、そこにお座りをする。
「夕陽は、どうしたい? 」
「どうも、こうも。日本に戻りたい。条件が、どんな条件か知らんけど」
「ね〜神様にお願いしてよ。 そら。ただのにゃんこでもいいから、夕陽と一緒がいい」
そらは、夕陽を前足でパシパシと叩いて、懇願する。
「よう考えたら、神様のせいで、いきなり異世界トリップしたんじゃし、そらの一匹や二匹オマケに戻っても、ええじゃん。つか、脅してでもそらは、一緒に連れて戻るようにしてもらおう。そうしょ」
黒い笑顔で、呟く夕陽を、そらは白い目で見ていた。
神様との約束の日。夕陽は、またあの場所にいた。
「さあ、決心はついたかの?」
「つきました。 けれど、俺から一つ条件を付けさせて下さい」
「 ほお? なんじゃ、言ってみぃ?」
神様は、髭を扱きながら言う。
「 俺の相棒を一緒に、日本に戻れるようにしてください。」
「 そんな事か。お安い御用じゃ。お前さんの相棒とは、あの白い猫の精霊、そらと言ったかの。」
「 はい、そうです。あの、ところで俺が、日本に転生し直す為の条件って何ですか?」
夕陽は、神様に条件について訊く。
「まずは、今の性別は、変えられん。戻れば分かる事じゃがな。お前さんの記憶とまわりの人間の記憶が違う事に、なるはずじゃ。これは、お前さんに取って都合の悪い事にならんように、ちと、細工させてもらう。」
「 どういう事ですか?」
夕陽は、神様の言うことの意味が、さっぱり分からずに、訊き返すが神様は、先程言った事を繰り返す。
「 じゃから、戻れば分かると、言っておるじゃろう。 他に訊きたい事は、あるかの?」
「 転生し直すという事は、やっぱり」
「 いやいや、そこまでは、せんよ。一度死んでるのに、もう一度死ぬ事は、せんでも、ちゃんと、そこは考えてある。明日になれば、ちゃんと、分かる」
神様は、それだけ言うと、この前と同じように、乱暴に夕陽を戻した。
「 やっぱり、あの神様。乱暴じゃ」
夕陽は、ベッドで目が覚めると、そう言った。