討伐戦 3
討伐戦 3
夕陽は、走って出来るだけダークベアを、自分の方へ惹き付けた。
「 炎よ。踊り狂え。 ダンシングフレイム」
夕陽が、詠唱すると、炎が凄まじい勢いで、ダークベアを襲うが、肝心のダークベアは、ケロリとしている。
「 マジか! どんだけ、頑丈なんよ」
夕陽は、呆れつつ間合いを取る。
今の攻撃で、ブチギレしたダークベアが、ギシャーと吠えながら夕陽に、突進してくる。
「大地よ、敵を屠る」
夕陽は、走りながら呪文を紡ぐが、魔法が完成する前にダークベアの爪が夕陽に襲い掛かる。
「があ!」
夕陽は、前足の爪で左肩を抉られた。
激痛のあまり、その場に座り込む。
ダークベアは、 夕陽の前に立つと、口を開く。
『 人間の小娘にしては、なかなかやるな』
地の底から、低く唸るような声で、喋ったダークベアに、夕陽は驚きを隠せない。
「 喋れるんかい。喋れるんなら、最初から喋れや。汚いのう。お前」
夕陽は、息も絶え絶えに、話す。
そんな、夕陽を見ながら、ダークベアは、ニヤァと小馬鹿にしたような笑みを浮かべて話す。
『長く生きておれば、人間のように、話す事等容易い事よ』
「 へ〜。話せるんなら、人間と話し合いせんのか?」
『 話し合い? なぜ、わしがそんな事をせねばならん。 人間は、わしにとっては、食料。お前ら人間だって、魚を獲ったりするだろ? それと、同じ事』
ダークベアは、話すのを止めると夕陽を見ながら、舌舐めずりをする。
『 お前が、その身を捧げるなら、考えてやってもいい。 お前の体から溢れ出る魔力は、最高にうまそうだ』
「 やじゃ。俺が体を差し出しても、町の人襲わんなんて、保証ないじゃろ」
『じゃあ、交渉決裂〜』
ダークベアは、再び爪をふるい、夕陽を襲う。
「があ」
今度は、背中の肉を抉られ夕陽は、倒れる。
夕陽は、激痛に耐えながら、どうにか、体勢を立て直す。
「 風よ。敵を切り裂く刃となれ。ウィンドブレード」
夕陽は、激痛に耐えながら、次々と呪文を紡ぐ。
「 水よ。敵を凍てつかせろ。アイシングウォーター」
『 小娘。さっさと諦めろ。楽になれるぞ』
しつこく、攻撃を続ける夕陽に、ダークベアは心底呆れ、そう言う。
「 誰が、諦めるかいや。俺が諦めたら、戦っとる他の人間が、迷惑する。仲間を必死に呼びに行った、相棒に愛想つかされるわい」
夕陽は、ダークベアに、言いたい事を言うと、呪文を再び紡ぐ。
「炎よ。 踊り狂え。ダンシングフレイム」
『 ぎゃあ。やめろ。小娘』
ダークベアが、夕陽に懇願するが、夕陽は、攻撃の手を緩めない。
体から、大量に血が流れているのも構わず、夕陽は、更に呪文を詠唱する。
「氷よ。敵を屠る散弾となれ。 アイスショットシェル」
『ヒギャアア。本当に、止めてぇ』
ダークベアが、そんな、悲鳴をあげた時、別な方向から、呪文を詠唱する声がする。
「 氷よ。 踊り狂え。そして、敵を滅ぼす氷雪となれ。ダンシングアイス&スノー」
無慈悲な雪が、ダークベアを被いそして、凍てつかせると、ダークベアごとバリバリと崩れて消えた。
「 何やってんだい。馬鹿弟子。死にかけてんじゃないよ」
「 ヴァネッサさん 」
「 喋るんじゃない。治癒魔法使える奴くるから」
夕陽は、もう一度喋ろうとして口を動かすが、そこで、意識が途絶えた。
「 ユウヒ。しっかりしな。ユウヒ」
ほどなくして、治癒魔法の使える冒険者が、到着するまで、ヴァネッサは、夕陽の名前を叫び続けた。
シリーズ
異世界転生なんて聞いてません。