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6話

「悪い。こいつも一緒にいいか?」

「伊藤くん?え?あかりちゃんどうしたの!?」


 佐藤さん…菜穂ちゃんの声がした。


「部屋で寝かした方が…」

「いや、1人より誰かと一緒にいる方が落ち着くと思うから」


 そっと椅子に座らさせれたのがわかった。


「嫌な気持ちにさせて悪かったな。ここなら大丈夫だから」


 大河の手が軽く頭を撫でて、離れていった。


 少しして、菜穂ちゃんの声が聞こえた。


「あかりちゃん、大丈夫?」


 目を開けると、広い部屋。色んな道具がある部屋に何人かのクラスメイトと、数人のこの国の人達がいた。


「ここは?」

「非戦闘組が特訓してる部屋だよ」


 さっきの女の人達はいない。

 ホッとしたら震えも治まっていた。


「今それぞれで薬とか道具作りを練習してるの。だからあかりちゃんも、ここでゆっくりしたらいいよ」


 菜穂ちゃんが優しく笑って、背中を撫でてくれた。何があったか聞かないでくれる優しさが嬉しい。


「うん、邪魔にならない様、大人しくしてるね」


 その後は菜穂ちゃんも、葉っぱをすり鉢に入れてすり潰し始めた。


 離れた所にいた高橋さん…くるみちゃんが、軽く手をふってくれた。その近くに鈴木くんもいて、同じく手を振ってくれてる。


 大丈夫。ここには悪意はない。


 温かい空気に包まれて、わたしも久しぶりにノートと鉛筆で創作活動に励んだ。




◇◇◇




 異世界4日目。


 今日は朝から若ちんに呼び出しされ、昨日の女性達について説明を受けた。


 昨日わたしに絡んで来たのはこの国の王女様と取巻き令嬢達で、勇者の大河とお近づきになりたくて見学に来てたらしい。


 若ちんはあの後、王様に特訓の邪魔をしない様に直談判したらしく。もう王女や取り巻きが、わたし達のいる施設側に来る事はないと言われた。ちょっとホッとした。


 そして今日からは非戦闘組に混じる様に言われた。


 クラスメイトの能力の傾向を見ていると、本人の性格や身体能力、趣味等が影響しているらしい。


 だから、わたしが趣味に没頭すればきっと能力の傾向がわかるだろうと言われた。


 ある意味お手上げって事かも。


 という事で。午前中は真剣な顔ですり鉢と向き合っている菜穂ちゃんや、色んな道具に囲まれて半べそ顔のくるみちゃんを描いたりした。


「わー上手だね!」


 昼食時に菜穂ちゃんが私の描いたスケッチを見て感嘆してる。


「ふえ~ん、私こんな顔してるんですか?」


 くるみちゃんは半べそで私の描いたイラストを見てる。その顔にそっくりだ。菜穂ちゃんがソックリって突っ込んで、近くのクラスメイト達から笑いが起きた。


「そういえば田中さんは、召喚系のクラスも見て来たんだよね」


 一緒に昼食を摂ってた鈴木くんから、聖獣どうだった?と聞かれた。


「聖獣?」

「うん。召喚系は始めに聖獣と契約して呼び出すって聞いたけど」


 あれ聖獣だったんだ!

 昨日早朝からそっぽを向かれた動物達を思い出す。


「色はカラフルだったけど普通の犬や猫、あと子熊みたいだったよ」

「そうなの?てっきり羽とか角とかついてると思ってた」


 鈴木くんがビックリしてる。


「聖獣かぁ。そしたらペガサスとかユニコーンとかのイメージね」


 菜穂ちゃんの言葉に、くるみちゃんが、どんな動物?と首を傾げた。


 わたしが鞄に入れていたノートに鉛筆でサラサラとペガサスとユニコーンを描く。


「わあ!あかりちゃん上手!」

「えへへ、ありがとう」


 空想上の生き物大好きだからね!

 だいぶ練習したの!


「僕は聖獣と言ったら鳳凰とかフェニックスかな」


 サラサラと描く。わぁ!リアル!と鈴木くんが驚いた。えっへん。


「ふえぇ、あかりちゃんスゴイです。あかりちゃんはどんな聖獣が好きですか?」

「私は自分でイメージするなら、こういう子がいいな」


 描いたのはエゾモモンガ。

 森のマドンナで、おっきい目がクリクリして可愛いんだよね!


「それ欲しいペットでしょ」

「あ!確かに!」


 菜穂ちゃんのナイスツッコミにくるみちゃんと鈴木くんが笑った。

 楽しい昼食時間はあっという間だった。


 その後は、どうせなら皆を描いて欲しいと非戦闘組のみんなから要望され、午後も非戦闘組のスケッチをして過ごしたのだった。

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