1話
そもそも何でこんな状況になったかと言うと。
10日ほど前に遡る。
◇◇◇
晴れた秋空が美しいとある日。
その日は待ちに待った学園祭だった。
朝から学校中がお祭騒ぎだった!
お化け屋敷や演劇やら、どのクラスも最後のチェックでワイワイしてる。
わたし達のクラスは定番のカフェだ。
教室に着くと、他のクラス同様に朝からてんやわんやしていた。
配膳班はエプロンをつけて、作り置きのお菓子や飲み物の最終チェック。
呼び込み班はウサギやパンダの着ぐるみを着てプラカードを持ってる。もう準備は万端だ!
「おはよう!」
「田中さん。おはよう。良かった、今日は遅刻しなかったね」
「江川さん。楽しみ過ぎて普段より早く起きちゃった!」
「あはは!それでも結構ギリギリよ。もうみんな集まってるよ」
クラス委員長の江川さんが笑う。この人は美人な上に私にも色々声をかけてくれる良い人だ!
「あかり、お前カフェの担当は何だ?」
幼馴染の伊藤大河に声をかけられた。
大河は配膳担当で執事ぽい制服みたいのを着ている。背も高いしイケメンだから良く似合っていた。
クラスの女子曰く、客寄せ担当も兼ねてるとかとか。
「ジュース担当だよ。途中で部活の方で抜けるけど」
「そうか」
「話し中ごめんね。田中さん。おはよう。これエプロンだよ」
エプロン片手に話しかけてくれたのは、同じジュース担当の鈴木くんだった。今日もでっかい瓶底メガネがキラリと輝いてる。
挨拶とお礼を言いながらエプロンを受け取ったところで、担任の若宮先生こと、若ちんがホームルームするぞ!席につけー!て入ってきた。
「若ちん、もうセッティング終わってるから無理だよ~。今さらホームルームいる?」
「うっせえ!いる!じゃあ注意事項話すから適当に立ったまま聞け!」
さすがヤンキー先生。
相変わらず口が悪い。でも生徒思いの熱い性格だから、生徒からは人気の先生だ。
若ちんが本来教壇のあった場所に立った瞬間。
いきなり床がピカー!て光った!
「眩しい!こらー!誰だ床に何かまいたのは!」
「若ちん、うちら何もしてないよー!」
「目がー!目がー!」
クラス中が大騒ぎしている間に、その光は教室いっぱいに溢れた。
わたしも眩しさにギュッて目を閉じて。
次に目を開けた時は、石畳が広がった広い場所にいた。
何が起きたかわからず、ほとんどのクラスメイトがポカーンとしている中。
何人かの男子が「おお!これはもしや異世界転移!」「とうとう俺達にもチートの力が!」とか、なんとか騒いでた。
その後がまた、大変だった。
よく見たら、私達クラスメイトから距離を開ける様にして、大人数のコスプレイヤーみたいな人達がこちらを観察していた!
その中から1人の一際派手なおじさんが歩み出て来た。
ふわふわのついた赤マントをつけて、頭に王冠載せたおじさん(王様!?)が両手を万歳して芝居がかって叫んだ。
「おお!勇者とその一行よ!我が世界を救ってくれ!」
おー。何か漫画とかで聞いた事あるような、ないような。
「…ん?」
王様(仮)がクラスメイト達を見回して、ぎゃー!と悲鳴をあげた!
何事!?
「モンスターが!モンスターがいるぞー!討伐せんかぁー!」
王様(仮)が叫び。
それまで、後ろに控えていた剣を手にした騎士(仮)とローブを被った魔法使い(仮)のコスプレイヤー達が一斉に飛び出してきた!
「ぎゃー!何すんだ!あぶね!」
「モンスターが喋った!高位の魔物か!?」
「あほー!着ぐるみじゃあ!!」
「モンスターから人が出てきた!食われてるぞ!ヒーラーは癒しを!」
着ぐるみ担当の男子とコスプレイヤーおじさん達がギャーギャーと揉め。若ちんと周囲の男子達がモンスターじゃねえ!とコスプレイヤーおじさん達を羽交締めにしたり、とにかく大騒ぎだ。
……いや、もうこれ。女子何も出来る事ないよ。
女子はみんな同じ事思ったみたいで。
「もう若ちんと男子達に任せよ」
「あ!カフェで出す予定のクッキーあるよ~。みんなで食べよ~」
とりあえず女子は仲良く固まって。
おやつタイムに突入した。クッキー最高!