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ソード&マシーナリー  作者: 天城リョウ
第3節 エルフ&ドワーフ
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第22話 河港

(あっちの西洋鎧はタンバリンの聖騎士パラディン、こっちの中華鎧はアタルの仲間シェン・ウー、そっちの肩当てが無闇にデカい前世紀末(ボクが生まれる前)の和製西洋ファンタジー的デザインの鎧はレアアースの魔法戦士マジックファイターだね……)


「おう、戻ったぜ」



 酒場でくつろぐPCプレイヤーキャラクターたちの服装がこのゲームクロスロード・メカヴァースのどの参戦作品のどの登場人物に由来するものか当てるゲームを脳内でしていたアキラの思考が、オル(オルジフ)の声で中断される。


 任務ミッションの依頼を受ける手続きをしに単身で受付に向かったオルは、いくらもしない内に戻ってきていた。



「早かったですね」


「どういう内容かは確認済みだからな。そんな手間かかんねーよ。さ、任地に出発するぞ。こっちだ、ついてこい」


「はい」「はい」「うむ」



 アキラの返事にレティ(スカーレット)アル(アルフレート)も続き、3人してオルの後ろについて歩く──その向かう先は、入ってきたのとは反対側にある扉だった。



「……!」

「は~っ」



 アキラは思わず息を飲んだ。レティもため息をついている。目の前に広がったのは、この冒険者ギルドに来るまでの建物に囲まれた街並みから一転して、広々とした川岸の港の風景だった。


 その存在は地図で見て知っていた。


 ここ 〔地下世界インナーワールド〕 の 〔始まりの町〕 は川岸に沿って築かれている。アキラとレティはこれまで反対側にばかり足を運んでいたため、こちらに来るのは初めてだった。


 水面がキラキラと陽光を反射している。


 圧倒されるほどに大きな川。


 幅は1キロメートルほどか。


 東京湾岸に住むアキラが見慣れた、東京湾に流れこむあらかわの下流・河口付近が約800メートルと記憶しているので、それをやや上回る広さだと目測でなんとなく分かった。


 川幅は上流から下流に向かうほど広くなるもの。この地点は大陸の内陸部なので、この川の上流か中流のはずだが、それでもうこの広さ。


 まさに大河。


 大陸を流れる川は島を流れる川よりずっと長くなるため、河口に達する前にこれだけ広くなる。島国・日本では馴染みのない大陸スケール、アキラはそれだけでワクワクした。


 しかも、それだけではない。


 港に停泊しているあの船は。


 海賊映画に出てくるような、大航海時代に活躍した木造船。ただ船の上部にあるべき、風を受けるセイル帆柱マストがない。


 その代わり骨組みに布を張った、前後に長い紡錘形の風船があり、そこから垂れた多数のロープによって船体が吊られる形になっている。


 あの風船──ガス袋の浮力によって空を飛ぶ船、飛行船。それは現実にも存在するが、現実のものは大航海時代よりあとに発明されたため、こんなデザインはしていない。


 あれは──



「〔どうたいりくドラゴナイト〕 に登場した熱飛行船‼」


「しかも背景に映ってた名もなき端役モブたちの船ね⁉」


「ほう。2人とも、よく知ってんな」


「アタル以外も詳しかったでござるか」



 アキラとレティがロボットオタクとしてディープな知識を披露すると、オルとアルに感心されたようだった。


 自分たちはしんえいゆうでんアタルの主人公とヒロインの格好をしているためアタルファンのイメージが先行し、他のロボット作品についても詳しいのは意外だったらしい。



「アタルについてほどじゃないです」


「まーまーってとこね」


「今のが 〔まーまー〕 か? まぁいい。見てのとおり、これはドラゴナイトの熱飛行船だ。受けた依頼がドラゴナイト系シナリオだから任地までこれで行く」


「もし受けたのが他作品のシナリオだったら、その作品に登場した船が現れてたでござるよ。ゲームオリジナルシナリオなら、オリジナルの船になるでござる」


「「へぇ~っ」」



 ゆくゆくは全ての船を制覇したい。


 アキラはその第一歩を踏みだした。


 桟橋から船の上甲板にかけられた板の足場を登って……左右に手すりもないので川に落ちそうで怖い……渡り、乗船。


 そこはまさに海賊たちが斬りあいをする甲板といった風情で、立つだけでアキラはテンションが上がった。


 そして、そこでは海賊──ではなく、まっとうな水夫らしきNPCノンプレイヤーキャラクターの男たちが働いていた。自分たちは乗客で、彼らがこの船を動かす乗組員クルーたち。


 彼らは全員、耳が尖っており。


 その半数は、背が極端に低い。


 つまり──

 


「エルフにドワーフ! それも」


「ドラゴナイトの、ですよね?」



 アキラの声に続いたレティは、彼らと背格好が共通するアルとオルに確認した。アルは人間サイズの森林の妖精エルフで、オルは小人サイズの大地の妖精ドワーフ。


 このゲームには覇道大陸ドラゴナイト以外にもエルフとドワーフが登場する作品は参戦している。だがドラゴナイトの船の乗組員が別作品の種族ということはないだろう。


 はたして──



「左様。ちなみに拙者も他作品ではなく 〔ドラゴナイトに登場するエルフ〕 という設定で役割ロール演技プレイをしているでござる」


「オレも 〔ドラゴナイトに登場するドワーフ〕 だ。ここにいる小っちゃいほうの連中の同族って設定よ。ま、勝手に言ってるだけで向こうからすりゃ他のPC(ピーシー)と変わんねぇがな」


「「そうだったんですか!」」



 アル(アルフレート)オル(オルジフ)、友人同士の2人の設定種族がドラゴナイトの(﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅)エルフとドワーフというのは納得だった。


 エルフとドワーフはフィクションでは不仲に描かれることが多いが、覇道大陸ドラゴナイトでは両種族の仲は良好だから。



「この船も両種族の技術の融合なんですよね」


「軽くて丈夫な船の材料がエルフ製、ガス袋を膨らませる火をたくエンジンがドワーフ製、だったかしら……?」


「うむ! ドラゴナイトのエルフは独自設定で、植物素材を元の20倍も強靭に加工する技術を持っているのでござる‼」


「で、こっちはどこのドワーフもそうだが、ものづくりに長けた種族で、その職能の代表格が火を扱う鍛冶師だ。そっからエンジンみたいな火をたく機械を作るのも上手いって派生したんだな」


「そのエンジンなんだが……」


「「「「⁉」」」」



 突如パーティーメンバー以外の声がして、4人してビクッとする。声のしたほうを見るとオルとは別のドワーフ、乗組員のNPCが腕を組んでいた。



「火を入れて、出港して構わんかね?」


「「「「はい。すみません……」」」」



 出発するために乗った客がいつまでもおしゃべりしているので確認に来てくれたらしい。そんなアドリブまで可能なのか。昨今のAIの進歩ぶりに、アキラは改めて驚いた。

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