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ブリーフィング

完全にワープ航行に入り、ブリッジには安堵の空気が流れる。現地到着までは3時間程度、自動で航行してくれることもありみんなそれぞれに体を伸ばしたり首を回したりしてリラックスし始める。

俺もヘッドセットを外して立ち上がり体を伸ばしていると、ドアが開いてクラムがユウナを連れて戻ってきた。

「戻ったぞ」

「よし。みんなリラックスしてるところ悪いが席をこちらに向けてくれ、ブリーフィングだ」

指示を出すとみんな一斉に俺の方に椅子を回す。クラムとユウナもそれぞれの席につき、俺は席のタッチパネルを操作し、俺の席の右にスクリーンを出して開拓宙域の宙域データを出す。

「早速だが、俺たちが向かっている先は太陽系から約36700光年離れたグリーンガーデン星系。地球型惑星のある数少ない星系だ。俺たち第2期団の目的は先行した第1期団「企業開拓団」からの情報を元に作られた宙域図を元に、それぞれ割り当てられた区画を開拓し、大戦期に逃げ込み潜んでいる宙賊団を殲滅することだ。そして俺たちが任されたのは第1区域、ここまでは理解しているな?

全員が頷き、話を続ける

「では、詳細な位置情報と周辺の状況の確認だ。俺たちは今第1区域のこの座標へと向かっているのは知っての通りだ」

スクリーンをタップして座標を示す。その周辺が拡大され、行き先の座標に白いピンが立った。

「事前情報では、基地建造予定地点から見て下の位置に小規模宇宙都市エンゼルがあり、資源も周辺にそれなりの量がある」

「宙賊情報は?」

「主に都市周辺で襲撃報告がある。軍によると、都市からは「基地が近くにあるかも知れない」と言われてるらしい。パトロールも出しているそうだがかなりの距離があるせいで頻繁には来れないようだ。それと、資源地でも目撃情報がある」

マップの表示を変更し、襲撃多発地点と資源地帯をピックアップ。基地建造予定地点の近くに絞って襲撃には赤、資源には緑でピンを立てる。

「よって、現地到着後は速やかな基地建造と、安全確保のための宙賊の討伐が必要になるな。だが宙賊討伐自体はすぐはできない。当分は防衛を中心、ある程度戦力を整えばこちらから出向き宙賊を潰していく」

「周辺の他勢力や開拓者はどうなっていますか?」

「今のところ、第一次開拓団の前哨基地が数カ所と第二次開拓団の基地建設予定が近場に2つだな。企業勢力はさっきも言ったエンゼル、それと離れたところにある連携型大規模都市のエノクとバベルを持つ「ヘブンズスペースカンパニー」、遠いが大規模都市ニューコートと付属小都市カール、メイル、クアドを所有していて、近場にも中継基地を持っている「アルアンドロ工業」があるな」

「ヘブンズスペースカンパニーは開拓計画のスポンサーですし、早めに連携を取りたいところですね」

「それはそうなんだけどよ、都市周辺で宙賊の襲撃報告があるんだろ?物資補給で船を出すときのリスク高くないか?」

「俺もそう思う。都市周辺に絞ると、基地建造地点とエンゼルを直線に結んだ線に近い位置で報告が多い。特定の航路に絞って宙賊行為をしているのならば、連絡船を出すにしてもそれなりに戦力を整えてからでないと「資源はあるが物資がない」なんて状況になりかねないぞ」

現実的な2人の意見だが、それについては既に手を打ってある。俺はリアークを隣に呼び、2人の意見にまとめて答えを出す

「その意見については想定済みだ。よって、到着後の戦力増強について、リアークがスポンサーから艦艇の設計図を3つ確保してくれた」

「今スクリーンに出す」

リアークがタッチパネルを操作してスクリーンに3隻の艦艇設計データを出した。

「右から順に「ミカエル級武装探査フリゲート」、「ガブリエル級対艦重砲駆逐艦」、「ラファエル級ミサイル搭載駆逐艦」だ。ミカエル級は文字通り偵察と調査、ガブリエル級とラファエル級は対宙賊艦隊用として提供してもらえた。詳細なスペックについては長くなるため、簡易的な説明にする。ミカエル級は高速航行に優れ、ある程度の輸送能力を持っており、自衛用の対艦速射砲塔を搭載している。ガブリエル級は対大型艦用の艦首固定重砲での攻撃、ラファエル級は多目的ミサイルランチャーによる小型艦掃討用艦艇だ」

「これに加えて、支給品目のこの4隻の設計図がある」

次は俺が操作して別の4つの設計データを出す。

「軍用標準艦の「F130型多用途フリゲート」、「D11型大型輸送駆逐艦」、「C9型多用途巡洋艦」、それと「G61型汎用艦」だ。建造計画としては、資源確保が安定するまではF130とミカエル級の建造に集中して周辺調査と対宙賊防衛を行いつつ資源集めに集中、ある程度の資源と周辺情報が集まりしだい駆逐艦、巡洋艦級の建造に入っていく形だな」

「汎用艦は?それと、探索はどの時期から始める?」

「すまん、飛ばしていたな。汎用艦を1番に建造、資源確保。その後はさっき言った通りだ。探索は自衛ができる程度に艦艇ができてからで考えている。ブリーフィングとして共有すべきことは話したと思うが他には何かあるか?」

「勢力図とかそう言うものは無いですか?どの勢力に気をつけるべきかとか分かればいいんですけど」

「勢力図では無いけど、勢力ごとの都市保有数と勢力圏を纏めた表と宙域俯瞰マップはある。これを見てくれ」

設計図から表に切り替える。言った通り、星団全体の全勢力についてまとめてあるものだ。軍から提供されるもので、開拓スポンサーや協力企業は緑、独自開拓参加企業は白、宙賊や戦争中の企業勢力は赤で色分けされ、さらにそれを区域で分けられており担当区域の情勢が把握しやすいように作られている。さらに情勢変化の情報が太陽系の宇宙軍本部に入り次第更新されるため、貴重な情報源だ。

「1区は傘下も入れてヘブンズの一強、2区と5区は程よく分散してるけど3区と4区がちょっと不穏だな」

「不穏どころか、3区と4区の境界付近は「グライスナー工業グループ」と「ボンヨン宇宙資源採掘団」の紛争地帯だ。しかもどちらも国家を代表する規模の宇宙開拓企業、覇権争いだな。この辺りは資源地でもあるが戦闘が激しく巻き込まれて損をする未来しか見えないからスルーで行く。他にデリケートなところは2区の「ベリンズギャラクシー」、こいつは裏に宇宙マフィアがついている噂がある。それと5区の「ヴェンチュヴェル・パイオリニング」は1期の個人開拓者の連合だがかなりの過激派だ。この連合の意にそぐわなかった30近くの1期開拓団と4つの企業がここに潰されている。どちらも丁重なやりとりが必要だ」

「宙賊に奪われた都市もあるんですね……」

星系の中心に近い第8区域に集中している宙賊の占有都市を見てユウナが言う。あまり詳しくはないが、この辺りは第1期開拓初期にいくつかの企業が都市建造を行なっている中宙賊の度重なる襲撃の結果一部が倒産し、所有者が消えた都市を宙賊の連合が占拠したらしい。その宙賊連合も大戦時の宙賊団が大半で、第8区域は軍の討伐艦隊も容易には手を出せない区域になってしまっている。もちろん、宙賊の占有都市が8区だけにあるわけでもない。

「基本的に宙賊の都市には無干渉、一基地の戦力では逆にやられる未来しかない。ただ戦力が整えば攻略し所有も視野に入れていく。もちろん襲ってくる場合はそれに応じて対応だ。それと、他の勢力からのコンタクトがあれば慎重に交渉していく必要がある。勢力相手の交渉は俺が出る必要がなければ基本クラムに任せたいがいいか?」

みんなは何も言わず、クラムの方を見る。

「わかった。俺に任せてくれ、方針さえ伝えてくれればそれに合わせて交渉を進めてみせるさ」

「よし、ではブリーフィングは終了だ。到着までは……1時間半程度か、各自休憩しつつ到着後の準備を始めよう。もうひと踏ん張りだ!」

「オー!」

それぞれに持ち場へ向かう仲間たち。ブリッジの外に持ち場があるユウナ、クラム、リアークを見送った後、俺タッチパネルを操作してスクリーンを格納する。背面に回していたディスプレイを代わりに出し、各種作戦計画の作成をしていく。


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