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雑談話② 虫の進化に思う不思議

 地球に生命が誕生して以来、虫たちの歴史は果てしなく長い。そして私が思うに、虫たちの進化の速度(スピード)はとても(ゆる)やかで遅い。

 太古の昔、虫たちが水辺から陸上に進出した時期は、脊椎動物が陸上に進出するよりも一億年も早かった。三億年前には既にトンボやゴキブリなどが生存していた。身体の大きさこそ小さくはなったが、三億年経った現在も、その容姿はほとんど変わっていない。


 では脊椎動物の進化はどうだろう。脊椎動物は、一千万年もあればその容姿をとてつもなく変化させる。

 例えば我々、人間。数百万年も(さかのぼ)れば、もう、原人とか猿人と呼ばれる(しゅ)になってしまう。更に遡れば原始の霊長類、分かりやすく言えば、リスやネズミに近い小動物になってしまう。

 猿人から現代人への進化に要した歳月は約二百万年、原始の霊長類から現代人への進化に要した歳月は七千万年ほどだという。

 ちなみに原始の哺乳類の誕生は二億五千万年前。アデロバシレウスと呼ばれる、体長10~15cmほどのトガリネズミによく似た生物だった。

 つまり、我々人類は哺乳類誕生以来、二億五千万年かけて現在の姿にまで辿り着いたのだ。


 では、虫たちはどうだろう。虫たちは三億年以上もの長い歳月の間、いったい何を目指してきたのだろう。

 それだけの長い進化の猶予期間があれば、虫たちはもっと賢く知性的に、もっと文化的に進化を遂げることができたのではないかと私は思うのだ。


 虫が古来からあまり進化しない理由の一つとして

「既に今が完全体だからもう進化の必要性がない」

と言う人がいる。


 そうだろうか? 必要性がないから進化しないのだろうか?


 私は、必要性がなくても生物は進化すると考える。

 例を挙げるならカブトムシとクワガタムシ。私が思うに、彼らは実に遊び心のある残念な進化を遂げた虫だと思う。


 カブトムシとクワガタムシの(オス)は格好のいい(ツノ)大顎(ハサミ)を持っている。

 これらは闘うための武器という認識が一般的には強いだろう。実際に彼らは喧嘩をすれば滅法強い。だが、通常の自然界の生物が持つ武器は、弱肉強食の世界で獲物を捕食するため、あるいは(おのれ)の身を守るために振るわれるのだ。

 カブトムシ。クワガタムシ。彼らの闘いには弱肉強食という観念は乏しい。だから、相手の命を奪うことも滅多にない。相手が戦意喪失すれば闘いが終わる。そして闘いの後は、勝った者も負けた者も、結局は樹液を舐めるのだ。

 私には、彼らの闘いは自己満足のためだけのものに感じてならない。闘わなくても、元々その身体(カラダ)(ヨロイ)のような強固な外骨格で守られている。これを破壊できる(てき)はおそらくはいないだろう。樹液を舐めるのに闘う必要性なんて無い。武器を持たないコガネムシのように、身を守る強固な外骨格(ヨロイ)だけで十分なのだ。

 故に私はカブトムシとクワガタムシの進化を遊び心のある残念な進化だと思うのである。

 しかし、彼らのその生涯はヤンチャで自由気ままで実に楽しそうだ。

 生物の進化は必要性だけでなく、その生涯を楽しむための遊び心のある進化があってもよいのではないかと私は思う。


 学者の意見についても少し考えてみよう。私は彼らの考えに対しては少なからず違和感を持っている。


 虫が知性的になれない理由は脳のサイズが極小過ぎて容量が足りないため、と言う学者がいる。


 だったら脳が大きくなればいい。


 身体が小さ過ぎるから大きな脳は持てない、と言う学者がいる。

 虫のような外骨格生物は身体が大きくなると自重(じじゅう)で身動きが取れなくなるから大きな身体は持てない、と言う学者がいる。


 いやいや、脊椎動物が現れる前の太古の虫たちはとても巨大だった。その大きな身体でしっかりと力強く暮らしていた。


 現在の虫たちは基本的に小さい。虫たちの身体が小さくなった理由については、地球の酸素濃度の減少が挙げられている。

 しかし、虫たちが巨大だった時代は短くはなかった。大きな身体の時に大きな脳を獲得することは可能だったのではないかと思うのだ。


 人間は直立二足歩行になったことで、手で道具を使うようになり進化したという。言葉と文字を扱うことで文明を持つようになったという。

 要は、手で道具を使い、言葉を喋ることで賢くなった。


 私は思う。例えば螳螂(カマキリ)。四歩脚で立ち、前脚二本で獲物を掴む。つまり、前脚を手のように使っている。

 例えば(アリ)(ハチ)。社会性のある大きな組織(コミュニティ)の中で生活し、仲間同士独自のコミュニケーション手段を持っている。

 そう考えると、虫たちが知性的に進化を遂げる条件は少なくとも揃っているのではないだろうかと思う。

 

 虫たちの寿命は他の生物と比べると基本的に短い。言い方を変えるなら、他の生物よりも圧倒的に世代交代が速い。人間の一生の間に何十回もの世代交代をする。

 世代交代をより多く重ねる虫たちのほうが進化の速度(スピード)が速いと考えることは妥当ではないのだろうか。


 何故、虫たちはとてつもない長い歳月の間、その姿を変えないのだろう。

 虫たちがなかなか進化しないことを私は本当に不思議に思う。


 虫たちは各各(おのおの)がとてもユニークな能力を持つ。現実的な能力から意味不明な能力まで、多種多様だ。

 そんな虫たちがもしも人類のように進化したのなら。

 知性が発達し、他種との共存を考えるようになったなら。


 宇宙に浮かぶこの地球という惑星、水と生命に満たされた青と緑のこの奇跡の惑星は、きっと最高に面白い星になるのだろうと私は思うのだ。


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