モブライフを楽しむはずがどうしてこうなった!?
初小説でドキドキしています。主人公たちの名前も考えていないぐだぐだな設定ですが広い心で読んでもらえたら幸いです。
「あれ?新入生?」
誰もいない教室に美声が響いた。突然声を掛けられた私の肩はビクッと動いてしまう。
「は、はい……」
返事をする以外に言葉が出なかった私は目の前の仕事に集中しようとする。
「ふぅん。新入生に仕事を押し付けて他の人間はどこに行ったのかな?」
絶対零度のような低い声が耳に届いた。見なくてもわかる。相当怒っているということに。
「ええと。ある女子に誘われて息抜きに行きました」
事実を述べた。嘘を言っても仕方がないし私は早く帰りたいのだ。
面倒なことは避けたいしね。
「あの、早く終わらせたいのでそれ返してもらえませんか?」
そこで私は初めて美声の持ち主を見る機会を得てしまった。
そこには直視不可能と思うほどのイケメンが立っていた。
見てすぐにそのイケメンの手から書類をひったくって仕事を再開した。一刻も早く終わらせてこの場所からトンズラしようと思ったのだ。
(無理無理無理!!こんなイケメンと同じ空間に長くいるとか絶対無理!!さっさと終わらせて帰る!絶対帰………)
「俺もやるよ」
カタンと隣に人の気配を感じておそるおそる隣を見るとイケメンが座っていた。
(ギャアー!?な、なんで隣に座る訳!?席ならたくさんあるじゃないかぁぁぁ!!!)
内心は絶叫しているが表面上はあくまでも冷静にさりげなく席を空けたが、イケメンも空けた席にさりげなく移動してきた。
(なぁ!?ちょ、ちょっと!席を空けた意味ない!)
「早くしないと終わらないよ?」
妙に愉しげな声音が聞こえてきて、わざとやってる?という考えに至った私はかなりムッとなりながら仕事に取り掛かった。
隣では笑っているのか身体を震わせている気配がした。
(もう無視しよう。気にしすぎても仕方ない。こうなったらなにがなんでも早く終わらせて帰る!)
そう決意をして次々と書類を捌いていった。
「あれ?」
ある書類を見た時に何かがおかしいと思った。
「どうかした?」
隣から声を掛けられて疑問に感じたことを口にした。
「上手く言えないのですが。数字がおかしい感じがします」
何がどうおかしいのかが説明ができないもどかしさがあるけれど。この書類は少しおかしい感じがした。
「見せてくれる?」
「はい、どうぞ」
書類を隣にいるイケメンに渡して、次の書類に目を通そうとした。
「この書類の他におかしいと感じた書類はなかったかな?」
「それならそこにありますよ。私が判断しづらいものは仕分けしていたので」
目を通しておかしいなと感じた書類はわかるように分けておいた。
「ありがとう。それももらうよ」
「あ、はい」
どうぞと言う前に隣のイケメンが動いた。動いた際に香ってきた上品な香りに隣のイケメンはただのイケメンではなく尚且つハイスペック付きだなと勝手に考えてはたっと我に返った。
(雑念退散!集中集中!)
まったくもって勘弁して欲しい。誰か来てくれ。この空気耐えられません!
「あれぇ?会長来ていたんですかぁ?」
誰か来てくれた!助かった!………と思いたかったのだが、来た人間こそ私に仕事を押し付けて他の人と息抜きに行った張本人だった。
(うざい、キモい、あっち行け、アホ女)
「関係のない人間は出て行ってもらおうか」
絶対零度の声音がまたしても響いた。近くで聞くとこれまた迫力が半端ない。
「ち、違うんですぅ!私が生徒会の関係者でその子が関係ないんですぅ!」
目をうるうるさせていかにも自分がヒロインだと言わんばかりの行動に嫌気がさす。
そうすれば男全員が陥落すると思ってのことだろう。
(脳みそ入ってないお花畑脳女がやるパターン。アホすぎる)
小さくタメ息をついて立ち上がろうとしたのにぐっと手を掴まれた。
(ん?)
手のほうを見るとしっかりと繋がれていた。隣に座っていたイケメンの手と。
「おかしいな。この子が生徒会関係者だと思ったんだけど。仕事はできるし気がきくし、他の役員を息抜きと称して連れ出したりしていないし」
仕事がはかどって助かったよ。と笑顔で言われて私はビシッと固まってしまった。
(う、うわぁぁぁぁッ!イ、イケメンの笑顔を直視してしまったぁぁぁッ!!反応に困るからやめて!気絶していいですか!?)
逃げたくても手をガッチリと掴まれているために叶わず真っ赤になってしまった顔を下に向けること以外にできることはなかった。
(もうっ!なんでこうなるの!?私はモブライフを楽しめれば良かったのに!!)
けれど私はまだ知らない。モブライフができなくなるばかりじゃなくて会長と呼ばれたイケメンに溺愛されてついにはそのイケメンに落とされてしまうということに気付いていなかった。
お読みいただきありがとうございました。
この小説を元にした連載をタイトルを替えて始めました。タイトルは『私、モブのはずですよね?なのにどうしてこうなった!?〜溺愛されるとか聞いていません!〜』です。この小説の続編にもなりますので気になる方は読んでみてください。