紅葉狩りを、犬と
紅葉咲き、オレンジに染まった山の景色。
犬が一匹、尻尾を振りながら山を散歩し紅葉を見上げる。
足元は黄金色で、金粉のような色の紅葉が犬の回りに吹いている。
犬はこの景色が好きだった。何となく、楽しくなれるからだ。
この楽しみを共有できる仲間が最近出来た。犬は仲間の元に駆け降りる。
男は大の字に倒れ、紅葉を見上げていた。
足元に犬が駆け寄る。犬はご機嫌な様子で、男がいつも向けている視線の先に顔を上げた。
紅い森に囲まれ、空は青く晴れ晴れとして暖かい。
犬はここで男と日向ぼっこをするのが好きになりそうであった。
「~!」
犬は顔をしかめた。
悪臭がする。
「……」
男の顔を覗きこむ。
目はなく、頬は痩せこけ、そこから悪臭が立ち込めた。
「ワン!」
犬は男に背を向け、紅葉咲く山を駆け上がった。
命なき死骸となっていた男に手を差しのべる者は、誰もいなくなった。