セキセイインコ
あおいは、2羽のセキセイインコを飼っていた。
毎日餌やりを欠かさず、時々掃除して、大事に飼っていた。
付き合い始めの頃、ただしはあおいのそんな優しさを目を細めて見ていたものだ。
二人が同棲を始めて、間もなく、あおいが入院してしまった。
「セキセイインコを。セキセイインコの餌変えをして」
毎日電話をかけるただしに、あおいは懸命に訴えた。
「わかったわかった」
ただしは、はじめのうちはセキセイインコの世話をやいていたが、ある日、籠の扉を開けて外へ2羽とも逃してしまった。
退院して家に戻ったあおいは目を見開いて空の鳥籠を凝視した。
「籠の掃除してたら開いてた窓から逃げたんだ」
ただしはそう言った。
おりしも冬の最中で、外は雪が舞っていた。
もう、2羽とも生きていないだろう。
あおいは泣きじゃくった。
「そもそも、なんでペットなんか飼うんだよ?自分が世話できなくなったらペットだってどうなるかわかんないだろ?」
「なんでそんなこと言うの?!」
「人間が一番。人間が生きてくので精一杯」
「出ていって!」
「やれやれ」
肩をすくめるただしに、あおいはぴしゃりと言った。
「この家から出ていって!二度と会いたくない!」
寒空の下家を追い出されたただしにはあおいの気持ちは理解できなかった。