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【書籍化】シンデレラは探さない。  作者: 斎藤ニコ
【シンデレラは探さない。】
17/51

第17話 ツッコミ

 四人での昼食は、雨により外は無理。

 屋内での開催が確定した。


 ただしやはり誰もが『学校での居場所』を求めるもので、めぼしい場所には既に先客が居るものだ。


「やっぱり梅雨の時期はこうよね」と真堂。


 先ほど名前を聞いておいたクラスメイトの二人――ショートカットの『鬼島柚木(きじま ゆずき)』が「だよねー! いきなりドアあけるとカップルがいて、困っちゃうよー!」と頷く。


 続いて特徴的な表現をする小柄な女子生徒――『竹鳥言葉(たけとり ことのは)』が「さっきのカップルチューしてました……っ! ヒワイです……っ!」と興奮していた。


 学食や教室でも良かったのだが、俺がそう提案すると、二人の女子生徒はそれぞれ首を振り、そのうち竹鳥が呟いた。


「鼻血がでちゃいます……!」


 のぼせているのだろうか?


 さて。


 タイミングとは素晴らしいもので、廊下を歩いていると、用務員のおじさんに会った。

 テル姉に頼まれて時折、作業を手伝っている人だ。


 事情を話すと用務員の休憩室を使って良いという。

 姫八学園は巨大施設のためそういった設備も充実しており、時間によっては使われていないものが存在する。


「いいんですかね? 生徒が使っちゃって」と俺が確認すると、用務員のおじさんは笑ってこう言った。


「生徒が机やら椅子を直してんのはいいんかい?」


「たしかに。正論ね」


 頷いたのは真堂。

 そういうわけで俺たちは弁当を開く場所を確保した。


   ◇


 真堂と竹鳥が飲み物を買ってきてくれるというので、俺と鬼島が休憩室に残る。


 使わせてもらったお礼にどこか修繕する場所でもあるかと室内を見ていると、鬼島の呆れたような、感嘆するような、どっちつかずの声がした。


「荒木くんって、ほんとーに、下心のない奉仕少年なの?」

「奉仕? なんだそれ」

「ボランティア?」

「ボランティアってしたことないな、そういえば。自分のことしか見えてないからかな」


 募金とか、町の清掃とか――自分たちの生活で精一杯って感じで、人を助けている余裕はなかった。


「うわー、本物かー!」

「だから、なにがだよ」

「本物の善人は、自分が善人であることを知らない――というのがユズキちゃんの理論なのです。えっへん」

「……? よくわからないけど、鬼島とは友達になれそうな気がする。よろしくお願いします」

「真面目か!」

「真面目に反省した上で、友達を作ろうとだな―― 」

「ツッコミを潰さないでー! イヤー!」


 耳をふさいでイヤイヤとする鬼島。

 なんだか騒がしい奴だな……。


「まあいいや、荒木くん。真堂さんのこと――レイちゃんのこと、私たちの見えないところは、よろしく頼みましたよ?」


 理由は不明だが、このメンバーは周りに誰もいなくなると、真堂を下の名前で呼ぶらしい。


 俺はしっかりと頷いた。


「食事関係なら任せてくれ」

「母親か!」

「たしかにレイは独り暮らしだから、そう考えると母親の手料理ってのは――」

「イヤー! ツッコミに真面目に答えないでーっ!」


 なんでこんなに騒がしいんだ……?

 いや、見てて飽きないけども。


「荒木くん! そういう意味じゃなくてさ、レイちゃんは寂しがりやで、さらに荒木くんのことが――」


 その時、ドアが開いた。


「――わたしが、なに? 陣くんが、なに?」

「密告です……! 裁判です…っ!」


 飲み物を両手に持った真堂たちが、じと目を鬼島に向けていた。


「あ、いや」


 鬼島はなんだな気まずそうに視線をさ迷わせた後。


「てへっ!」


 ベロを出して、なにかを誤魔化した。

 

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