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【書籍化】シンデレラは探さない。  作者: 斎藤ニコ
【シンデレラは探さない。】
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第16話 チームワーク

 月曜日も梅雨は退かず、空は青空を恋しがるようにシクシクと泣き続けていた。


 昼休みに弁当の袋をぶら下げて立ち上がると、すでに真堂が側に近寄ってきている。

 探す手間が省けて良かった。


「レイ。約束通り、昨日の夕飯の残りで弁当作ってきたぞ。チキンのトマト煮の水分とばして作ったホットサンド。冷めちゃったけど」

「え、ええ。ありがとう」

「……? どうかしたのか」

「いえ……なんでもないわ。ごめんなさい」


 真堂はどこか落ち込んでいるようにも見える。


「謝る必要はないけど。平気か?」

「ええ。元気一杯夢一杯よ」

「無表情で言うセリフではないだろ」

「ニコニコ」

「変わってない」

「くいっ」

「指先で口角をあげても同じ」

「笑顔に対する要求が厳しいわ……」

「レイは笑顔もキレイだろうからな。一度くらい、見たいんだよ」

「じ、陣くん!?」

「ん?」


 どうした?

 いきなり教室がざわついたな。

 蜂でも迷い混んできたのだろうか。


「レイ、本当に大丈夫か?」

「だ、だいじょばないわよ! だいじょばないわよっ!」

「なぜ二回……?」


 よくわからないが、確かに昨日――日曜日の夕飯を共にしたときから、すこし疲れているようにも見えた。


 皿洗いをしてるときも、『レイちゃん、へーきー? お風邪ー?』と舞の声が聞こえたし。


 日曜日か……。

 俺にも大切な用事があった休日。

 同様に真堂にも何かはあったのだろう。


 ただ。


 それはプライベートだからな。

 あまり詮索するのも良くないよな。


 せめて腹を満たしてくれ――と真堂に弁当を差し出そうとした時だった。


「や、やあ! 荒木くん、やっほーっ! いきなりびっくりしましたけど、やっほーっ!」

「……公開処刑ですっ……公開処刑ですっ……!」


 真堂の背後から二人の女子生徒が現れた。

 最近、言葉を繰り返すのが流行っているのだろうか……?


 この二人。

 多分クラスメイトだ。

 どこかで見た顔……、そういえば真堂と電話番号を交換したときに一緒にいた女子生徒だ。


 ショートカットの人懐っこそうな笑顔を浮かべる女子生徒が言った。


「ねえ、真堂さん。それでどこでご飯を食べる? わたしたちはどこでもいーよ! ね、コトノハ?」


 すると横に立っていた日本人形みたいなだいぶ小柄な女の子が頷いた。


「は、はい。ユズキに賛成です……っ!」


 俺は二人――おそらくユズキとコトノハという名のクラスメイトを見てから、真堂に目を向けた。


「そうか。じゃあこれ、三人で食べてくれ。食い終わったら容器だけ返してくれればいいから」


 二人分だが、少し多めに作ってあるし、俺の分はもともと多い。

 小柄な女子生徒三人組にはちょうどいいだろう。


「陣くん、――」と真堂。


 それをユズキと呼ばれた女子生徒がブロック。


「荒木くんが来ないと意味ないじゃんっ! ね、コトノハ!」

「はい……っ! 男の子が作ったお弁当なんて、見るのもはじめてですっ!」

「コトノハ!? そういう話じゃないでしょ!?」

「はい……っ! 切腹に値します!」



 どっちが切腹するのかは分からないが、なんだか圧が凄い。


 自分の前の道が開けた真堂が、進み出てきた。


「陣くん、よければ……四人で昼食をとらない?」

「え? いいのか?」

「ええ。陣くんがよければ」

「四人で昼食か……」


 なんだかそれ。

 まるで友達みたいじゃないか?

 あ、まさか真堂、気を使ってくれてるのかな……?


「レイ――」


 俺はレイの手をとって、握りしめた。

 握手とは全世界共通の信頼の証だ。


「お前って本当にいいやつだな……顔も綺麗で心も綺麗で……感謝するよ」

「なっ――じ、陣くん!」


 ざわっと。

 教室内が揺れた気がした。

 

 周囲を見るが蜂などは見えない。


 真堂を見ると動作停止。

 ユズキ?は、口を半開き。

 コトノハ?は、顔を真っ赤にして手を口にあてている。


「……? どうした? 三人とも」


 再起動した真堂はあきれたような声音をしていた。


「わかったでしょう。これなのよ、陣くんは。いつもこうなの」

「なるほど! これはあれだね! あれだなぁ! うんうん!」

「こ、公開処刑です……っ! 公共の場に居てはいけないタイプです……っ!」


 よくわからないが、二人は俺のことを思って昼食に同席してくれるんだよな。

 もちろん感謝しかない。


「気を使ってもらって悪いな。本当にありがたいよ――」


 すかさずユズキとやらが口を挟んできた。


「荒木くん、朝から昇降口とかで、満面のさわやかスマイルで色んな人に挨拶しててさ!」

「おう。頑張ったぞ」

「普段とは違うから真堂さんに理由を聞いたら、友達が少ないことに気がついたらしいって聞いて……」

「挨拶すると、朝から親交が深まった気がするよな!」


 うんうんと頷く俺の言葉を捕捉するように、コトノハとやらが発言した。


「ほぼ別のクラスメイトに挨拶してましたよっ……! 先輩や後輩も混ざっていましたし、飛び降り案件です……っ!」


 うんうん、挨拶は――え?


「俺、なんか間違ってたのか?」


 挨拶すれば友達だって、なんか教育テレビで見た気がするんだけど……。


 そもそも友達ってどうすれば、友達なんだ?


 真堂は二人を見た。

 それから三人は打ち合わせもなく、俺へ評価を下した。


「ほぼ」

「全て?」

「残念です……っ」


 あ、なるほど。

 このチームワークが友達ってことなのか……?


「が、がんばるよ」


 妹よ。

 朝飯のときに宣言した、友達100人記念パーティーはまだまだ先みたいだ。

【ひとこと】

頑張ることにより、一層、孤独になる人っていますよね。

私です。

私です!


【おしらせ】

評価、ご協力ありがとうございます!

『550人』もの方にご協力いただいております。

まだまだ募集中ですので、お時間がありましたら、

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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃ面白いw 礼ちゃんの照れたとこ可愛い [一言] いつもなら鈍感系主人公の作品を読んでると時々思うように進んでくれなくて腹立ってくるけど、この作品はそれがなくて良い。人物の掛け合…
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