表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/50

05-09:演目の名は誘拐

これまでの話:ザール氏の娘を誘拐しようと、農耕地まで誘導することに成功したボンクラたち。スムーズに確保するために奮闘する。

 ボンクラは木陰で弁当を食べてるターゲットの二人を見ながらタイミングを計る。

 まずは自分からだ。

 草影から、ターゲットの正面へと飛び出す。

 

「ああああ、まさかこんなところにモンスターが現れるなんてぇ」


 膝をつき、草影に潜む何かに怯えるように逃げようとする。しかし恐怖で足は動かない……というフリだ。

 ちらりとターゲットを見る。驚いているのか少し身を引いている。

 草影から、がさりと音がしてクマの恰好をしたアンドレが飛び出す。

 

「おで、アンドレーーー!」

「あーれー。お助けーーー」


 襲い掛かってくるアンドレから逃げるように、身体を引きずる。

 そしてここで、アーマードサブが助けに来る。

 ……

 来ないじゃないか!?

 アーマードサブが隠れている草影を見ると、何やら屈んでいる。

 深呼吸をして、手のひらに人の字を書いて飲み込む、その後もソワソワとして落ち着きがない。

 

「緊張してるんじゃねー!」


 手元にあった握りこぶし程の石をアーマードサブにぶつけた。

 石はガンと音を立て、兜に当たる。

 ようやく、自分の出番であることに気付いたアーマードサブはガシャンガシャンと音を立てて、歩み寄ってくる。

 

「この、モンスターめ、この聖騎士が、成敗を、してくれりゅ、くれる」


 ガチガチじゃねえか。

 そういや、サブって歓迎会の挨拶でも緊張してたな。

 

「ああ、騎士様お助け下さい」


 アーマードサブの首元にすがる。

 これで良い感じのヒロインになっているはずだ。

 サブと仮面越しに目が合う。緊張しているサブをリラックスさせようとウィンクをしてみた。

 

「ヴォェッ!」


 アーマードサブの仮面から吐しゃ物があふれ出る。

 

「うわああああ、きたねえ!」

「あ、兄貴……近距離はまじでキツイっす」

「何がキツイだ。ヒロインにゲロ浴びせる騎士が何処にいるって言うんだよ!」

「騎士でもヒロインは選びたいっす。可愛い女の子がいいっす」

「十分可愛いだろうが。あ?ひょっとしてショートカットの方が好みだった?」

「そんな次元じゃないっすよ。あ、また出そう、うっ……」


 騎士様の背中をクマのモンスターがさする。

 ふとターゲットを見ると、何が楽しいのかケタケタと笑っていた。

 

「何笑ってやがる、ガキどもが。アタシがクマに襲われてるのがそんなに楽しいか」

「ガキだろうと、聖騎士様を笑いものにするたあ、怪我じゃ済まないぜ」

「おで、アンドレ」


 ターゲットに詰め寄る。

 少年がディアンを庇うように前に出る。


「ガキが色気づきやがってこんなとこで弁当なんてしてんじゃ、ぐはあっ!」


 ボンクラは突然現れたカシラに蹴りを顔面に食らう。

 

「何だてめえは!」

「お前だな。喜劇を見せて油断させる新手の盗賊というのは。私が成敗してやるよ」


 のりのりじゃないかカシラ。

 

「正義の味方気どりか、気に食わねえ。かかれ野郎ども」


 号令と共に、アーマードサブがカシラに飛び掛かる。

 カシラはアーマードサブの鎧の上から後ろ回し蹴りを打ち込む。

 吹っ飛ぶアーマードサブをアンドレが受け止める。

 

「ごるあああ!」

 

 掛け声と共に殴りかかったボンクラの手がいなされる、襟元を掴まれ、十分に遠心力をつけてアンドレに投げつけられた。

 三人がまとめて地面に倒れると、上から足で踏みつけて動きを止める。

 

「そこの子供達、こいつらを縛るのを手伝ってくれないか」


 そう言ってカシラは縄を取り出す。

 ターゲットの二人は躊躇していたが、ディアンが「分かったわ」と進み出て縄を受け取る。

 男の子の方も、しぶしぶといった感じでそれを手伝う。

 

「そうだ、二人で縄を持って……」


 カシラはそう言うと、くるくるっと二人が持っている縄で二人を縛りあげた。

 唖然とする子供達。

 どうやら上手くいったようだ。

 

「え、何どういう事!?」

「最初から僕たちを捕まえる為のお芝居だったみたい」


 戸惑うディアンと、少し落ち着いてる少年。

 

「お嬢ちゃん、ザール氏の娘だろ悪いが少しの間人質になってもらうよ。そっちのアンタ名前は?」

「ホイルです」


 カシラに対しても、睨みつけるでもなく。冷静に答えるホイル少年。


「ホイル少しの間アンタにも付き合ってもらう。まあザール氏がすんなり渡すもん渡してくれれば無事帰すさね」

 

 どうやら二人共抵抗する気は無いようだ。

 なんともあっけなく拘束する事が出来た。

 

「カシラ、小芝居する必要あったんですか」


 サブが不満げに言うも、カシラに睨みつけられると「何でもないっす」とすぐに大人しくなった。


「さて、じゃあザール氏に話を通さないとな。今日は織物の店か、道具屋か倉庫に居るはずだ」

「時間あるなら、俺も腹減ったし食べ物買って来ようかな」


 ボンクラは身体ばかり動かしたからお腹が空いていた。

 

「何言ってんだい。モヒカン、アンタが行くんだよ」


 カシラは呆れた様にボンクラを見て言った。

 


 ◇◆◇◆◇

 

 ザール氏は織物屋の前で、店主と何か話している。

 ボンクラは少し離れた曲がり角から、その様子を伺っていた。

 貴様の娘を預かっている。ふふふふ。などと人目に着く場所で通告するわけにはいかない。

 ザール氏を見張っているとその内店主との会話を切り上げて、裏路地に入って行く。

 そのまま倉庫と思われる場所に入って行くザール氏。

 これはチャンス。

 ボンクラはザール氏に続いて倉庫に入る。驚いて振り返るザール氏に出来るだけ女性に近づけた声で話しかける。

 

「ウフフフ。こんにちはザールさん」

「おぬし何者じゃ」

 

 距離をとるザール氏。

 何者と言われて素直に名乗るわけにはいかない。

 

「さあ、何者でしょうね。それよりこのバスケットに見覚えが無いかしら」


 持っていたバスケットを目の前にかざす。

 これはザール氏の娘ディアンが持っていたものだ。


「あの子に何かしたのか」


 さすがに察しが良い。

 

「何もしていないわ。今のところね。ちょっとある物を渡して欲しくてね。数日前にある商人から買ったヴァルヴェール家の武芸書があるでしょ。あれを渡してほしいのよ」


 ヴァルヴェール家の武芸書。それがカシラから教えてもらったお宝だ。

 

「あんな物の為に誘拐をしたのか!?大して価値があるとは思えんが……」

「さあね。私もつかいっぱしりなのよ。どうするの武芸書を渡すの?それとも娘を諦める?」

「比べるまでも無い。しかし武芸書は今手元に無い」


 無い!?


「どういう事?」少し声が大きくなる。「あなたが買ったって事は調べがついてるのよ」

「ある国にああいった本を集めている知り合いがいてな。今朝、輸送したところだ。今頃本を乗せた馬車は街道を港街に向かっているだろう」


 しまった。今から取りに行けば間に合うか。

 その時、気配を感じ、倉庫の戸を開けて外を確認する。そこには中年の男性と青年が立っていた。

 話を聞かれた!?

 

「あなた達、話を聞いたみたいね」


 神妙な面持ちの二人。

 裏通りに他に人影はない。「中に入って」と二人を倉庫の中に促す。

 

「ゲーンズとバトーニ。ウチで雇っている商人だ」

「申し訳ありません旦那様。商品の在庫を確認に来たのですが……」


 ザール氏が二人の身元を明かす。

 ゲーンズと呼ばれた中年の方の男性は申し訳なさそうに身を縮める。

 

「そう言えば。うちの娘と一緒に同い年の少年が居たと思うが」

「ああ、ホイルってのが居たわよ。お嬢さんと同じように私の仲間が見張ってるわ。もちろん今のところは無事」


 再度『今のところ』を強調して言う。

 

「そうか。ゲーンズ申し訳ない。ホイルを巻き込んでしまったようだ」

「いいえ旦那様。ホイルが一緒ならお嬢様も心強いと思います」


 なるほど。どうやらホイルはこのゲーンズという男性の息子の様だ。青年の方、バトーニも恐らくゲーンズの息子だろう。顔がどことなく似ている。しかしこれは都合のいい事態だ。

 

「で、どうしますか。武芸書が無ければお嬢さんをお返しする事はできませんが。もちろんホイル少年も」


 ゲーンズとバトーニの表情は緊張しているようにも見えるが、あまりにも変化が無い。どうした。息子が心配ではないのか。

 

「バトーニさんといいましたね。あなた馬を走らせて、武芸書を取りに行ってもらえますか?ザールさんとゲーンズさんは私と一緒に来ていただきます」


 ゲーンズはバトーニに目をやる。

 

「バトーニ頼めるか」


 ザール氏も促す。


「分かりました。私がとってきます。馬車用の馬を一頭お借りしてもよろしいですか」

「構わん」

「では武芸書を手に入れたら、農耕地の木が一本立っている丘まで来てください。分かっていると思いますが。誰かにこの事を話せばホイル君の無事は保証できませんよ」

 

 自分で言うのもなんだが、完ぺきな悪者っぷりである。

 バトーニはボンクラを睨みつけると、ザール氏に軽く頭を下げ倉庫を飛び出した。


「では私達は先にお嬢さんの待っている場所まで行きましょうか」


 倉庫を出るときザール氏はドアに『閉店』と書かれた札を掛けた。

 

「誰もいないときに掛けるきまりでな。さあディアンのところに案内してくれ」


 ボンクラはザール氏とゲーンズを連れて農耕地へと向かった。

 

これからの話:ザール氏と交渉をするも、本は手元に無かった。のんびりと朗報を待つボンクラ達に危機が迫る。はたして本は手に入るのか。

次回「はやくいかないと」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ