05-05:霧去りぬ
これまでの話:ボンクラはサブからカシラが盗賊団に入った時の話を聞く。過去仕事中に謎の死神風モンスターに襲われたサブ達。そこにカシラが現れた。
死神は突如あらわれたカシラを意識しているように見えた。
鎌をカシラの方に向け、振った。
カシラと鎌の間には距離がある。しかしカシラは何かを避けるように馬から跳んだ。
同時に、カシラはナイフを何本か投げる。
死神はそれを避けようともせず、身体に受ける。
「闘気を飛ばすタイプのモンスターなんて初めて見たわ」
カシラは感嘆し、両手にナイフを構える。
その肩には斬られたような傷があった。
「一、天命を、借りて偽る美醜を慰めよ」
死神は鎌をカシラに向ける。
その瞬間、カシラは死神との距離を詰めるように駆ける。
死神は鎌を振る。
カシラはそれを身を屈めて避ける。後ろ髪が数本はらりと落ちた。
身を低くしたまま、死神の懐に入るカシラ。
死神の腹部にナイフを突き立てようとする。しかしそれは死神の左手に阻まれる。
手のひらに根元まで刺さったナイフ。カシラは力を入れるが引き抜くことが出来ない。
「二、暗転の時は来たれども、楽園を嘆き唄うべし」
死神の鎌がカシラの首を狙う。
転がるように後退してこれを躱すカシラ。しかし耳から頬に掛けてざっくりと切れている。
「ちょっとあなた、コイツ強いじゃない。ただのアンデット系モンスターかと思ったのに」
「え、そんな事言われても知らないっすよ」
カシラは理不尽な非難と共にシュナイダーを睨む。
「まあいいわ。ちょっと本気出すから」
そう言うと、カシラはナイフを収め、背を正し、手を合わせる。
精霊にでも祈ってるのかとシュナイダーは思った。
カシラは大きく息を吸い、長く息を吐く。
気のせいかカシラの合わせた手に白いモヤが見える。
次第にハッキリと見えるようになった。間違いなく手から湯気が立ち昇っている。
「一、計らうは骨の身達、歌も無く騒ぐ鳥よ」
死神がカシラに鎌を向ける。
カシラは駆け寄り距離を詰める。
死神の鎌が動く。見えない刃がカシラを襲う。
カシラはそれを手で弾くも、衝撃が身体をよろめかせる。
「こなクソォ!」
体制を崩しながらも、回し蹴りを繰り出す。
死神はそれを足首を掴んで受け止める。
「二、静寂は罪か、羸弱は醜悪の世か」
死神の鎌がカシラの首にかかる。やられたとシュナイダーは思った。
その時、死神の腕に手斧が突き刺さる。
シュナイダーは手斧が飛んできた方向に振り向いた。
アンドレが居た。
「やれーーー!」
アンドレが咆哮する。
カシラは身体ひねり、その勢いで足を解き放つ。
タンっと地に足つけ。拳を引き、放つ。
「ハーーーッ!!」
カシラの拳が死神の腹部を吹き飛ばした。
直ぐに距離をとり、構えるカシラ。
死神の腹には穴が開き、向うの景色が見える。
「うひょー、やるじゃねえか」
シュナイダーが歓喜の声を上げる。
「まるでアイツを倒したかのように喜ぶじゃない」
カシラは構えを解かない。
「いや、さすがに死んでるだろ」
腹に大穴空いたんだ、さすがに死んでるだろうとシュナイダーは死神をみる。
死神は立ち尽くしていた。
「ほうら、もう死んでる」
シュナイダーがそう言った時、辺りに漂う霧が吸い込まれるように腹部に吹き込む。
辺りに霧が無くなる頃、死神の腹は埋まっていた。
「ほうら、まだ死んでない」
余裕ぶった言葉と裏腹に、カシラの表情は強張っていた。
「なんだよ、どうやったら倒せるんだよ」
嘆いても始まらない。
こうなったらどうにかして逃げないと。
「逃げようと思ってるだろ?逃げれるかなぁ」
カシラがシュナイダーの考えを読む。
くそ、逃げれないか。後方で控えている仲間全員でかかれば何とかなるか。
なるわけないよなー。
シュナイダーが葛藤をしていると、死神が動いた。
ゆっくりと後ろを向く。死神の周囲のみ霧が立ち込める。
「惨、蝕む慚愧よ、吾子は何処へ」
霧が消えると死神の姿は無かった。
近くに居るのではないかと、シュナイダーはきょろきょろと周囲を確認する。
「どうやら助かったようね」
ようやく力を抜いて構えを解くカシラ。
それを見てようやくシュナイダーは緊張を解いた。
「あー、助かった」
「おい、そこのサブ。覚えてるだろうな約束」
「オレっすか」
シュナイダーは自身を指さす。
「そうだよサブ。お前だ。今日から私がお前たちの頭領だ。お前達の命は私が預かった。手足の如く働いてもらうからな。あとそっちのでかいの、さっきは援護ありがとう。お前は今日からアンドレだ」
「俺、アンドレ」
全く大した女だ、これだけ強ければ仲間達も異論は無いだろう。
「分かりましたよカシラ。頂いた命だ好きに使ってください」
「よし、じゃあまず盗賊らしく、お前らその七三頭をモヒカンにしようか」
そう言ってカシラはハサミを取り出し――。
「ちょっと待ったーーーーー!!!!」
ボンクラが回想を中断した。
「何、お前ら全員七三だったの?盗賊なのに?今までずっとモヒカン頭のイメージで聞いてたわ」
「まあ、当時は七三がおしゃれだと思ってたんですよ。あ、もちろん今はモヒカンこそ至高っすよ」
至高っすよじゃねえよ。
「以上で大体カシラとの出会い編はおしまいです。この後、激烈血闘編もあるんすが聞きますか?」
「いや、もうお腹いっぱいです」
結局。カシラが盗賊以前に何をしていたのかは、分からなかったか。
冒険者以前にどこかで会ってるのだろうか。
なんでモヒカンにしたのだろうか。
アンドレは何で自己紹介しかしないのだろうか。
分からないことだらけだ。
ボンクラが頭を悩ませていると、アジトのドアが開いた。
「お前ら呑んでるか」
カシラが入って来る。
「カシラお帰りなさい」
「湯浴みにしますか、メシにしますか」
「それとも、ア・タ・シ」
「なんだてめー!殺されてえのか。カシラの相手するなら俺だ」
「何言ってんだこのブタヤローが!」
盗賊達が沸き立つ。
慕われているのは確かなようだ。
「まずは仕事の話だ。次の標的が決まった」
カシラは部屋の中央へと歩いて来る。
「いいっすね。次はどこの商人襲うんすか」
カシラは室内の盗賊達を見渡し、ニヤリと笑う。
「次の標的は豪商のザールだ」
これからの話:次の標的は豪商ザール。街道でザールの馬車を襲う盗賊団、ボンクラはまた意外な人物に会う。
次回「職人による、ひと揉み」
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この作品ではコメディ調の書き方を特に勉強したいと思っています。どういった所が笑えたか、逆に何処がつまらないと感じたか書いていただければ助かります。それらの感想は今後の創作に役立てたいと思っています。よろしくお願いします。




