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02-02:なんとも不思議な木ですから

 扉が開いて研究室に入る。天井につるしてある水晶から黒い光が部屋全体に行き届いている。

 いくつもの長机が並び、その上には鉢植えがまたいくつも置かれている。

 鉢植えの木は似たような形をしているが、色に関しては微妙に異なり黒いもの、灰色のものなどがあった。

 ヘルメイジは部屋全体を見渡した。


「とりあえず枯れている木はなさそうですね、細かく見ていきましょうか。瘴気の光を前回から薄くしてますからね、何か変化が起きてるかもしれません」

「ワタクシ奥から確認しますゲコ」

「では私は手前から見ていきましょうか」


 それぞれ、奥と手前で鉢植えの木を一つ一つ見て歩く。

 ヘルメイジが3列目の確認に入ったあたりで、レッドフロッグが声を上げた。


「ヘルメイジ様、大変です来てください」

「どうしたのですか」とレッドフロッグに駆け寄る。


 これを見て下さいと指さされた植木は、他と違い幹も枝も葉も真っ白で、その枝に黒い実を一つ実らせていた。


「実ってる」


 ヘルメイジのつぶやきにレッドフロッグもうなづいた。

 そっと黒い実を摘まんで、もぎ取る。途端に木は崩れ落ちてしまった。

 黒々とした実をじっと見つめる。


「他の植木も確認しましょう」

「分かりましたゲコ」


 全部確認すると、もう一つ黒い実を収穫することができた。


「二つも収穫できるとは。やはり瘴気の光を調整した事が良い結果になったみたいですね」

「良かったゲコ、ヘルメイジ様が赴任されてからずっと頑張ってきた努力が報われたゲコ」


 レッドフロッグはローブの袖で目頭を押さえる。


「長かったですね」


 この塔に赴任してきてからこの瘴気の実の開発に多くの時間を割いてきた。

 特に赴任してきた当初は、嫌われているという不安から、研究の成果を焦って研究室にこもる事が多かった。

 研究が進めば、遠巻きに見ているモンスターとも会話するきっかけが出来るのでは無いかと思っていた為だ。


「今だから言いますゲコが、ここに来たばかりのヘルメイジ様は研究室にこもってばかりで、皆心配して会議をしていたほどですゲコ」

「そうなんですか」


 自分が周りに不信感を持っていた頃、周りは自分の事を心配していたのだ。

 驚いた。そう言われてみれば、最初はろくに会議もせず塔内のモンスターと交流を持つ努力をしていなかった。

 そんな中で、塔内でも古参のレッドフロッグと言葉を交わすようになり、挨拶程度の関係だった他のモンスター達とも距離を縮める事が出来た。いや距離があるという思い込みを捨てることができた。

 そしてレッドフロッグや他のモンスターに研究の説明を行い、手伝ってもらうようになってから、研究の進捗を劇的な速度で進むことになる。

 当然のことである。やはりそう思うと自分で勝手に想像していた疎外感から周りが見えなくなっていたのだろう。 


「この実が想定通りの効果を発揮するかは別問題ですね、テストを行う必要があります」

「そうですねゲコ、慎重にテストしましょうゲコ、取り合えず収穫した実は保存箱に入れておくゲコ」


 そう言うと空の鉢植えや、スコップ、肥料などを置いている棚から、白い箱を持ってくる。

 その箱に2つの実を入れ蓋をすると、箱に黒い魔法陣が浮かび上がる。


「実用性が確認できれば、瘴気の外でも強いモンスターが能力を発揮できるようになります。そうなれば現状のジレンマを解消できます」

「実験の手順をもう一度確認しておいてください、明日から開始します」

「他の研究員にも伝えておきますゲコ」


 そう言いながら、レッドフロッグは保存箱を棚に戻した。


「それではアリゲータソルジャー達の様子でも観に行きますかね」


 扉から出て行く時、棚の方に目をやる。長年の研究に対する成果に喜びを感じながら研究室を後にした。


 ヘルメイジ達が出て行ったあと、少し時間を置いて、研究室の扉がゆっくりと開いた。

 そこから黒く大きな影が入って来る。研究室を見渡し、棚に近づくと魔法陣の浮かび上がった白い箱を手に取る。そして箱を開け、その中の黒い実を一つ取り出しにやりと笑った。


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