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01-09:ああ、元勇者よ

これまでの話:アリエルは瘴気の実を食べパワーアップしたキャッスルベアに攻撃され重傷を負った。ボンクラはアリエルを助ける為キャッスルベアに挑む。

 歩いてくるボンクラに気付くキャッスルベア。

 ボンクラはさらに近づく。

 そこはボンクラの剣が届き、キャッスルベアの爪が届く距離。

 キャッスルベアがニタりと笑った。

 その直後、黒い腕がボンクラの頭上に振り下ろされた。ズンと響く音と共に地面が陥没する。

 自分の手の横に立つボンクラを見て、いっそう嬉しそうに口角をあげるキャッスルベア。

 ボンクラは戦闘に余裕を感じていた。

 相手の動きがよく見えて、身体が軽い。

 地面に刺さったキャッスルベアの太い腕を駆け上がり、頭部めがけて魔法を唱える。


圧風(プレッシャー)

 

 発生した風を手で遮るキャッスルベア。

 その腕を渾身の力で切り付けた。ざっくりと割れた傷から瘴気が吹き出す。十分な手ごたえを感じた。しかしキャッスルベアは切られた方の腕で払いのけてきた。地面にたたきつけられ、転がる。背中を打ったのか肺の空気が口から噴き出した。

 痛みにかまっていられない、急いで立ち上がる。


 キャッスルベアは腕の傷を確認すると、ぐっと力を込める。一瞬腕は膨れ上がり瘴気の噴出がピタリと止む。そして右腕を大きく振りかぶって襲い掛かってきた。

 左右から地面をえぐるほどの連打が撃ち込まれてきた。

 下がりながらもその爪を避ける。

 ギリギリでかわす。いやギリギリでかわすしかないのだ、余計な動き一つすれば、連打の速度につかまってしまう。

 連打がとまりキャッスルベアは大きく息をつく、こちらも息が切れ切れだ。


「遅い攻撃だな、魔王城でヌイグルミみたいに大人しくしてたほうがいいんじゃないか」


 大げさに身振り手振りをつけて挑発するボンクラ。

 大きくフーと鼻息が吹くキャッスルベア。怒ってるようだ。

 振りかぶった腕から延びる爪が迫る、それを前に踏み出し懐に入るようにかわす。もう一方の手が掴もうと伸びてきた。

 避けきれず、ボンクラはキャッスルベアに身体を握られる。


「捕まえた」


 キャッスルベアは目を細めると、ボンクラを顔の前まで持ち上げた。


「跡形もなく吹き飛ばしてやるよ」


 そういうと、大きく息を吸い込む。両肩のコブがオレンジ色に輝きだす。

 閃光攻撃が来る。詠唱を終えた魔法を発現させる。


潤滑水(ローション)


 自身の身体にむけて魔法を発動させ、滑る液を身にまとう。そのまま身体を引き抜くように手から逃れ、その上に立つ。

 もう一方の手が捕まえようと伸びてくる。それを跳んでかわす。


「宙ではよけきれんぞ」


 キャッスルベアの口内が輝きだす。


圧風(プレッシャー)


 左手をキャッスルベアの頭部に向けて突き出した。

 さき程防いで手傷を追った為、今度はただの突風を防ごうとしないキャッスルベア。

 しかし今度のはただの突風ではない。左手には先ほど地面に転がされた時に握っておいた砂があったのだ。


 強い風と共に吹き付けた砂が、キャッスルベアの目をつぶした。

 うめき声をあげるもキャッスルベアは閃光を吐いてきた。

 キャッスルベアは最後に見たボンクラの姿目掛けて閃光を吐き出す。

 しかしボンクラは手から未だ出る突風の向きを下に向け、空中で落下をコントロールし閃光を回避する。

 そのままキャッスルベアの頭部に向けて落下した。

 つぶれた目で、誰もいない空に向かって閃光を吐き続けるキャッスルベアの口を上から剣で刺し貫いた。

 さらに落下しながら、「ザコは口を閉じてな!」そう言ってキャッスルベアの下あごを蹴り上げる。

 強制的に閉ざされた口の中で行き場をなくした閃光のエネルギーは、キャッスルベアの頭部の穴という穴からもれ、頭部は爆発した。

 ボンクラは地面に落下し、急いで距離をとった。

 爆風が収まった後には、頭部のほとんどが骨と化したキャッスルベアが立っていた。


「倒したか」


 つぶやくボンクラ。

 しかし、骨となった頭部の眼底が赤く光る。

 口をわずかに開くと、煙をぼわっと吐き出す。煙は骨のあらゆる穴から立ち昇った。


「う…さすがに死ぬかと思ったぞ」


 キャッスルベアは酒焼けしたような、かすれた声で呻くようにしゃべった。

 いやいや、そこは死んどけよ。

 あの黒い果実の効果なんだろうが、何すりゃ死ぬんだこの化物は。

 爆発で地面に落ちた黒焦げの剣を拾い、構える。

 一歩、二歩踏み出すキャッスルベア。しかしそこで動きを止める。

 どうしたんだ。

 ごぼっと音をさせると、地面に向けて、黒い泥のようなものを吐き出し始めた。

 口を開けてはいるが、頭部の穴すべてから、泥があふれ出ている。


「おいおいおい吐きすぎだろ、実は二日酔いだったのか」


 などと言ってみるが答えなど返って来るはずもなく、キャッスルベアは泥を吐き続ける。

 泥を吐く量に比例して、その身体はしぼんでいった。吐き出された泥は地面を広がっていく。

 ボンクラ流れてくる泥を避けるために下がる。

 ついには地面に膝をつき泥を吐ききるキャッスルベア。

 あの禍々しい実が身体に適応しなかったのかと推測した。

 まだ息はあるようだが、その姿は枯れた老木のように弱々しかった。

 止めを刺そうと近づく。いや近づけない。

 ぜぇぜぇと肩を上限させるキャッスルベアの後ろに、そのモンスターは浮いていた。

 手には髑髏で装飾された杖をもち、全身を覆う黒い貫頭衣の黒いフートからは骸骨をごちゃごちゃに混ぜたような仮面を覗かせていた。

 見覚えがある、というか忘れるわけがない。


 「屍王ヘルメイジ」


 ボンクラは自身の鼓動が大きく高鳴るのを感じた。

これからの話:突如現れた屍王ヘルメイジ。どうなるボンクラ、アリエルは助かるのか。

次回第1話最終エピソード「私の名は」

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