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ある大征帝の伝記  作者: ウザン工廠
血塗られた東方親征
4/9

ポルスィケ=クシェスツォ侵攻

「偉大なる太始帝(天津帝)が帝国東方の民を夷狄より護らんと、我等が東方鎮定軍を建立なさってより百余年。我々は太始帝の御遺志に従い、民の安寧と繁栄を願い、御国の盾となり、刀となり、ただ御国の御為に戦うて来た。そして此度も、忠誠を尽くし、武勇を振るい、そして貴様の妻子を護り、御国の繁栄が為戦え」

(黒乃木義楨の訓示)

憲久支隊が進軍を始めたのは、御親征軍先鋒(東方鎮定軍)第一軍の越境開始と同刻のことであった。

隊を率いる征鷹宮憲久せいようのみやのりひさ少佐は、幼名を一之丞と言い、第三軍(淡洲軍)司令長官である征鷹宮実久せいようのみやさねひさの長男である。十四の元服と同時に、白樺内乱にて初陣を飾り、以降着実に武功を重ね、齢二十にして一個支隊を率いるほどになっていた。

大鷹帝国陸軍の「支隊」という部隊は、多くの場合、司令部直属の遊撃部隊として扱われる。支隊というものは、様々な兵科の混成部隊であり、汎用性はかなり高い。平時司令部に随伴し、有事に際して必要に応じた部隊に配属される。憲久支隊は、先鋒第一軍(魯州軍)に配属されていた。




約六万の兵から成る第一軍にまず課された任務は、国境線から紗環川(しゃわがわ)(ポルスィケ名・ウォースォ川)付近までの敵※警備戦力の駆逐であった。

東方鎮定軍は、兵站輸送の面から、中央軍の到着までに主要街道を確保する必要があった。その障害となる敵警備戦力を駆逐し、紗環川を防衛する敵第19守備隊及びその増援と川を挟んで、もしくはその手前の平野部にて会戦を仕掛け、それを撃滅する、というのがその第一戦略目標であった。

しかし、何故敵警備戦力の駆逐にこだわるのか。

その理由はポルスィケ=クシェスツォ軍警備戦力の主力をなす騎兵にあった。

ポルスィケ=クシェスツォ連合王国が位置するエウロパ平原は、古くから北方騎馬民族の攻撃を度々受ける地域であった。そのため、非騎馬民族国家としては早くから騎兵の打撃力・機動力に着目し、その重要性を理解していた。

中央大陸を再統一した初代皇帝・太始帝が、帝紀四一七年から帝紀四一九年にかけて行なった、第一次東方遠征の詳細を記した文章に、ポルスィケ人騎馬傭兵の勇敢さ、精強さが記されている。

元が騎馬民族であったため、古来より騎兵を主力としてきた大鷹帝国軍からしても、彼らは侮り難い存在であったことがわかる。

銃歩兵が主力となった今でも、彼らの勇猛さは変わらず、むしろ敵の集中砲火ものかわと敵陣に突撃し、敵に甚大な被害をもたらすのだという。

もし、そのような恐ろしい連中に集結されると、大鷹帝国陸軍随一の猛将と謳われる黒乃木義楨(くろのきよしもと)大将率いる第一軍とて、ただでは済まない。

黒乃木大将は、これらの敵戦力を会戦予定地に近づけぬように、隷下の第三三四独立特別大隊(高部支隊)、第八師団第三騎兵旅団、そして第六〇一独立特別大隊(憲久支隊)に、敵警備戦力の捜索、撃退もしくは足止めを命じた。


そして命を受けた彼らは、会戦予定地まであと五日の距離のところで第一軍と別行動に移った。

帝紀六〇一年一〇月二二日、風が少し冷たくなり始めた頃のことであった。


続く……

※の解説


※ポルスィケ=クシェスツォ連合王国は、四方を他国に囲まれているため、警備戦力を他国との国境線付近に多数配置していた。



ポルスィケ=クシェスツォ連合王国の国名のモデルは、お気付きの方はお気付きでしょう。ポーランド=リトアニア共和国です。

Polskieをパッと見で「ポルシケ」と読めてしまい、Księstwo を「クシエスツオ」と読めてしまい、ちょっとらしくした結果、「ポルスィケ=クシェスツォ」となったワケです。

なんだ、適当か


さてさて皆様、まだまだ始まったばっかりでございます。

どうか永らく、お付き合い願います

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