少年は天下を見つめた
素人文才無しに出来る、限界に、ゆっくりと挑戦しよう
淡洲鎮台府の直轄港にて、大鷹帝国陸軍東方鎮定軍淡洲軍司令官・征鷹宮実久大将が息子、征鷹宮一之丞は、幼く小さな眼を見開いて、水平線の向こうを眺めていた。そして、乳母子である勝三四郎徳助を呼び寄せ、こう言った。
「僕は見てみたい。この蒼海の果て、東限の戦線の果て、この大宇の果て……。なぁ、三四郎よ。付き合え。この僕と共に、天下を平らげるんだ」
勝は思わず立ちすくんだ。あまりにもスケールの大き過ぎる話だからだ。が、同時に武者震いを覚えた。
「一之丞様、三四郎は、喜んでお供致しましょう。三四郎も、世の果てを見とうございます」
勝の返答を聞いた一之丞は満面の笑みを浮かべ、再び視線を水平線の向こうへやった。その眼は、確実に天下の全てを眺めていた。
『その眼はまるで、老師が読み聞かせる、古代の大英雄、須佐竜光を模した石像の眼のような、将来の大人物を思わせる眼だった』
(勝兵部大元帥徳巌、後に述懐す)
これは、やがて〈大征帝〉と呼ばれることとなる、大鷹帝国第五代皇帝・憲明帝という帝国史に永久不変に残る大英雄と、彼を支えた数多の英雄達の物語である。
架空世界での戦記ものは良い。
好き勝手できるから。
ではでは皆様、末長く、お付き合い下さいませ。