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和気藹々

だが、僕がドキドキしたのはこの時だけではなかった。






「怜人。ご飯食べようよ。」




「!」




松利晴大が積極的に話しかけてくるのだ。


昼時、違うグループと会話をしていた僕たちのもとに空気も読まずにやって来た。





「え…なに?」




「怜人だって…。」




友達が思わず笑う。


それに更に憤りを感じる。






「矢津。ソイツと食えよ。俺らはこっちで食うから。」




「ちょっと!嘘だろ!」




僕が後ろを向いてる隙に、全く席から近くもない彼が、わざわざ自分の椅子を小脇に抱えてやって来た。





クラスからの視線も刺さる様に感じる。




このハブられ王がこんなに積極的に動いてるのは見たことがない上、スクールカーストの微妙な位置にいる僕が何となく面白いとか思っているに違いない。


机の前に椅子を持ってくると、彼は自分の弁当箱を僕の机の上に置いてニコニコと笑っている。



怒りも感じるが、若干の恐怖を感じる。




「いい加減にしてくれない?」




「…。」




彼のその目を見たくなくて、ふと教室の廊下の方を見た。






すると、その教室の窓から綱部がさり気なくこちらを覗いていた。


それに僕は怒りが沸騰し、いきなり立ち上がって廊下に向かった。






綱部はそれに気付くと、急いで逃げた。





「あいつか…。」




僕の筆跡で前の人間が僕だと思ってこんな事をしたのか?





「どうしたの?ご飯食べようよ。」


松利晴大は馴れ馴れしく話しかけてくる。

見たことないような笑顔で。


気持ち悪すぎ。


「!」



仕方なく、平和主義にのっとってその日はだまってこいつと弁当を食う羽目になった。




綱部が書いたシナリオなら殺してやりたい。




放課後



今日も部活はあった。




ノベル部活動中、僕はずっと綱部を睨んでいた。



綱部は僕と目が合わないように本を読むふりして顔を隠している。


やはり何かやましい事があるに違いない。




積木先輩がいる手前、リレー小説の事で事を大きくしたくない。





「…。」




隣の松利晴大は大人しく本を読んでいる。

そこにはいつもの暗くて、人と関わらない男がいる。



怖さを感じるくらいの昼間のしつこさを微塵も感じさせない。




もしかしたらこいつは僕たちの書いてるリレー小説の中身を先に見て、悪ふざけをしているだけなのかもしれない。


積木先輩のいる前では、何故だかこいつもあまりにもおとなしすぎる。





「次丸。お前、ちょっとポーズとってくんね。」




「は?」




桃津先輩が突如次丸先輩にお願いしていた。





「綱部君に頼めば?」




「子デブのモデルはいらねえ。お前みたいなシュッとした奴じゃないとイメージつかねえの。」




桃津はシャーペンを持ったまま顎で彼を遣う。




「頼むときはそれなりの姿勢を示せよ。」




「おねげえしやす!」




と、全力でふざけた桃津の歌舞伎のような顔に、次丸先輩が立ち上がる。


それでいいのか。と思わず言いそうになる。




「で?ポーズは?」




「モデルっぽいポーズしてくれ。」




「アバウトすぎるだろ。」




次丸先輩はその見かけと性格にも想像できないようなくらい、いろんなポーズをさせられている。


試行錯誤しながら桃津先輩とモデルポーズを探している姿に、今日一日でいろいろ溜まったもやもやが少しだけ晴れた。







「…。」




積木先輩も綱部もその姿に笑っている。


その綱部の姿にまたイライラしてくる。







「…。」




あのノートは今、誰が持っているのか。


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