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崩せない3すくみ


もっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴ってもっと殴って…


その言葉がノート1ページ分に埋め尽くされていた。



「なんだよこれ。」


殴り書きで、まるでストーカーの文のように書かれていた。



松利晴大。こいつしかいない。



僕は前の席にいる彼を見る。真新しいブレザーを着ている。

それ以外に変わった様子もない。

あんな大人しい奴がこんなこと書くのか。


こいつもやはり異常者だった。

思った以上に変態だ。



僕は早速頭の中で、どうにかこの話が丸く収める事を考えていた。


だが、よく考えなくてもこの3人は、それぞれ誰かを必要としているすくみができている事がわかる。



綱部は松利晴大が好きで、松利晴大は次丸先輩に殴られるのが好きで、次丸先輩は殴ることができればどちらでもいいのかもしれない。綱部はその殴られた松利晴大を見るのが好きで…



「ああもうわけわかんねえ!」



なんだか、その僕の余計な発想自体間違っているのかもしれない。奴らはこれで幸せなんじゃないか。




というかいいのかこのページ。

こんなのが許されるのか?全然小説として成り立ってすらいない。


積木先輩もどうかしてる。




「くそ。」



「矢津君。」


「!?」


机でノートを書いていたら、誰かが話しかけてきた。


慌ててノートを閉じると、あの地味委員長が話しかけてきた。


「松利君、何ともない?」


「え?ああ…。」


「良かった。これからも松利君のことよろしくね。」


「何で僕が。」


「友達じゃないの?」


「友達ではないと思うけど。」


「でも、救えるのはあなたしかいない。彼を救ってあげて。」


「僕がどうこう言うわけじゃない。」


「お願い。」


しつこい委員長の顔を始めて見上げる。

胸がでかい。


「…っ。」


そうじゃない。なに考えてるんだ。


「私も手伝うから。」


「手伝う?」


「松利君の体に痣が出来ないように彼を見守ってあげるの。いじめだったら可哀想だよ。」


「…。」


「よろしくね。」


彼女は行ってしまった。







「なんて書こうか。」


綱部は松利晴大と幸せになり、次丸先輩のいじめが無くなった。


それが今一番の幸せな終わり方なのか。

なんだか、あの3人に恨まれそうだ。


隣のおびただしい文字の羅列を見ると、僕のシャーペンを持つ手がなにも書けなくなる。



「っ…。」


どうしたらいいんだ。


全部リセットするか?

それとも無難に続けるか?


わからない。

正解ってなんだ。



とりあえず今日はなにも起きないはずなんだ。




「…。」


僕は勉強そっちのけで、自習時間に三階の例のトイレに引きこもっていた。


なんで勉強より頭を抱えなきゃいけないのか。不思議でたまらない。

今回のリレー小説も適当にやればいいと思っていたのに…。


「…。」



このすくみを崩すのは危険だと思う。


次丸先輩の暴走が僕に向くのは御免だ。それに、松利晴大の願望を途絶えさせてみろ。


きっと次のノートの一面には矢津怜人殺すになるだろう。



僕が意に反した内容を書いたら…

でも、ここで展開を変えないと事件に発展しそうだ。


「なにも、浮かばない。」



ガラッ



男子トイレのドアが開いた。



僕はまたうさぎ大好きな先輩だと思ってトイレのドアを開けたが、どうやら違う人物だった。


「…。」


そいつらの目がこっちを見る。

2人の不良がタバコを吸いに来たのか、まさに吸おうとしていたところだった。


素通りしてやり過ごそうとした時


「待てよ。」


校則ギリギリアウトに制服を着崩した不良1が僕の肩を掴んだ。


「お前もタバコか?それともいかがわしい事やってたのか?」


「黙っててやるからジャンプしてみろよ。」


不良2がタバコをふかしながらそう言った。


「なんだよこのノート。」


不良1が僕からそのノートを取り上げた。



「返せ!それは大事なものだ!」


「ん?積木速太?」


不良1は表紙裏の僕達ノベル部の名前欄を見て言った。



「積木速太って、確かよ…」


と、不良1が言い掛けたその時。



「なにしてんだお前ら。」



そこに遅れて桃津先輩が入って来た。


「こいつは俺の可愛い後輩だぞ。ノートを返せ。」


と、僕の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「お前が入ってるわけのわかんねえ部活の奴?」


「言わなくたってこんなもん返してやるよ。」


不良1は桃津先輩のおかげで中身を見ることもなく、僕にノートを返した。



ガチャ



桃津先輩は無言でトイレ外に僕を連れ出した。


「お前、それ見られてねえだろうな。」


「セーフでした。助かりました。」


「あまり持って歩くなよ。」


「すみません。桃津先輩、また昼どき遊びに行っていいですか?」


「俺のこと好きだなお前。」


と、ヘラヘラして笑う桃津先輩。


「もう小説の事考えたくないです。あの3人のことも。」


「俺に相談したところでいい案は出ないと思うけど?」


「いや、今は僕もうさぎを見て嫌なこと忘れます。」


「そうか。一緒にぴょんぴょんしようぜ!」


と、親指を立ててトイレの中に消えた。



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