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変態だらけ




僕はそのまま顔をあげ一年教室へと向かう。

だが、その途中見てはいけないものを見てしまった。




「え…。」



この裏の校舎から見える1年の廊下に、歩く綱部が見える。


だがその綱部の顔は遠くからでもわかる通り、顔に大きな痣が出来ていた。

まさか、次丸先輩に返り討ちにされたのか。



「怜人。」



「!!」



僕がその場に立ち尽くしていると、目の前の北と南校舎をつなぐ外の中央廊下に松利晴大が立っていた。



奴の顔も傷だらけだった。

だがいつもの死んだ魚のような顔では無く、どこかキラキラしているようにも見えた。




やつはゾンビみたいに上履きのままこちらにやって来た。



ガシッ



「い!?」


その伸ばした手で僕の両腕をがっちりつかんだ。


思わずビビッて声が出る。その痛々しい顔がニヤニヤしながら僕の顔を下から覗く。



ああ気持ち悪い。




「ありがとう怜人。僕は今最高に嬉しいよ。」


「離せよ!俺が次丸先輩のもとに一緒に行かなかった事への皮肉か?」



「いや、本当に。僕はこれで少しは蝶になれそうだって思えた。」



「どういう意味だよ。そのセリフもノートに書いてあったのか?」




「ううん。本心だよ。ありがとう。これからもよろしく。」



「…。」


傷だらけの顔はそう言って喜んでいた。



分からない。何がどういう事なんだ?




「怜人にはやっぱりそういう才能があるってわかってたよ。」



「才能?」



「人を巻き込んで開花させる才能。」



耳元に唇が当たるかってくらい、こそばゆい息を漏らしながらそう囁いてきた。




「誰が書いたんだよそんな事!」



「…。」



次の瞬間から、松利晴大の電源はOFFになった。

急に真顔になって僕から離れた。



「おい。」



呼びかけても、そのまま回れ右で先に教室に帰っていく。




「なんなんだよ全く。」


そんな才能あってもうれしくない。



チャイムが鳴る前に、僕は急いで教室に走った。





「矢津。」



「うわ!?」



今日の放課後も部活がなかった。

その回したノベル部部室のドアノブから手を放して振り返ったら、傷だらけの天パがいた。


「つ、綱部!」


「…。」


立ち尽くす綱部はホラー映画のクライマックスのお化けみたいだ。



「僕は関係ない。殴られると分かっていくわけないだろ…。」


綱部は無表情でまっすぐこちらに歩いてきた。


「俺さ、今日頑張ったんだぜ。松利晴大を庇って、守ってこの有様だけど。でも、次丸先輩に殴られて良かったと思ってる。」



「はあ?」




「なんか、すっごい恋人気分を味わえたんだよ!2人の恋に訪れる困難みたいなやつ?」



「そ、そうか。」



どいつもこいつも頭のねじが外れたこと言いやがって。




「別に来なかったのは怒ってないぜ。でも、やっぱり松利晴大は小説の内容が終わると話しかけても無視する。けど小説やってる今が一番楽しい。今日からあいつと俺はみっちゃんとはるはるって呼ぶようになったし。」



そうかそれは不愉快だ。


だが今日のシナリオは綱部っぽい。今日からあだ名で呼びあったって事は、己の好きなように書いたんだ。



「あの小説が無難に続けば、俺はずっと恋人がいるわけだし。また映画観に行けるし。くそ、小説の中では次丸先輩に勝ってたのにな。」



「早く帰りたいんだけど。」



「ごめん。じゃあな。」



「…。」



僕はふと、すれ違う際綱部がバックにつけているキーホルダーを見た。

変なアフロのキーホルダーだ。

松利晴大と同じの。



映画ってこいつ、休日前からノートを受け取って日と月の内容でも書いて来たのか?


綱部が来る前に朝一で松利晴大のバックに付いてたから、土日にやっぱりどっか行ってきたんだ。



読みたくない。そのページだけは。




つうか本当何言ってんだよ。

殴られて喜んでるドMに、ホモに危ない暴力男。

僕って、まだマシな人間だったんだな。




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