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バイセクシャル?

廊下で綱部がヘラヘラして友達と笑いあいながら通り過ぎていく。



それに目を奪われていたためか、奴の存在がすぐ真横に来ていることを感知できなかった。



「怜人。」


「!?」


いきなり肩を叩かれたわけでもないが、真横からした亡霊のような声に体が一瞬はねた。



「な、なんだよ。お前か。」


僕は冷静を取り繕うためにそう言ったのだが、お前かって、よく考えなくてもお前なのが問題なんだけどと心で呟いた。



松利晴大は僕を見下ろした。


「僕まだ全然満足できてないんだ。」


「蝶になんかなれないぞ。」


「なれるよ。僕も。君達も。」


「は?」


「なれるよ。じゃないと終わらない。」


「終わらないって?やっぱりお前積木先輩とグルだったのか?」


「こんなんじゃ全然ダメだ。もっともっともっと欲を出して。それを僕にぶつけてよ。」


「気持ち悪いぞお前。」


「君なら、もっと出来るよ。変態になろうよ。もっと自分をさらけ出して。完全変態に!」


ニタァと笑うこいつは、キモすぎて直視ができない。


これもまた誰かの書いた展開通りなのか?だとしたら僕に恨みでも持ったのか?


それともこいつ自身のパフォーマンスか?


そんな、薬物中毒みたいなヤバイ目で見てくるな。


キーンコーンカーンコーン…


チャイムが鳴り、周りがざわざわと慌てて戻り始めると、松利晴大は何事もなかったかのように直って席に戻っていった。



なんなんだ気持ち悪すぎる。







「なあ綱部。あいつになんか言われか?」


「松利晴大?何も言われてないけど。てか、どけろよそこ。」


休憩時、僕はうんこの為にわざわざ遠いトイレを選んだ綱部をストーカーして、外側から出し終えた奴が入った個室トイレに寄りかかった。


どうせ逃げると思ったし、好都合にも僕もあそこのトイレでたまにあの邪悪なリレー小説ノートを書くからだ。僕は先ほどの話を彼に伝えた。


「さっき変なこと言われた。もうさ、あいつが頭おかしいんだか、小説の話なんだかわかんなくなってきた。」


「松利晴大はなんて言ってたんだよ。」


「変態になろうって。」


「ぶっ。それ誰にも聞かれてないよな。」


「知らない。怖いから黙って聞くしかなかった。まだ松利晴大のこと好きなのかお前。バイなら女を好きになれよ。」



「俺8割方男が好きかも。女のパンチラとかにはおおっ!てなるけど。」


「8割はまずい。」


「AVもさぁ、身体つきがいいと女優より男優見ちゃうし。」


「けどあいつはやめたほうがよくないか。」


「でもさぁ、俺に好きって言ってくれたのあいつだけなんだよ。人生で初めて好きってさ。」


「けどなぁ、話の中であって、あいつが本当に本心で好きって言ってるかは謎だと思うけど。」


「お金もいらずそんな体験できるなら俺は満足だ。」


「なんだよ、そんな体験って…。」


「普通に恋人的な立ち位置。あ、あれだぞ、小説の中でどんなにあいつが言うこと聞くって言っても俺だってモラルは知ってる!…お前だって無料のレンタル彼女でも付き合って見たいだろ。一緒に買い物とかそんなんでいい。」


「…。」


悔しいが否定はできない。



「ありがとな。周りに言いふらさず聞いてくれて。あとそこどけてくんない?」


僕がそこを退けると、綱部はとっくに開けていた個室の扉を開いた。


「なあ綱部。これからどうする?」


「これから?」


「小説の話だ。」


「これ以上言わない。積木先輩への忠誠を破るみたいだから。」


「その忠誠に穴あいてるくらい話してるとは思うけどな。」


「お願いだ矢津。松利晴大を小説の中であまり傷つけないでくれ。」


「…。」


「俺は少なくとも自分と正直にあいつと恋したい。幸せにしたい。それをさ、芋虫が蝶になる話っぽくしないか?」


「…変態だ。」


「変態でいい。だからさ、あのまま成長物語にして終わろう。な?そんな話にしなくてもいいからあいつ傷つけたくないんだ。」


「忠誠を破ってるのは前じゃないか。」


「でも建前でいいそんなの。昨日だって殴られた跡があって、聞いてもなんも答えなかった。あいつは小説のこと以外には無反応だから。」


「そうだな。でも次丸先輩にも言ったらどう?」


「頼むよ矢津。」


「…。」


綱部は次丸先輩が苦手だ。

と言うのも、普段おちゃらけすぎてよく怒られているから、自分が勝手に次丸先輩に嫌われてると思い込んでる。


一緒に帰ってて彼からそんな悪口聞いたことないけど。


言わなくてもわかるだろう?

的な熱い目線で、僕に期待を送る綱部。




「ああ。約束する。」


とりあえず、そう言っては見たがそれよりも

僕は綱部の洗ってない手と握手してしまった事が大きく頭に残った。





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