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ファッキンカスタマー

 この日の駄々目は気前がよい。場の四人のぶんも、駄々目の奢りである。ごちそうさまです。

 駄々目が言うところの「おれの女」というのは、「店の女」のことである。女のもとへ通いつめていることは、事実であるが。自分の娘のような年の若い女との恋の駆け引きめいたものに、駄々目は一喜一憂しつづける。

「飲み放題だから、酒飲みにとってはキャバクラは安あがりなんだよ」

 居酒屋で二時間三時間飲み食いして約五千円、キャバクラ一時間水割り飲み放題四千円。どちらが安いのか小学生でもわかりそうなものだが、駄々目にはわからない。算数ができないから、仕事もできない。

 言語障害めいた天龍源一郎ばりのダミ声で、キャバ嬢を口説く。葱を背負った鴨。ドブ川の深淵に、金はいくらでも吸いこまれる。自分の金ではないにせよ、いたたまれない。

 私はキャバクラが嫌いなのだ。しゃべらないキャバ嬢とかいたら、気をつかって金はらっているこっちがしゃべらなければならない。あれほどばかばかしい時間もない。しかもなけなしの銭が消える。二次会はこれっきりにしようと思った。たのしくないものに金をはらってもらうのも、もうしわけないからだ。

 夢のような一時間がすぎ、黒服が来る。「延長なさいますか?」と。会計は一万六千円。駄々目のカード払い。「カードですと、一割増しとなります」とか、意味がわからない。10パーセントオンの料金を、駄々目が持つ。私は言った。「ごちそうさまです。いやあ、たのしかったです」と。


 月曜日。駄々目が来て、私に言う。


「土曜日の四千円、まだもらってなかった」




「え?」

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