孤独の海に沈んで。
一人、暗闇の中を進んでいると、より自分の声が聴こえてくる。
その声は、自分の意識するところとは、違う。
どこから発せられているのかが、定かでなく、また、それが本心なのかも分からない。
闇が、自分にそう思い込ませているだけなのかもしれない。
しかし、決して居心地の悪いものでない。
変に安堵感があり、本当はそう生きたいのかもしれないと、思えてくる。
群れていては、本当の自分に出会えない。
世間には、数多くの、無駄、雑音がはびこっていて、僕らの生活を邪魔してくる。
それら、一つ一つに丁寧に構っていては、自分の人生を生きる、時間が無くなってしまう。
では、どうしたらよいのか。それらから身を遠ざけ、自分の殻にこもるしかない。
自分の殻にこもり、誰の意見も聞かずに、誰の意志にも従わずに、生きればよいのか。
否、それでは身を滅ぼすことになる。ある程度の、外部からの情報、刺激は必要だ。
人類がこれまでに、毒に敢えて触れることで、細胞を進化させてきたように、外からのモノを肌に触れておくことは、大切である。
ただ、それに流されてはいけない。
どんなに飲み込まれそうになろうとも、自分の中に一本の縄を用意し、必ず、もと来た道へ引き返す手段は用意しなければならない。
でなければ、自分が何者でもなくなり、自分自身を見失うこととなる。
自己を喪失することほど、人生において深い悲しみはない。
誰のための人生であろうか。自分のための人生だ。
であれば、どんな手法を使おうとも、己だけは守りきらねばならない。




