灯りを探して
言われた通りに右奥の部屋に入ると、そこは物置だった。
広さは5帖くらいだろうか?
部屋にはダンボールからよくわからない看板のようなものまで、多種多様なものが投げ捨てられるように置いてある。あと大体ホコリをかぶっている。かなりの間放置されていたようだ。
電気がつかない以上、今のところ光源は小さな窓一つから差し込んでくる光のみだ。孝彦が先に入ってるだろうし、ホコリが少ないものを探せばきっとそれが灯りになると思うんだけど・・・・・。
「おっ、あったあった。懐中電灯だ。」
足元にあった小さめの箱を開けると、中には懐中電灯が10コほど入っていた。
ダンボールの側面には『緊急時用』と書かれている。なら遠慮なく借りさせてもらおう。
・・・しかし、試しにスイッチを入れてみるが何の反応もない。
「電池は・・・・・うん、入ってる。ただの電池切れか。じゃあ仕方ないな、別のを使おう・・・・・ってこれも使えないや。なら別の・・・・・うわ、液漏れしてる。どんだけ使ってなかったんだ・・・。」
どうやら、なんとか使えそうなのを探さなきゃいけないようだ。
そうして探し始めること10分。
「ば、ばかな・・・全部使えない、だと・・・・・・!?」
ダンボールに入っていた懐中電灯は全てどこか異常があり、使えるものは一つもなかった。
「緊急時用のくせに意味ないじゃないか・・・点検くらいしとけよ・・・・・。」
きっと誰も来ないから点検する必要もないと判断されたのだろう。緊急時とは一体・・・。
使えないものを持っていっても仕方ないけど、だからといって何もないと心細い。もう少し物置を探しても代わりが無かったら大人しく家に帰ろうかな。
そう思った矢先、部屋にドサッと重い音が響いた。
げっ、まさか何か落としてしまったんだろうか。慌てて周りを見ると、奥の方に妙な向きで落ちているダンボールがあった。今落ちてきたのはきっとアレだな。結構距離があるし、どうやら偶然落ちただけみたい、よかった。
「ん・・・・・これは・・・?」
落ちてきた箱の中には、大きな黒い布とランタンが入っていた。
箱の底の方には古びた地図と長方形のカードがある。
「The Hermit ・・・タロットカード? なんでこんなものが・・・。」
ハーミットのコスプレ・・・なんてわけなさそうだしなぁ。
なんだろう、昔イベントでもあったんだろうか。気になるけど、別に重要そうではないし放っておこう。
「地図は・・・んーと・・・・・・・・・多分、ここの見取り図?」
ここには滅多に来ないからハッキリとは言えないけど、多分そうだろう。
地図には4つのフロアに分けられた洋館の見取り図が書かれている。回数は書かれていないけど、どうやら1階から4階までが載っているようだ。
いつも入り口までか、進んでも1階の奥までしか行ったことがないから知らなかったけど、ここ4階まであったんだね。意外と立派な造りをしていらっしゃる。
「ランタンも火さえあれば使えそう。地図見た感じ、1階奥にキッチンがあるみたいだし行ってみるか。」
そこで火が得られるとは考えにくいけど、まぁ、一応ね?
黒い布・・・隠者セットってことは多分ローブなんだろう。箱の中にあったからかホコリは少ない。折角だから羽織ってみようかな。
私は古びた地図とタロットカードをカバンに突っ込んで、ランタンを左手に物置を出た。