ここで装備していくかい?
イーリオス、街路
「宰相さんの話だと、女王を攫った奴は恐らく神獣のところに向かっているだろうって。」
「神獣?」
「よくわからないけど、この空中都市の守り神らしいよ。その神獣と意思疎通ができるのが、この国の王族だけらしい。」
「わーぉ、これはまた随分ありきたりな設定で! ってことは、その誘拐犯は神獣の力を使って何かしようって考えで?」
「だろうね。神獣っていうくらいだし相当な力を持ってそうだ。神獣はこの都市の左奥にある森の最奥に眠っているそうだよ。」
「左奥・・・じゃあその途中にあるらしい商業区で装備揃えて行きましょう? ヘパイストスさんって人がタダで武器をくれるだろうって言ってました。」
「オッケー! でもあまり時間はなさそうだ、焦らず急いで行こう。」
「はい!」
そんなことを言いながら走っていると、周りでの戦いがさっきよりも激しいことに気づく。
どうやらボスが居る方に向かって数が増えていくようだ。分かりやすくて実に良い!
商業区はそう遠くない。
きっと、もうすぐ着くだろう・・・・・今更だけど魔物に荒らされてないといいな。
☆
商業区に到着した私達は真っ先に鍛冶屋を探した。
まず目に付いた元々は雑貨屋だったのであろう建物はボロボロに壊されていて、他の店も同様に荒らされている。これじゃ鍛冶屋もボロボロかな・・・・・そう思っていると、確かにボロボロだけど、他の店よりかは幾分マシな建物を見つけた。店先には綺麗な装飾が施された剣が数本置かれている。どうやらここが目的の鍛冶屋のようだ。
「すいません! ここにヘパイストスさんって人はいますか!?」
「あ? ヘパイストスってのは俺のことだが・・・・・なんだ、あんたらは?」
「こんな状況なので詳しい説明は省かせてもらいますが・・・僕達はテミス様より女王奪還を言い渡された者共です。」
「キルケさんが武器ならヘパイストスさんから、と言っていたんです。どうか私達に武器を貸してもらえないでしょうか?」
「女王様が!? くそっ! コイツら、やっぱりそれが目的かよ!」
ヘパイストスさんは忌々しげにボロボロの壁を殴りつけると奥に向かって叫んだ。
「ヘスティア! まだ使えそうなモンは残ってるよな!?」
「はい! まだ数点残っていますよ!」
「よーっし、ならアンタら好きなのを持ってけ! その代わり絶対に女王様を助け出せよ!?」
「・・・・・・はい、必ず!」
本当に、ここの女王様は民に愛されているんだなぁ。
ヘスティアと呼ばれた少女に案内されて店の奥に行くと、立派な装飾の武具がいくつも残っていた。
とりあえず私達はローブを脱いで短めのマントを羽織る。なんでって、そりゃローブだと動きづらいからです。マントなら少しは防御力あるだろうし、動きやすくなるからね。
更に死神さんはナイフを、私はよく分からなかったからタロットカード集を貰うことにした。
これでもっと色んな魔法が使えるようになるはずだ。・・・使い方分かんないけど、とにかく念じればいいんだろう? 念じれば!
「そろそろ準備は済んだ!?」
「バッチリです、もういつでも行けますよ!」
「よし! じゃあ行こう、絶対に女王様を取り返すよ!」
「はいっ!!」
ヘパイストス・・・炎と鍛冶の神
ヘスティア ・・・竈の神
ここでのヘスティアはヘパイストスの弟子ってことになっています。