屋敷の外へ
今回いつもの2倍くらい長いぞ!
屋敷の外は地獄絵図だった。
空中を飛びまわる無数の巨大な鳥達、地面を這う異形の化け物、鎌を持った骸骨、紫のローブにつつまれた魔法使いたちがココの騎士達と戦っていた。
澄んでいた青い空は黒く染まり、綺麗な庭園は荒らされている。んー・・・こういうときは多分、紫の魔法使いたちがモンスターたちを召喚してるんだと思うんだよなぁ。そいつらを全員倒せば撃退できたりしないだろうか。
「うわっ・・・最初からこれとか、ハードモードもいいところだなぁ・・・・・。」
「とにかく加勢しよう。あの鳥たちを落とすついでに地面の奴らも倒すかな。
・・・天の聖琴が奏でる旋律は優しくもあり凄惨である。汝、神の音を聞きたいと欲するならば覚悟せよ―――神の怒りに触れることを!」
死神さんが右手を天に掲げて叫ぶと、空に大きな魔方陣が幾重にも展開される。
その魔方陣は一瞬強く光ったと思うと、辺りに凄まじい轟音と共に青白い光が降り注いできた!
『『『ピギャア”ア”ア”ァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』』』
「い”ぃっ!? うわああああああああああ!!!」
あまりの音に両手で耳を塞いでうずくまる。
なにコレやばい! 魔法の雷の音と魔物たちの断末魔で耳がおかしくなりそうだ!
だけどこれで空中の敵が一掃できた。ついでに地上の敵もかなり削れたみたいだね、死神さん超強くないですか。
「よしっ! もう久しく使ってなかったから忘れてるかと思ったけど、全然イケるね!」
「し、死神さん強すぎません!?」
「ふふっ、それほどでもないよ。・・・っと、宰相さんたちがこっちに向かってきてる。」
そう言った通り、宰相さんと青い人が数人の騎士さん達を引き連れてこっちに向かって走ってきた。顔色がよくないように見える。
宰相さんは私達から数メートルくらい離れた場所で立ち止まり、一回はぁっと呼吸をすると、キッと私達を睨み付けながら大きな声で詰め寄ってきた。
「あなた達、一体何なんです!?」
「えっ!? まさか加勢したのが気に食わなかった感じですか!?」
「・・・こちらの状況は本当に分かりません。ですが、さっきの話を聞いて逃げるのは我らの気が済みませんでしたので、勝手ながらも加勢させていただきました。ご迷惑でしたか?」
「そんな、とんでもないです! すっごく助かります!
ただその・・・あんな凄い魔法を使える人なんて見たことなくて、その驚いちゃったというか。」
「キルケッ!」
「ひえっ!? す、すいません・・・。」
宰相さんに『キルケ』と呼ばれた青い人は、一瞬びくっと体を震わせて、持っていた豪華な杖を強く握り締めて涙目になって俯いた。
そんな青い人を見てハッと我に返ったのか、宰相さんは一回咳払いをして、とにかく、と話を続ける。
「あなた方に加勢して頂けるのは有難いです。それと、あなた方がこのイーリオスに、ひいては我々に本当に敵意を持っていないことも分かりました。」
「そうですか、それはよかった。」
「ですので・・・改めてお願いします。女王奪還に協力して頂けないでしょうか。」
「えっ、女王様奪還!?」
女王様っていうのは・・・・・攫われたディオネって人のことだろうか。
「この空中都市、イーリオスの女王ディオネ様は、先代が病気で亡くなってしまい、若干13歳でこの国を統べることになってしまわれたお方です。」
「13!? それはまた、随分と・・・。」
「・・・最初は皆不安でした。でも女王様はその小さなお体で、民の不安や不満を受け止めながらも必死で努力なさっているのです。」
「すごいな・・・私ならとっくに心が折れてるよ。」
「えぇ、本当にすばらしいお方です。だから私達はあのお方が大好きなんですよ。」
そう言って宰相さんと青い人は優しい顔で微笑んだ。
なるほど、やっぱり凄い人だったんだな・・・・・よしっ、絶対取り返してやろう!
「わかりました。ディオネ様のことは我らにお任せください。」
「しかし地上の敵はまだ残ってますし、どこかから増援が来ないとも限りません・・・敵の事はこちらの騎士達でなんとかしましょう。」
「ですので、後ろからの敵は心配しないでください! イーリオスは全域に騎士が配置されていますので、あまり戦闘面でも心配しなくてもいいと思いますよ。」
おぉ、全体に騎士がいるんだね。ってことは、ここはそんなに大きな都市じゃない・・・いや、騎士が多いだけ・・・・・? なんにせよ嬉しい情報だ。
隣では死神さんと宰相さんがよく分からないけど難しい話をしている。なら、私は青い人と少し話してみようかな。聞きたいことがあるし。
「・・・あの、どこかで武器を貰えそうな場所とかありませんか? 私の今の魔法じゃ役に立ちそうにないというか、もうすぐ魔力が切れそうというか・・・・・その。」
「えっ? あ、そういえばお二人とも武器持ってませんね・・・。なら商業区にいる鍛冶屋のヘパイストスさんを訊ねてみてください。優しい方ですから、こんな状況じゃ多分タダでくれますよ!」
そう言って青い人・・・もうキルケさんでいいか、は腰の辺りから地図を取り出して印を描くと、その地図を私にくれた。
・・・・・やっぱり地図を見た感じ、あんまり広くはないようだ。私達が今いる場所は、この都市のかなり右側のようだ。左に商業区と書かれてあり、その奥は特に何もない。ただ森が広がっているだけっぽい。
「んーと・・・・・よし、分かった。ありがとうございます!」
「いえいえ。女王様の事、お願いしますね!」
話が終わると、ちょうど死神さんたちの話も終わっていたようで、すぐに出発することになった。
私達は宰相さん達に軽く挨拶をすると、商業区に向かって走り出す。こっからが本番だ、頑張ろう!