風樹
ひらひらと舞い踊る落ち葉はまるで私のようだと思った。
くるくると舞い散る桜の花はまるで私のようだと思った。
どれ程大樹に心を寄せても風の思いには逆らえず、母なる木から舞い落ちる。
どれ程大地に心を寄せても風の願いには逆らえず、冷たい土から舞い上がる。
私の気持ちが私を動かすことはなく、風の意志に私は動かされる。
どれ程故郷に心を寄せても世間の風には逆らえず、育った村を後にする。
どれ程家族に心を寄せても生命の風には逆らえず、育った家を後にする。
私の気持ちが私を動かすことはなく、世界の意志に私は動かされる。