第ニ話《六夜スロウスⅡ》
「おっす、六夜。またサボりか?」
「まあな。暇だし」
金髪の悪友ーー《列連 天狗》。
その隣にいるのは、ツインテールの黒髪少女ーー《陽見池 咲希》。
九々津は、この二人とよくつるんでいる。
サボりのことを悪びれもせずに言う九々津に苦笑いを向ける咲希。
「あはは……。ま、まあ六夜だし仕方ない、のかな?」
「おい待て陽見池。それはどういう納得の仕方だ」
「そうそう。仕方ねーよな」
「天狗もだ。納得するなスルーするな」
購買で、三つの椅子がある場所をわざわざとってくれていたのは九々津の為だろう。
九々津は、二人のこういう気遣いを嬉しく思っている。
ちなみに、陽見池はBクラス。天狗はCクラスだ。
だが、クラスなど関係無かった。
そもそも九々津は教師からの内申は最悪なので今更生活態度を改めても変わらないだろう。
そんなわけだが、魔法学園だけあってか、此処は魔法科だけは必修なので出て来ている。
単に、腹が減ったからかもしれないが。
適当にパンを見繕って、また席につく。
はむはむとホットドッグを食べている咲希。まるでソーセージにかぶりつく子猫だ。
そんなことを思いつつ、九々津は自分のパンに歯を立てる。
「ほぉひや、ふひのじかんっへごうろうらっへ?」
「喰ってから喋れ、天狗」
言われて、天狗は凄まじい速度で咀嚼し、飲み込む。
一息ついてから、同じ内容であろうことを話し出す。
「んぐんぐ……ぷはぁっ。そういや、次の時間って合同だっけ?」
「魔法科か? ああ、AとC、BとDとE、だな」
「……何故に俺だけ違う」
不貞腐れたように、天狗はそっぽを向く。
だが、九々津と陽見池は素知らぬ顔でパンを食べ続けている。
「……めんどくせ」
ぽつりと、九々津は呟いた。
ーーーーー
五限目。
もはやサボりがデフォルトになっているためか、教師は九々津になにも言わなかった。おそらくは、馬の耳に念仏ということわざをしっていたからだろう。
九々津の相手は、Bクラスの男子生徒だった。
「なんだ、Eかよ。つまんねえ」
「なんだ、Bかよ。つまんねえ」
不敵に笑って、同じセリフを九々津は返した。目に見えて、男子生徒の表情が歪む。
「……あ?」
「めんどくせ。眠い。帰りたい」
「お前、よく試験に通ったな」
「まあ、試験受けてないけどな」
くっ、と眉根を寄せる男子生徒。
それはどういうことか、と聞く前に練習開始の合図が鳴った。