ウインドブレイカー
人生20年の記憶と苦悩を包むオリジナル小説。
1.[エースパイロット]
僕の名前は楽風直人。
今を時めく、地球軍の期待のエースパイロット。
今日の実戦テストも好成績で、お偉いさん方から絶賛された。
「いや~、まいったな・・・。」
最後の最後までお褒めの言葉を頂いて、僕はニヤニヤしながら機体から降りた。
「お疲れ様です!楽風さん!」
そこへ、女の子が駆けつけて来た。
僕と同じくらいの年だろうか・・・?ロングヘアーの、なかなか可愛らしい子だった。
「ありがとう、君。外から見て僕の動きは、どうだった?」
僕はクールに言った。
「私、感動しました!あんなに動かせる人、初めて見ました!すごいすごい!」
女の子は、とても嬉しそうに言った。
「ありがとう、君。お名前は?」
僕は満面の笑みで聞いた。
「あっ、申し遅れました。私、今日から、楽風さん専属の整備士をするようにと、命令されて、ここに来ました。ユーコと申します。」
マジで!?こんな可愛い子が、僕の・・・。
僕は平静の顔で、
「そうなんだ、僕は聞いてないけど・・・?」
たしかに、僕はこんな子が来るなんて聞いてない。も、もしや、これが噂の・・・!!た、たしかに周りは誰もいない・・・!僕と彼女だけだ・・・!あっーぁ、神様、仏様、地球軍様!
「くっ、ちょっと眠くなってきたな・・・。」
僕は男らしく言い、僕の専属のユーコにウインクした。
すると、ユーコは照れた顔で、
「わ、わかりました。先に、機体の方を整備して来ますね。」
と、急いで僕の機体の方へ行った。
大丈夫だよ、ユーコ。僕は、何時までも待っているから・・・。
僕は汗ばんだ服を脱ぎ始めた・・・。
すると、
ドカーーーーン!!!
ものすごい音がし、警報が鳴り始めた。
「なんじゃ~~~!?」
僕は、なんとも変な格好で周りを見た。
ガレージのシャッターが見事に穴が開いていた。おまけに、僕の機体が穴の方へ向かって、動いている・・・!?
「ユーコ・・・!?」
僕は戸惑った。
「バーカ!気持ち悪っ!!この機体、もらって行くわよ!、エースパイロットさん!」
僕の機体と一緒に、ユーコは外へと飛び発った・・・。
「何事だ!楽風!」
赤坂さんが、来て怒鳴った。
「すみません!赤坂さん!何者かに機体を奪取されました!不覚にも自分が着替えている最中に銃を突きつけられ、反撃しようにもこんな格好ですし・・・、すみません!」
僕は必死に作り話をし、その事にも、あの女に騙されたのも、自分の情けなさにも、全部ひっくるめて泣いた。
「楽風!泣いても騒いでも、何も戻って来んぞ!ささっと行くぞ!出撃だ!」
赤坂さんは僕を揺さぶった。
「しかし、僕の機体は奪取されて・・・。」
僕は嘆いた。
「じーさん!あの機体、楽風に渡すぞ!いいな!」
赤坂さんは叫んだ。
いつの間にか周りにはたくさんの人がいた。その中に1人の老人が歩いて来た。その人は今日、僕を褒めてくれた人の1人だった。
「楽風、別に誰も、お前を責めてなんぞ、おらん。侵入者を許した、我々、老いぼれじゃわい。だから、気にするな、楽風よ。お前には、老いぼれにはできん、力がある。楽風よ、立ち上がれ!」
僕は立った。今はもう涙はでていない。過去は変えられない。だが、未来は変えられる。
「お前に、アナザーアースのパイロットととして、任命する!楽風、出撃せよ!侵入者を捕獲、できなければ、排除せよ!」
じーさんは周りがびっくりするほどの声で、僕に命令した。
「任務了解!これより、楽風直人、直ちに向かいます!」
2.[E13隊]
「これがアナザーアースか。」
僕は機体に乗り込んだ。
すごい・・・!前のアース3より、2倍以上の高性能だ・・・!
僕は機体をチェックした。
「どうじゃ、アナザーアースは。わしらの最高傑作じゃから、良い機体じゃろ。」
じーさんの誇らしげな顔が、モニターに映る。
「スペシャルですよ・・・!楽風直人、ミッションコード1022。綾さん、スタンバイ、オッケーです!」
気合を込めて、僕は言った。
「現在、侵入者は直人君の機体、アース3に乗って、宇宙の中を移動中よ。ルート4経由で、月に向かっているわ。直人君、無事に帰って来るのよ・・・。発進、どうぞ!」
綾さん・・・。帰ったら僕の手作り料理、オムライスを一緒に食べましょう。
「アナザーアース、出ます!」
僕は宇宙へと飛び立った。
・
僕が配属されている部隊は、E13隊。
「おっ、主役の登場だぞ、真凛。」
この人がE13隊の隊長の、赤坂さん。数多くのミッションをクリアし、次期司令官との噂がある、とても頼りになるお方だ。
「これはこれは直人様。泣いて叫んで、最新機体を頂いた直人様では、ありませんか。さすが地球軍きってのエースパイロット。やることが違いますよね。」
こいつが真凛。僕より年下なのに、えらく生意気。その上、僕に対してライバル意識をもってるらしく、困った女だ。
「遅れてすみません、赤坂さん。もう機体に慣れました。」
E13隊は、この僕を含め3人だ。
「楽風、見えるか?前方にかなり遠くだが、光がゆらゆらしているだろう。あれが奪取されたアース3だ。」
赤坂さんの言うとおり、見えた。たしかにあの動きは星じゃない。あの女・・・あの女・・・!
「ま~ここからじゃ、何もできん。しばらく様子を見よう。」
しかし、僕は今しかないと思った。あの敵が1人の今しか・・・。僕の恥が他者にもれない今しかない!
僕はアナザーアースの右肩にある高エネルギービーム砲で、あの光を狙った。
「・・・死ね。」
ドキューン!
「アホか貴様!任務は捕獲だと・・・!」
「早すぎるよー!」
2人は言ったが、しかしあの感覚は間違いない。命中だ・・・!
かなり遠くの前方で、光が少し大きくなった。爆発だ!
「赤坂さん!僕は先に行って来ます!」
そう言ってアナザーアースを、最大出力で爆発があった場所に移動した。
「お前と言う奴は、見切りが早いというか、バカというか・・・。」
「けっ、どーせゴミでしょ。」
3.[地球とウインド]
いた・・・。アース3だ。
両足が無くなっていてその爆発のせいか、アース3は動いてない・・・。
僕はアナザーアースを降りて、あの女がいるであろうアース3のコクピットに向かった。
ビームガンを片手に持ち、コクピットを開ける番号を入力した。そして、隠れた。
「きゃっ!何!?開いたの・・・。」
ユーコは安堵のため息をついた。
「やっと、帰れるわ。データも取ったし、そろそろ追手が来るだろうし・・・。てゆうか、結局あれはなんだったのかしら・・・。地球軍のまぬけビームにでも当たっのかな・・・?。データ取って終わったと思ったら、ドカンだもの・・・。まー助かったから良しとしよ。」
あの女・・・!笑っていやがる!
ユーコは笑いながら出て来た。
「まー僕も、機体は壊れたけど、侵入者を捕まえたから良しとしよーかな。」
ユーコの前に姿を現し、ビームガンを突き出して、僕は言った。
「・・・。」
ユーコは声もださず、ただ、じっとした。
「お前、なんで地球軍の機体を盗んだ?」
僕は聞いた。
「地球軍の現在の主力機体のデータが知りたかったから。」
ユーコは静かに答えた。
「なんで知りたいんだ?」
僕は更に聞いた。
「・・・。」
ユーコは黙った。
ビームガンをユーコの腹に当てた。
「・・・ウインドに報告するために。」
僕は一瞬、動揺した。しかしすぐに、
「なんで、お前が。お前・・・ユーコとか言ったな・・・。どう見ても地球人じゃないか。それにウインドとは、300年もの間ずっと交流してない。地球軍でもないお前が、どうしてウインドと知り合うんだ?」
ウインド。それは地球と同じ人類が住んでいる星だ。地球人に比べ、ウインド人は耳が長い。地球とは300年前から交流してない・・・。なぜかと言うと、ウインドは地球人が嫌いらしい・・。地球にミサイルを落とすほど・・・。それから地球とウインドは縁をきった・・・、ウインドとは係わるなと・・・。と言うような事を、授業で教えてもらった。
「私は、地球が嫌い・・・!だから・・・!」
ユーコは憎しみを込めて言った。
「だからなんでウインドと知り合うんだ!」
僕は叫んだ。
「私は地球の人達に絶望した!自分達が社会に対して無視されたら、テロを起こす・・・!テロ、テロ、テロ・・・!それを起こして自分達は満足して!周りの人の事は何にも考えていないっ!私は嫌よ・・・。そんな世界で成り立った地球は・・・。そんな私をウインドの人が助けてくれた・・・!」
そして僕達の周りを、眩しいライトが照らされた。
僕は後ろを見た。そこには見たことも無い艦がいた。
「地球人!おとなしくそこの女性を、ユーコを放しなさい!」
その艦から女性の声が聞こえた。
いつのまに・・・!?
僕はビームガンを捨て、両手をあげた。
くそっ!なんで気付かなかった・・・!?くそがっ!
「・・・さよなら。」
ユーコは言い、艦の中に入って行った。
「素直に開放してくれてありがとう。あなたも良かったら・・・えっ!?」
その時、ビームがきた。
赤坂さんだ・・・!
「楽風ーっ!早く機体に乗れーっ!」
振り返ると赤坂さんの機体、アサルトアースが見えた。
僕はアナザーアースに戻り、コクピットに入った。
「すみません、赤坂さん。侵入者はウインドです。」
僕は言い、これから戦う事になるであろうウインドに、
「いくぞっ!」
と自分に言った・・・。
4.[ウインドの力]
敵は後退しつつ、迎撃している。パワーマシンを出して来ない。3対1だ。
「楽勝、楽勝。早く降参しなさいよ。」
真凛は余裕の笑みで言った。
「真凛、油断するな。敵はパワーマシンをまだ出していない。こちらの様子を窺ってみえる。」
たしかに赤坂さんの言うとおりだと思う。少しずつだが距離をとっている・・・。おされているのは僕らの方か・・・?敵艦の迎撃が思ったよりも激しい。認めたくないがウインドは地球より技術が発達している。近寄れない・・・!
「焦るなよ真凛。敵の増援も来てない。逃げ道は無いんだ・・・。」
と、自分に言い聞かせるように真凛に言って、ふと思い出した。
あの時、どうして後ろから現れたんだ・・・?アース3を見つけて機体を降りる前は、レーダーに反応はなかった。近くに敵はいなかった・・・。
「まさか昔話にでてくるワープ・・・?まさかな・・・。あれはおとぎ話だ・・・。」
僕は呟いた。
そして、
「敵の攻撃がやんだぞ!ようやく降参するか・・・。」
赤坂さんは、やれやれと言わんばかりに言った。
「赤坂隊長!私の一撃が勝利のカギとなりました・・・!これは勲章ものですよね!」
真凛を無視して、
「赤坂さん、赤坂さんが僕を助けに来た時、敵艦はいました・・・?」
僕は聞いた。
「いたから撃ったんだろうが。気付くのが遅かったが・・・。もう俺も年だな・・・。あそこまで敵艦に気が付かなかったとは・・・。」
赤坂さんもだ・・・!
「もしかして敵は・・・!?」
その時、敵艦が急に消えた。
「何だっ!何が起きた!」
赤坂さんが叫ぶ。
「隊長!レーダーに反応なし!完全にロストしました!」
真凛が泣きそうに叫ぶ。
本当にワープだったんだ・・・。
僕はなんとも言えない感情だった。
・
「いや~、あのワープには驚いたよ~。」
今、僕の部屋にいる。そこで綾さんと2人だけの甘い食卓だったはずが・・・。
「お前、黙れ。」
なぜか真凛がいる。僕は言った。
「直人君、せっかく真凛ちゃんが来てくれたのに、それは酷いわよ。」
綾さんが、めっ、と言うように言った。
僕は自分の作ったオムライスを食べて、ため息をついた。真凛が僕の部屋に来る途中の綾さんに会って、自分も行くと言ったそうだ。
「このオムライス、直人が作ったから微妙だね~、綾さん。」
こいつ。
「そんな事はないわよ、直人君の味がするわ。」
綾さん・・・。
僕はお礼を言おうとして、
「あり・・・。」
「綾さん聞いた?直人ってさ~、今日、おお泣きしたんだよ。わんわん泣いてさー。あははっ。もー、E13隊の恥さらしだよ~。」
こいつ!
「直人君は何事も真剣なのよ、自分のミスで周りに迷惑をかけて、必死だったのよ。真凛ちゃん、直人君はこれからの地球軍にとって、先頭に立っていく人だと、私は思うわ。」
綾さん・・・!
「真凛。たしかに今日、E13隊は僕のせいで恥をかいたかも知れない。けれどE13隊は、それで終わりじゃない。これから赤坂隊長に真凛、そして僕が一緒になって頑張れば良いと思う。僕のミスは真凛がカバーしたり、真凛のミスは赤坂隊長がカバーしたり、赤坂隊長のミスは、真凛、僕らがカバーしよう。一致団結して、これからのE13隊を盛り上げていこう。真凛、今日は悪かったな・・・。」
僕は頭を下げた。
内心はニヤニヤして。
「知ってるわ、分かってるわよ。頑張りましょ、直人。」
真凛は顔を赤くして言った。
5.[休日]
「はぁ~、こんなにたくさんあったのか・・・。」
僕は図書館で、過去にあったテロの記事を読んでいた。ユーコの言った言葉が気になって。
世界各地でテロを起こして、主張している人達がいた。そんな人達は、どれも自信にあふれた顔をしていた。死人がでた事を知っているのに・・・。関係ない人も死んでいるのに・・・。みんな自分達が正しいと思っている。
「僕達、地球軍も似たようなものかな・・・。」
そう思い、気を強くしたけれど、また落ち込んだ。
ため息をつき、
「考えてもしょーがない。僕は僕が正しいと思った事をやるだけだ・・・!」
その考えは、テロをした人達と同じ考えだとも思った。しかし僕達は地球軍。テロリストにはない、数多くの仲間がいる。その数だけ、考えがある。僕達は責任をもって行動している。僕達は、地球を幸せな世界にしたい。僕達は・・・!
「うぉーーー!」
僕は吠えた。
周囲から殺気がした・・・。僕はまたまた落ち込んだ。
・
図書館を出て、せっかくここまで来たんだ、美味しいご飯でも食べようと思い、そのまま帰らず繁華街へ向かった。
この店はオススメだよ、と綾さんが言った事がある「エンジェルハウス」。
僕はその店の前まで来て、呆然とした・・・。
えらく可愛らしい店だった。出てきた客、入ろうとする客、すべて女性だった・・・。それと男女のカップル・・・。
綾さん・・・。せめてもう一言、言って欲しかった・・・。
僕は帰ろうと思い、後ろを向いた。
そこには、ニンマリ顔の真凛がいた・・・。
「へぇ~。直人、もしかして男1人で入ろうとしてた・・・。」
真凛が今にも爆笑しそうに言った。
「バ、バカ・・・。俺はここで・・・、ある女性と待ち合わせだ!その人と一緒に入るんだ!あっ、もう来る頃だな。ほらほら、子供は帰った、帰った!」
僕は腕時計を見た・・・。今日はして来てなかった・・・。
「あはははっ!」
真凛は爆笑した。
店の周りの人達も、クスクスと笑っている・・・。
何してるんだ、俺・・・。
僕は逃げ出そうかと思い、下を向いたまま歩きだして、
「あっ、ゴメンゴメン・・・。直人、ここまで来て帰るつもり?せっかくだし、入って行こうよ。」
真凛は笑うのを止め、言った。
「俺は男1人なんだよ・・・!?」
と言って、顔を上げて真凛を見た。
「私も昼ご飯、まだなんだ。入ろうか?」
今日の真凛は何かが違った。優しい・・・。
「すまん・・・。」
僕と真凛は、一緒に「エンジェルハウス」に入った。
「いらっしゃいませー。」
店員が言った。その店員は笑っていた。違う意味で・・・。
店内もクスクスと笑っている・・・!
僕はまた下を向いた。すると真凛が僕の腕にしがみついて、
「ここで一番美味しいもの、2人前、お願いしますね。」
と、明るく言った。
テーブルにつき、僕達は、恋人みたいに話をした。
6.[苦労の果てに]
地球軍は、ウインドに攻撃を仕掛ける事になった。
「まさかとは思ったけど、ウインドに攻撃か・・・。」
今日の会議で決定となって、僕はある事を考えながら、会議室から出た。
「まー、まず話し合いからだと、司令官は言っとったぞ。安心しろ、楽風。たしかにウインドの技術力は未知数だ。なんせワープができるからな・・・。戦いとなったら、まず負けるな・・・。ふふ、面白くなりそうだ・・・!」
赤坂さんは、うっし、と気合を入れた。そして僕と真凛の背中を、バシッと叩いた。
「私、全力で頑張ります!隊長!」
真凛は答えた。
「・・・。」
戦いの前にもう一度、ユーコに会いたい・・・。僕が直接、ウインド人に話を聞きたい。なぜ地球と300年前から関係が悪くなったか・・・。なぜ・・・。
「楽風!危なくなったら、頼むぞ!お前には期待しているからな!」
赤坂さんに僕の頭を、ぐしゃ、ぐしゃ、とされて、
「了解です・・・。」
僕はつい、そっけなく答えてしまった。
「まだ俺の愛がたりないか!・・・何か考え事か?」
赤坂さんは聞いてきた。
僕は地球とウインド、過去に何があったか、詳しく知りたいと言った。
「それなら・・・、吉住さんに聞くといい。」
考えてから赤坂さんは言った。
「誰ですか?その人・・・?」
僕は尋ねた。
「お前にアナザーアースをくれた、じーさんだよ。」
あの人か。
「行って来ます!」
そう言って、僕は走り出した。
「どこにいるか、知ってるのかな・・・?」
真凛が言い、
「そりゃあ・・・、知っているだろ。はっ、はっ、はっ!」
赤坂さんが豪快に笑った。
・
「すみません、吉住さんはいらっしゃいますか?」
僕はこれで、何人の人に尋ねたのだろかと思った・・・。
「パワーマシン研究所にいるよ。」
「ありがとうございます。」
「第4休憩室にいると思うよ。」
「あっ、ありがとうございます。」
「1番ガレージに用事があると言ってたな。」
「はぁ、すみません・・・、ありがとうございます。」
「2番ガレージに行ったよ。」
「・・・どうも。」
「3番ガレージにトラブルが発生して・・・。」
あのじーさん・・・!年寄りはじっとしとけよ・・・!
僕は歩くも尋ねるのも、何もかも嫌になって、
「も、もうダメだ・・・。」
僕は近くの自動販売機でお茶を買い、そこのベンチに座り、気持ちを落ち着かせた。
「はぁ・・・。さて、どーするか。」
そう呟き、隣に人が座った。僕はお茶を飲みながら隣を見た・・・!
「ぶほっ!」
そこにはユーコがいた。
「お、お前・・・、なんでここに・・・!?」
僕は周りを窺って尋ねた。
「落ち着いて、私の話を聞いて欲しいの。」
ユーコは真剣な顔で僕を見た。
7.[ユーコの過去]
僕とユーコは基地の外へ出た。寒い夜だった。
「もう冬か・・・。」
ユーコは寂しそうに言った。
僕は黙ってユーコについて行く。
「あなた、家族はいるの?」
ユーコは僕に尋ねた。
「あぁ、父さんに母さん、それと弟が1人いる。・・・みんな元気だ。」
ユーコは足を止め、興味津々そうな顔をして僕を見た。
「父さんも母さんも、今は仕事を退職して、毎日毎日僕に電話してきて、最近どうだ~とか、いつ帰るんだ~とか、早く結婚しろだとかうるさくてさ・・・。僕は子供じゃないって、本当に・・・。軍に入って、それなりに成長したと思ってるのに、親の前からしたらやっぱり子供でさ。」
僕は苦い顔をして答えた。
「それは当然よ。大切な子供なんだから。私も似たようなものよ。お父さんとお母さんは、私が何かしたら、とんで来てユーコ、ユーコとよく言われたわ・・・。本当に・・・。」
ユーコは懐かしそうに言った。
「平日は、お父さんもお母さんも家に帰るのが遅くて遊んでもらえなかったけど、日曜日は違った。家族3人で行く買い物・・・、動物園・・・、あっ、遊園地なんか良かったな・・・。お父さんが嫌がるのも無視し、一緒に乗ったジェットコースターは最高だった・・・。私は日曜日が大好きだった・・・!」
ユーコは泣いていた。
「それとね、クリスマスはいつも楽しかった・・・!その日だけ、何か1つだけ願いが叶うよ・・・ってお父さんが教えてくれた・・・!私は・・・何をお願いしたっけ・・・!私、私・・・!」
ユーコは僕の腕を掴んだ。
「お父さん・・・!お母さん・・・!助けて・・・!」
僕はユーコを抱きしめる事もできず、何も言えずただ立っていた・・・。
空は曇っていて、星は見えなかった。
街灯の灯りだけが、僕らを照らしていた。
・
「3日後に、月まで来て欲しい。」
僕は自分の部屋のベットに寝転び、ユーコの言った言葉を思い出した。
ウインドの人達が、僕と話がしたいと言ってるそうだ。
ユーコの口からは言えない、大事な話だと・・・。
それを伝えて、ユーコは去って行った。どこに帰るかは聞かなかった。
あいつは地球にはいない・・・。ウインドに帰ったんだ。
「ワープか・・・。」
それができる技術をもつウインド人は、恐怖だ。
地球を何時でも支配できるだろう・・・。
「ウインドは何を考えている・・・?」
今の僕には分からなかった。
「明日、赤坂さんに相談しよう・・・。」
僕はそう思い、瞳を閉じた。
・
次の日、その日の訓練が終わり、
「赤坂さん、・・・話したい事があるんです。」
僕は赤坂さんに昨日の事、ウインドが僕に話し合いがしたいと言った事を話した。
「ほぅ・・・、侵入者の女がまた来たのか・・・。」
そして、
「楽風!お前はそれで、捕まえず、そのまま帰したのか!」
赤坂さんは僕の顔を殴った。
「・・・話し合いをもちかけてくれたんですよ・・・、地球軍にとって良いではありませんか・・・。」
僕は何故殴られたか、理解できなかった。
「あの女は、地球軍の施設に無断で入り、その上パワーマシンまで盗んだ奴だ!その女を野放しにしとくつもりか、貴様!」
あぁ、そう言えばそうだったなと、僕は思い出した。
僕はあの時のユーコを忘れていた・・・。僕の中でユーコは、明らかに前と違う・・・。僕はユーコが幸せになって欲しい・・・。そのためには・・・!
「・・・僕は明後日に月に行きます。地球軍のためにも、無駄な争いは避けるべきです。」
僕は決意を込めて言った。
「・・・分かった。」
赤坂さんは言い、下を向いた。
「ありがとうございます。」
僕は歩き出した。・・・そして後ろから、
「すまん、楽風・・・!」
ゴンッ!
僕は警棒で頭を叩かれた・・・。
「あ・・・赤坂さん・・・。なんで・・・。」
赤坂さんの怒りに震える顔が見えた・・・。僕はそれを最後に意識を無くした。
8.[信念]
「楽風、お前は良いパイロットになれる。俺と共に頑張れ。」
その言葉で、僕は赤坂さんについて行くと決めた・・・。
「楽風、今日から俺達の部隊に新しく配属された真凛だ。女の子だぞ。」
その頃、僕は赤坂さんを尊敬していた・・・。
「楽風、お前は最高だよ。」
僕は赤坂さんが好きだった・・・。
・
目が覚めた。
僕は周囲を確認した。
「はぁ、なんで・・・。」
ここは僕の部屋じゃない。罪人を閉じ込める牢屋だ。
「赤坂さん・・・。僕は・・・!」
ドンッ!
僕はベットを強く叩いた。
そして、牢屋の扉の前まで行き、開けようとした。
予想通り、外側から鍵がしてあった。
「くそっ、くそぉ、くそったれ!」
僕は扉を激しく動かした。
すると足音が聞こえた。
誰か来る・・・!
僕はベットに戻り、寝たふりをした。
「・・・直人?」
現れたのは真凛だった。
僕は起き上がって、
「真凛・・・!。」
と、驚いて言った。
「僕は何時間、寝てた!地球軍の動きはどうなっている!」
真凛に勢いよく尋ねた。
「1日よ。今は夜の10時・・・。明日が約束の日よ。地球軍は月へと出発の準備をしているわ。」
まずい・・・!早く行かなくては・・・!
「なんで侵入者をそのまま帰したの・・・?」
真凛は悲しそうに言った。
「・・・俺は正しい事をしたと思ってる。」
僕は正直に答えた。
「答えになってないよ!」
真凛は激しく言った。
「なんで・・・どうしてなの・・・!?その女の人に騙されてるの!?そんなに助けたいの・・・?」
真凛は僕をまっすぐ見た。
「俺はユーコを助けたい。幸せになって欲しい。たとえ過ちを犯したとしても。地球人もウインド人も、みんな争う事なく幸せに暮らせる世界を、僕は目指してる。そのチャンスを、ユーコは僕に与えてくれた・・・!だから逃がした訳じゃない。僕は地球とウインド、どちらも仲良しになれたら良いと思ってる。そのきっかけを最初にもちかけたウインドが・・・、ユーコを処罰させるなんて、僕にはできない!」
たとえやり方がおかしくても・・・!。僕は自分の信念が間違いではないと、強く感じる。きっとウインドに行ったら、僕は・・・!
「真凛!ここから出してくれ!」
頼む・・・!
僕は真凛をまっすぐ見つめた。
真凛は涙をこらえながら、
「私は・・・、直人が楽しそうに生きてくれたら・・・!私は、直人が・・・!」
ガチャ。
扉の鍵を開け、真凛は走って去って行った・・・。
ありがとう、真凛・・・。
僕は警報が鳴り響く中を駆け出した。
9.[もう1つの地球]
早く月に行かなければ・・・!
僕は地球軍の兵士を振り切りながら、走った。
「いたそー、こっちだ!」
くそっ、さすがに厳しいな・・・!
僕は兵士が通り過ぎたのを確認し、
「くそっ、どうする・・・!」
アナザーアースの所まで辿り着けそうにない・・・!
僕は焦った。
真凛が僕の気持ちに応えてくれた・・・!僕はこんなところで・・・!
その時、後ろから、
「お前は、こんな所で何をしておるっ!」
しまった・・・!
僕はゆっくりと後ろを振り向いた。
そこには、じーさん、吉住さんがいた。
僕は、なりふり構わず、
「くそーっ!」
吉住さんに、体当たりを試みた。
しかし、吉住さんは避けた。
僕は勢いあまって床に転げた。
「くそぉ・・・、なんで分かってくれないんだ・・・!」
僕は泣いた。世界に絶望した・・・。
「・・・立ち上がれ、楽風!」
僕は吉住さんの言葉を無視し、床で泣いていた。
「お前は1人ではないわ・・・。」
吉住さんの言葉に、僕は上を向いた。
吉住さんは笑っていた。
「ついてくるんじゃ。」
吉住さんは、僕に手を差し伸べた。
「・・・了解。」
僕はその手を握った。
・
地球軍の兵士達をうまく誤魔化し、その隙に僕達は大きな扉の前まで来た。
「ここは・・・?」
僕は尋ねた。
吉住さんは何も言わず、扉を開けた。
そこにはアナザーアースがあった。
「この機体は、お前が赤坂に捕らえられたと報告があってな・・・。わしがここに移動させたんじゃ。」
吉住さんは苦笑いした。
「・・・お前はいつか、わしの夢を叶えてくれると信じていた・・・。お前のまっすぐな心が、わしに希望を与えてくれた・・・。わしはな、楽風よ。もう1つの地球・・・ウインドをこの目で見たかった・・・。ウインド人は普段、何をしているか・・・、何を食べているのか・・・、何をして過ごしているのか・・・。」
吉住さんは遠くを見ていた。
「・・・僕もです。」
ウインド・・・。子供の頃、僕は憧れてた。地球の他にもう1つ、人類が住む星。胸がドキドキした。なんて世界は広いんだと。そして、少しでも近づきたいと願い、僕は地球軍に入ろうと決めた・・・。
「楽風よ、お前はお前の信じる道を行け。わしもわしの信じる道を行く。」
吉住さんは笑っていた。
僕も笑った。
「行ってきます、吉住さん!」
僕は言って、アナザーアースのコクピットに乗った。
「さて、楽風直人。準備は良いか・・・。ウインドに・・・。」
そう言いかけて、笑った。
来て欲しいと言ったのは、月だ。ウインドじゃない。
しかし、僕は確信していた。
「楽風直人、アナザーアース、これよりウインドへ向かいます!」
僕は自分に言った。
「でます!」
僕は期待を胸に、飛び立った。
10.[地球]
前方に光が点滅していた。
「あそこか・・・!」
ユーコを追って、そこで出てきた戦艦だった。
近づくとハッチが開いた。
ここに入るのか・・・。
アナザーアースを着艦させた。
周りには人が集まって来た。
「さて、歓迎に期待しよう。」
僕は機体から降りた。
・・・そして沈黙。
「は、初めまして、地球から来ました楽風直人です。ウインドのみなさん、お招き頂きありがとうございます。」
集まって来た集団の中の1人の女性が前に出て来て、
「初めまして、と言うのは変かな・・・。ユーコを無事に帰してくれてありがとう。あの時に一度、声をかけたのだけど・・・。」
言われて見れば、あの声の女性だ・・・。
地球人と耳が違うだけで、あとはまったく地球人と変わらない。
「私の名前はガーネット。この艦の艦長をしているわ。あなた・・・楽風さんには、いろいろ聞きたい事があるの。ユーコに地球の事を教えてもらったのだけど・・・。」
ガーネットさんは言い、僕は客室へと案内された。
・
「地球の艦と良く似てますね。技術力はまったく劣りますけど。」
僕は思った事を言った。
「・・・それはそうよ。私達ウインドは、その技術を地球に教えたのだから。」
・・・なるほど。
「あなたは何も知らない、教えられてない。地球の歴史は間違っている・・・!」
ガーネットさんは強い意志で言った。
「僕は300年前に、ウインドが地球にミサイルを落として、それで地球はウインドと縁をきったって・・・。」
僕は授業で教えてもらった事を話した。
「・・・なんで地球にミサイルを何発も落としたと思う?」
僕もそれがひっかかっていた。
ウインドとは、うまく付き合えなかった・・・。そう記された本を読んだのを思い出した。
「僕達、地球人はウインド人を怒らせたから・・・。」
それにしたって、ミサイルを何発も落とすだろうか・・・?
僕はずっと思ってきた。地球人はいったいウインド人に何をしたか・・・?
「・・・ウインドはパワーマシンの研究が成功し、完成させた。そして、地球人をウインドに招き、パーティーを開いたわ・・・。」
僕は黙って聞いた。
「私達は研究が成功して、嬉しかった。地球の人達にも知らせたかった・・・。パーティーは、盛り上がるはずだった・・・。なのに、あんな事になるなんて・・・!」
ガーネットさんは、自分がそのパーティーにいた1人のように話した。
「・・・パワーマシンを見て、説明を聞いてから地球人は、説明していた中の1人の女性を捕まえた・・・。その女性を人質として地球人は叫んだわ。」
「パワーマシンをよこせ!」
僕はここにいたくなかった。
「私達は驚いたわ。最初は冗談と思い、そしてその女性の服を・・・、パーティーに着ていくために母に作ってもらったドレスを破り始めたわ・・・。私達は本気だと思い答えたわ・・・。」
「分かりました!だから、だから止めて下さい!」
僕は・・・。
「そして・・・地球人はその女性に乱暴したわ・・・。みんなのいる前で・・・。私達は泣きながら、走ってパワーマシンの書類を取りに行ったわ。」
僕は地球人・・・。
「・・・書類をもらうと地球人は、笑いながら帰って行った・・・。その女性はもう、ドレスではなかったわ・・・。」
僕は地球人でも・・・!
「私達はそんな地球に、ミサイルを落とした。何発も何発も・・・。それでも足りなかった・・・!その女性の事を考えると・・・!」
僕は未来を変えたい・・・!
「僕達は知らなかったんです・・・。知らなかった!でもね、ガーネットさん・・・!」
僕は訴えた。
「でも!でも!?でも何なの!なにか言いなさいよ!地球人!」
ガーネットさんは僕を睨んだ。
「・・・少しでも良い・・・。少しでも良いから、地球人は優しい人もいる!みんなとは言わない、それでも・・・。僕は絶対、そんな事はしない!僕は違う・・・!」
僕はガーネットさんの目を見て答えた。
僕はまだまだ無力だ。だけど僕には他に負けない心がある。僕は言い足りない言葉を目で訴えた。
「・・・知ってるわ。ユーコを見て、そう感じた・・・。私達と同じだと・・・。」
ガーネットさんは深呼吸して、
「さぁ、これでおしまい。もうすぐ着くわよ。」
僕はガーネットさんの変わりように驚いて、
「どこにですか?」
間抜けな返事をした。
「ウインドよ。」
窓の外を見ると、綺麗な青空が見えた。
11.[ウインド]
「楽風君!」
艦を出て、待っていたのはユーコだった。
ユーコは僕に向かって走ってきて、
「どう?ウインドは?綺麗な所でしょ?」
僕は周囲を眺めた。
たしかに美しい所だ・・・。とても・・・。優しい気持ちになれる場所だ。
「あぁ。大きな建物ばかりだと思ってたけど、緑溢れるウインドだな。」
僕は今、ウインドにいる。そう実感できた。
「楽風さん。今日の夕方にまた、ここに来て欲しいの。それまでウインドを見物して来て良いわよ。ユーコ、案内よろしくね。」
夕方、ここにまた来て。そう言って、ガーネットさんは去って行った。
「さぁ、私について来なさい。ウインドを案内してあげるわ。」
ユーコの口調は嬉しそうだ。まるで僕が弟だと言うように・・・。
「お願いします。ユーコ。」
僕達はウインドについて、話しながら街へと向かった。
・
「地球人も少ないけど、ここに住んでるんだ・・・。」
ユーコが街の人達に僕を紹介しながら、僕達は歩いている。
「そうよ。ここで暮らしている地球人は、私と同じようにあった人がウインド人に、ウインドへと来なさいと言われてここに住んでいるのよ。」
みんな笑っている。過去に地球人がした事を知ってるのに・・・。
「ウインドのみんなは、分かってくれているもの。地球人は、過去にしでかした人達だけじゃないって。」
・・・僕はウインド人に何かしてあげたい。力になりたい。何か手伝える事はないか・・・。
僕は周りをきょろきょろした。
「楽風君、ちょっと・・・。」
ユーコが照れている。
なぜだろうと僕は、またきょろきょろと周りを見た。
すると街のみんなが僕を見て笑っていた・・・。
「いやー、ウインドはとても綺麗な所ですなー。僕は感動です!みなさん、ありがとうございます!」
・・・僕は不器用だ。それでも、
「だったら俺の家に来い。地球の話を聞かせてくれ。」
「私の家にも来てよ。」
「ウインドの伝統ある料理を食わせてやる。」
みんなが地球人の僕に話してくれる。
暖かい・・・。僕はこんな風に思ったのは、何年以来だろう・・・。
「だーめ!まだ案内する所があるんだから!楽風君もデレデレしない!」
・・・してたかな?
「写真だけ撮ろうぜー!」
ユーコはその言葉に、
「しょーがないわね。」
と言って、僕の腕を取った。
「ユ、ユーコ?僕は1人で歩けるよ!?」
僕がそう言うと、頭を殴られた。
なんで・・・。
周りのみんなが笑っている。
みんな僕達の周りに集まって来た。
「いくよ!」
・・・そして僕はウインドの仲間入りをした。
12.[託された思い]
夕方、ガーネットさんとの待ち合わせ場所に行った。
「終わったら、私がウインドの料理を食べさせてあげる。」
ユーコが自信に満ちた顔で言って、僕達は別れた。
ユーコの料理・・・。うまいのかな?
そんな事を考えてる内に、集合場所に着いた。
ガーネットさんは、まだ来てないようだ。
「・・・今頃、地球軍はどうしているのかな。」
真凛・・・。あいつは捕まっているだろう。今頃、苦しい思いを・・・。
・・・それなのに僕は、楽しい時間を過ごしてた。僕のせいで真凛は・・・!
パンッ!
僕は自分の顔を叩いた。
パンッ!
もう1回叩いた。
「・・・何しているの?」
ガーネットさんは、変な顔で僕を見ていた。
「・・・すみません。地球の事を考えていました。今頃、何をしているのかって。」
僕は正直に言った。
僕は不安だ。おそらく地球軍はウインドに攻めて来るだろう。その事をウインドに伝えないと。僕のせいで・・・。僕のせいで・・・!僕がもっとうまく出来てたなら・・・!
「・・・地球軍はこの星へと向かって来てるわ。あと4日・・・。あと4日でウインドに着く・・・。」
ガーネットさんは静かに告げた。
「僕のせいです・・・。すみません、ガーネットさん。」
僕は頭を下げた。
「それは違うわ、楽風さん。私達がユーコに、地球軍のパワーマシンを奪わしたから・・・。やり方が間違えてた、私達ウインドのせいよ。きっとこれで良いのよ・・・。その事で楽風さんに頼みたいのよ・・・。ウインドと地球が仲良くなる1つの道を・・・。」
ガーネットさんは僕の手を握った。
「すべては最初から仕組まれてたの。」
ガーネットさんは静かに語った。
「ユーコに地球軍に潜入させたのは、私達の期待に応えてくれる人を探し出すため・・・。そして私達は知った。あなたと言う存在を・・・。楽風さん。あなたは立派よ。あなたなら地球を1つにできる・・・!私達は思った。彼なら私達の思い、もう一度地球と暮らそうとする思いが叶うと。私達はバカなのよ・・・。あんな事があったのに、地球と一緒になりたいって・・・。寂しいのよ・・・、私達だけじゃ。」
ガーネットさんは微かに笑った。
「襲われた女性はね、地球人にとても興味があった・・・。地球人は普段、何をして過ごしているのか・・・。その人はね、地球人がパーティーに来てくれる事を、すごく喜んでいたらしいの。私達の作ったパワーマシンを地球の人達にも見せたい・・・、教えたい・・・。乗ってもらいたい・・・。そして一緒に研究していきたい・・・!」
ガーネットさんの目から涙が溢れ出している。
「襲われた後もその女性は、その信念を変える事はなかった。新しく自分の中で目標を立てたわ。何時、私の不幸を救ってくれる地球人が現れるだろうって・・・。来る日も、来る日も待ち続けたわ・・・。そしてその女性は待ちきれず、地球に行くと言ったそうよ。もちろん周りの人は止めたわ。それで女性は1人で部屋に閉じこもるようになった・・・。」
「ふふふっ。」
ガーネットさんは泣きながら笑った。
「その30年後、その女性は大声叫んだわ。」
「地球に何時でも行ける装置を作ったわよ!」
まさか・・・。
「そう!今で言うワープと言う技術を開発したのが、その襲われた女性なの!」
信じられなかった。地球人を憎むはずの女性が、地球人と会うためにワープを完成させたなんて・・・。
「そして、さっそく行って来たなんて言ったらしいのよ。地球人は私の想像通りの人だって。たくさんのお土産を手に持ってね。」
昔話に出てくるワープは実話だったのか・・・。
「そうして、その女性は幸せな人生を送ったわ・・・。過去にあった事は消えないけど、未来は作り変えれる・・・。その女性を見て思ったわ。」
ガーネットさんは一息いれ、
「楽風さん。私達のすべてを地球に教えて。その女性は自分の過去の事は、最後まで地球の人には教えられなかった・・・!あなたが伝えて欲しいの。地球人のあなたに・・・!あなたの思ってる襲われた女性の気持ちを・・・!あなたの強い意志があれば地球は1つになる・・・!いえ、地球とウインドが1つになる!お願い、私達ウインドを開放して欲しいの!」
ガーネットさんは僕を見つめた・・・。
13.[心]
「あなたが伝えて欲しいの・・・!」
ガーネットさんは僕に言った。
僕にできるだろうか・・・。そう思い、自分の中の何かが動いた。
なんだろう・・・。こんな時になぜ僕の心は、笑っているんだ・・・。なぜドキドキしてるんだ・・・。なぜこんなに力が湧いて来るんだ・・・!
「・・・僕は僕の出来ることをやるだけです。」
僕は言った。
「そして・・・地球とウインドを1つにしたい。」
ガーネットさんは僕を見つめている。
「僕はそれが出来ると信じている・・・!」
みんなにウインドを知ってもらいたい。そして地球の事も知って欲しい。ウインドにも負けないくらいの優しさを・・・!
「必ず、ウインドの気持ちを伝えます。」
僕はガーネットさんに手をだした。
任せて下さい・・・!
「・・・すみません、楽風さん・・・。」
ガーネットさんは僕の手を強く握った。
・
「おかえりー、楽風君!」
ユーコは暖かく僕を迎えてくれた。
僕の心は不思議と安らいだ。
「・・・ただいま、ユーコ。」
僕は自然と答えた。
「ふふっ。」
「ははっ。」
お互い照れ隠しで笑った。
「ユーコの自慢の料理は?」
僕はテーブルに案内され、言った。
室内は美味しそうな匂いでいっぱいだった。
「ちょっと待ってて。」
ユーコは台所へと行った。
僕は辺りを見回した。
見たこともない綺麗な花や植物がたくさんあった。その中に地球に咲いている花を見つけた・・・。
「チューリップか・・・。ん?」
その花の下に写真が置いてあった。
すこし面影がある小さい頃のユーコが写っていた。そして・・・。
「ユーコの家族か・・・。」
男性と女性がユーコを真ん中に、笑顔でこっちを見てる・・・。ユーコも・・・。
「おまたせー!」
ユーコは笑顔で僕に料理を持って来てくれた。・・・写真のような顔ではなかった。
ユーコ・・・。
「見た目は合格だな。味の方はどうかな・・・?なにせユーコだからな。」
僕は少しでも、少しでも良いから昔のように笑って欲しいと思い、僕は話し続けた・・・。
今日、ガーネットさんに言われた事は、その時は思い出さなかった。夜が明けるまで僕達は話し続けた。地球の事、ウインドの事、好きな事、嫌いな事・・・。僕は楽しかった。ユーコはどうだったかは僕には分からない。でもユーコはいてくれた・・・。
「それでね、ユーコ・・・。」
僕は言った。
「何?なんなの?早く教えなさいよー!」
ユーコは笑った。
14.[ウインドブレイカー]
「あなたに渡したいものがあるの。きっとこれからの役に立つと思うわ。」
そう言われて、ウインド軍の施設まで連れて行かれた。
さすがウインド軍。周りは訳が分からない機械でいっぱいだった。
「この力さえあれば、地球なんて・・・。」
そう言いかけて止めた。
ウインドのみんなは地球人に、この長い長い関係を絶ってもらいたいと願っている。それは、わがままなんて僕は思わない。そうしてもらわないとウインドは一方的すぎる・・・。地球とウインドを1つにするには、お互いが理解し合わないと。ウインドは準備が出来ている。後は地球だ・・・。僕が地球のみんなに呼びかけないと・・・。
「ふふっ。」
ガーネットさんは突然、笑った。
「どうかされました?」
僕は聞いた。
「楽風さんは優秀なパワーマシンのパイロットなのよね。」
ガーネットさんは僕をジロジロ見た。
「・・・それは周りの意見です。僕はまだまだ優秀じゃありません。」
もっと上にいけるはずだ・・・!
「それでも私達から見たら、優秀よ。」
ガーネットさんは褒めてくれた。
僕が黙っていると、
「この扉の向こうに、あなたの思っている優秀なパイロットになれるカギがあるわ。」
ガーネットさんは僕を見つめた。
「楽風さん、自信をもって。あなたはまだ、自分の中の力に気付いてない!」
バシッ!
背中を叩かれた。
「ガーネットさん・・・。」
「さぁ、入るわよ!」
扉を開けた。そこにはパワーマシンと呼ぶべきか・・・。僕の知っているパワーマシンと比べ、大きさが3倍以上はあるだろうか・・・!
「この機体は・・・!」
僕は驚いて言った。
「あなたの機体、WPM-310、ウインドブレイカーよ。」
僕の機体・・・!
「このウインドブレイカーは他のパワーマシンと違う。操縦はパイロットの心で動かすのよ!」
僕の心で動かす・・・!?
「あなたのもってる心が、この機体を動かすの!あなたの体から溢れてきている心で!・・・楽風さん。あなたならこの機体を最大限に生かせるわ。私達に・・・地球とウインドにあなたの心を見せつけて!」
ドクン。ドクン。ドクン!
僕の中の心が反応している・・・!僕なら乗れる。僕なら飛べる。僕なら出来る!
「必ず、ウインドと地球を1つにします。」
僕は宣言した。
・
ウインドブレイカーの操縦に慣れたのは、地球軍がウインドに来る前日の夕方だった。
「お前さんはすごいな!」
「俺達にはそこまで扱えないぜ!」
「楽風さんは、新しい人種かも知れないわ!」
ウインドの人達が、僕の周りに集まって来た。
「みなさん、必ず、この星の平和な世界を守ります!」
地球軍に攻撃させるものか!
僕が・・・!僕が止める!
僕は興奮していた。
「・・・楽風さん、今までありがとう。今日の夜は、みんなでパーティーをしましょうか。」
ガーネットさんはみんなにも意見を求めた。
「おーーー!」
・・・みなさんはやる気だ。
「ぼくはまだやりたい事が・・・。」
僕は言った。
「ダメよ、ダメ。あなたは頑張りすぎよ。明日が本番なのに、その明日に十分に力を発揮できなかったらどうするの!」
ガーネットさんは僕に、めっ、と言うように言った。
「だからもうちょっと・・・。」
ガーネットさんに睨まれた・・・。
「・・・了解です。楽風直人、これよりパーティに参加します!」
やれやれ、これで良いのかな・・・。
僕は心の中でため息をついた。
15.[前夜]
「楽風君に、乾杯!」
「乾杯!」
そして、パーティーが始まった・・・。
僕はと言うと、
「お姉さん、もう1杯!まだまだいけるぜ!」
「楽風さんはパワーマシンの腕前も強いけど、お酒も強い!お姉さん惚れちゃた!」
「あっはっは!何時でも待ってますよ。僕は我慢も強いんですよ!あっはっは!」
僕はパーティー前の気分とは違い、今は最高の気分だった。
なんでだろう・・・。不思議と心が落ち着く。それに力も湧いてくる・・・!僕は今、不安はない。明日の勝利を確信している・・・!
「うぉーーー!」
僕は吠えた。
「うるさいっ!」
ボフッ!
ユーコに横腹を殴られた。
いつの間にか、僕の隣にはユーコがいた・・・。
気のせいか怒っている・・・?
「どうしたんだい?僕の専属のユーコ?今日は何時にもまして、綺麗・・・。」
ゴンッ!
顔面を殴られた。
今のは痛いよ・・・。
不覚にも涙がでてしまった。
「ユーコちゃん、楽風を泣かすなよ!」
「わたしの楽風さんをいじめないでよ!」
パーティーは盛り上がった・・・。
・
飲み過ぎたかな・・・。
僕は1人、パーティーを抜け出した。
・・・ふぅ。
夜風が気持ちが良い。夜空も綺麗だ。明日は・・・。
僕は歩き出した。向かう所は1つ・・・。
・
「それにしても、大きいな・・・!」
ウインドブレイカーの前で、僕は笑った。
「・・・僕が地球軍を止めて見せる。」
そして黙った。
急に不安を感じた。さっきまではあんなに強気だったのに・・・。周りは僕以外、誰もいなかった。ここではパーティーの騒ぎ声も聞こえない。僕は怖くなった。ウインドのみんなは、僕を騙しているのだろうか・・・。なんで僕に気付いてくれないんだ・・・!寂しい・・・。孤独だ・・・。明日の戦いなんてどうでも良い・・・。僕には赤坂さんがいてくれたら・・・、綾さんがいてくれたら・・・、真凛が・・・。
カラン。
何か音がした。僕は振り返り、
「真凛!?真凛だろ!?」
僕は音がした方へと走った。
そこには誰もいなかった。それでも僕は走った。
「真凛ー!いるんだろう!?」
毎日、僕にいたずらをし、毎日、一緒にご飯を食べ、毎日、僕に接してくれた・・・・。離れてみて分かった。僕は真凛が・・・!
「・・・真凛。返事をしてくれ・・・!」
僕は星空の下で泣いた。
16.[思いを両手に]
「起きろー!」
地球軍がウインドに到着する日の早朝、ユーコは僕の部屋に来た。
「・・・今何時だと思ってるんだ。」
時計を見て僕は言った。それでもユーコが睨んだんで、僕はしぶしぶ起きて着替える事にした・・・。
昨日の夜1人泣いた後、パーティーに戻った。僕が急にいなくなってみんな心配していた。飲みすぎたんだと言ったら、当たり前よ、と頭をユーコに叩かれた。そしてみんなが僕にプレゼントをくれた・・・。
「明日は頼むぜ!」
「期待しているからな!」
「楽風君、私達がいるから・・・、頑張って!」
たくさんの思いを手に、僕は感謝した。
「ありがとう・・・、皆さん。」
僕は心が温まって眠りについた・・・。
「ユーコ、昨日は心配かけたな。僕はもう大丈夫だ。」
2人、コーヒーを飲みながら僕はユーコにガッツポーズをした。
「・・・頼りにしてるわ。」
ユーコは僕を見て言った。やはり心配なのだろう。今日で地球とウインドの関係がはっきりするのだから・・・。
「あなたに渡したいものがあるの。私の家に一緒に来て欲しい・・・。」
僕は頷いた。
・
外は寒かった。僕達はユーコの家まで静かに歩いた。
・
家の中に入りユーコは、
「楽風君は寂しくない?ウインドに来て1人、周りは知らない人ばかりで・・・。」
僕を見ずに言った
「・・・たしかにそう思う時があったよ。でも、みんなに会えば寂しくなんてなかった。」
僕はユーコと同じ方向を見た。
「私もそう。みんなに会えば寂しくなくなる。私はここで生きていける・・・。けどあなたは?楽風君はどうするの・・・?ここを出て行くの?」
ユーコは震えている・・・。
「・・・僕は地球軍だ。僕にはまだ、やりたい事がある。それが終わったらユーコに会いに戻るよ。ウインドへ。」
ユーコが僕を見つめた。
「・・・楽風君。今、真凛ちゃんの事考えてたでしょ。」
・・・知っているのか。
「あんなにベタベタと楽風君について来る女の子がいたらね・・・。あなたは優しいから・・・。」
ユーコは笑った。
「真凛は僕を助けてくれた、大切な仲間だ。そして、僕に必要な人だ。」
いつも笑顔の真凛。僕は君を・・・。
ユーコは僕の言葉に、
「・・・そうよね。」
と、言い、
「楽風君にお守りをあげるね。」
ユーコは家族の写真の前まで行き、手を合わせ、目を閉じた。たくさんの花の前、ユーコの後姿は美しかった。
そして1つの花を手に取った。紫色の花だった。
「チューリップ・・・。あなたにあげるわ。・・・無事に帰って来て。」
僕は受け取った。
「たしかに受け取ったよ・・・、ユーコ。」
僕とユーコは見つめ合った。
ウゥーーー!ウゥーーー!ウゥーーー!
「地球軍、接近。地球軍、接近。直ちに準備して下さい。楽風君、本部まで来てちょうだい!」
街全体を警報が鳴り響く。
「・・・行って来るよ、ユーコ。」
僕はユーコに背を向けた。
「エースパイロットさん!」
ユーコが叫んだ。
僕は振り返った。
そこには僕を尊敬する女の子が笑っていた。
17.[この力ある限り]
「いよいよ来たわね。」
モニターに映る地球軍の艦、約100艦。僕達はその数の多さに圧倒された。
「マジかよ・・・。」
「なにもここまで・・・。」
それでもガーネットさんは元気よく言った。
「大丈夫よ。私達には楽風君がいる。私達の思いを理解してくれている、希望の地球人よ。彼にならこの状況を1つにしてくれる。」
ガーネットさん・・・。
「大丈夫です!皆さんはここで待機して下さい。ここからは僕の仕事です。やらせて下さい!僕が行って話しをして来ます。」
僕はみんなを安心させるため、
「皆さんはパーティーの準備をしてて下さい。きっと地球軍は長旅で疲れています。盛大にやりましょう!」
僕は笑って見せた。自身の不安を隠して・・・。
でも僕には、次の瞬間にその不安が消えると分かっていた。
「・・・そうだよな!俺達は地球人を歓迎しないと!」
「地球人が来て何ももてなしがなかったら、大変だわ!」
みんなが騒ぎ出した。
「ふふっ。」
僕は笑った。今、みんなに力をもらった。この先に一番必要な力を。
不安は消えた。後は、
「うぉーーー!」
僕は吠えた。この力を体中に蓄えた。この先に消える事のないように。
「うぉーーー!」
1人が僕と同じように吠えた出した。すると、
「うぉーーー!!!」
みんなが吠え出した。
力が・・・!この力で・・・!
「行って来ます!」
僕は走った。ウインドブレイカーの所へ。
「頼んだぞ!」
「頼むわよ!」
僕は振り返り、親指を立てた。
・
僕はウインドブレイカーに乗り込んだ。
「楽風さん、到着。ウインドブレイカーの起動を確認しました。楽風さん、準備は良いですか?」
まだ幼さが残る、可愛らしい女性が言った。
「あぁ、オッケーだ。カウントを開始してくれ。」
僕はその女性に、モニターに通して笑顔を向けた。
「・・・了解しました。」
女性は顔を赤くして言った。
ふむ、覚えておこう。
「カウント開始します。・・・3、2、1、どうぞ!」
「出るぞ!」
僕はウインドブレイカーとチューリップと共に、地球軍のいる宇宙へと飛び立った。
18.[男の戦い]
「くそ・・・、なんて数だ。」
モニターで見るのと違い、これはウインドは囲まれている・・・。
僕は距離をとり、地球軍に呼びかけた。
「地球軍に告げます!ウインドは地球と争うつもりはありません!地球軍の皆さん、どうか攻撃をしないで下さい!僕は地球軍所属、E13隊の楽風直人です!」
・・・沈黙。
そして地球軍の戦艦から1機出てきた。こっちに向かって来る。
あれは・・・!
「アサルトアース・・・!赤坂さんか・・・。」
赤坂さん・・・。まさか戦う事にはならないですよね・・・。
アサルトアースが近づいて来る・・・。近づいて・・・!
「楽風ーーー!」
ビームソードを手に持ち、アサルトアースは僕を斬りつけに来た。
「何故ですか!赤坂さん!」
僕はウインドブレイカーの腰にあるビームソードを抜いた。
お互いが睨み合うように、僕と赤坂さんはぶつかり合った。
「お前は俺の言うとおりにすれば良いんだよ!」
「そんな人形みたいに!」
僕はアサルトアースを弾き飛ばした。
「くっくっくっ。おもしろいじゃないか。その機体!」
「ウインドの力ですよ。・・・分からないですか、赤坂さん。地球軍がいくら数が多くても、ウインドは勝てるんですよ!」
僕はアサルトアースに体当たりした。
「・・・お前を処罰しなければならない。真凛と一緒にな!」
赤坂さんは怒りに震えた声で言った。
なんだって・・・!?
アサルトアースは右横を向いた。僕もそこを見た。そこには光が点滅している小型艦が見えた。
「あそこに真凛がいる。あのバカは罪人者を逃がした罪で宇宙漂流の刑だ。」
赤坂さんは笑った。
「そしてここは戦場!」
アサルトアースは真凛が乗っている小型艦に狙いを定めた。
「止めろーーー!」
真凛!僕はまだはっきりお礼もしてない。まだ話したい事がある!僕の気持ちを知って欲しい!僕は真凛を失いたくない!
「さよならだ、真凛。」
ドキューン!
アサルトアースのビーム砲が小型艦へと放たれた。
その時、僕の中の何かが動いた。そしてウインドブレイカーがそれに反応した。
MAX EXTENSION
「真凛ーーー!」
僕は真凛の乗っている小型艦を後ろに、ビームを体で受け止めた。
「な・・・!何故、間に合う・・・!俺はたしかに・・・!」
赤坂さんは戸惑った。
「真凛!大丈夫か!?」
僕は小型艦を見た。そして窓から真凛が何か喋っている・・・。
ばーか。
僕は言い返そうとしたが、真凛が泣いていた。僕は、
「終わったら真凛のためだけに、僕の手作り料理、オムライスを作ってやる!真凛!2人で一緒に食べよう!そして・・・!」
僕は深呼吸して、
「一緒に、幸せになろう!」
真凛は泣きながら、何度も何度も頷いた。
ありがとう。
そう聞こえたような気がした。
そして怒りを覚えた。僕は後ろを振り返り、僕の倒すべき人を睨んだ。
「赤坂さん・・・!」
SUPER MAX EXTENSION
ウインドブレイカーから、緑色の粒子が溢れ出して来た。
「な・・・なんだ、これは!?この気分の悪い気持ちはなんだ!?」
やがてそれは、宇宙全体に広がった。
「お前は今までなんのために生きてきたんだーーー!」
僕はアサルトアースに体当たりした。
「お前は今までなんのために勉強したんだーーー!」
僕はアサルトアースを突き上げた。
「お前はなんのために地球軍に入ったんだーーー!」
僕はアサルトアースを叩き下ろした。
「お前は・・・なんのために・・・僕を・・・!」
僕の心に反応しウインドブレイカーは口を開いた。
「育てたんだーーー!」
ウインドブレイカーの口からビームが発射された。
「楽風・・・。」
赤坂さんが何か言った。
そして、アサルトアースに命中し、爆発した・・・。
最終話.[集結の園へ]
2週間後。
「楽風君!こっち手伝ってよ!」
ウインドのみんなが僕を呼んでいる。
「ゴメン!僕はパーティーで言うスピーチを練習してるんだ。だから・・・。」
あの戦いの後、地球軍はウインドと話し合いがしたいと言ってきた。そして1週間後、会いたいと言った。ウインドはそれを快く了承した。僕らはその当日まで、歓迎の準備をしていた・・・。
「ほらここ、やっぱり変よ。」
隣には真凛がいる。赤坂さんを・・・、あの戦いが終わったらすぐ真凛のいる小型艦に行き、真凛を助け出した。僕と真凛は地球に帰らず、ここにいる。
「なにを言っているだ。この言葉がなきゃ前に進めないだろ!?」
「あんたの気持ちなんかどーでも良いの!このパーティーは地球とウインドが友好関係を結ぶためなのに、なんであんたが出てくるのよ!」
真凛・・・。あの時の涙はなんだったの・・・。ちょっとぐらい僕を、この記念すべきパーティーで注目を浴びたって良いじゃないか。そして終わったら・・・。
「真凛、僕は君のなんなの?」
僕は真凛を見つめた。
「・・・犬。」
・・・僕と真凛の関係は、犬と人間だった。
「楽風君!ちょっと味見して。みんな喜んでくれるかな?」
ユーコが僕にパーティーに出す料理を持って来た。
「おっ。良いに匂いじゃないか。どれどれ。」
僕はユーコの料理を手を伸ばした。
シュッ。
・・・僕より先に真凛が手を伸ばし、料理を食べた。
「美味しい。合格。もう帰って良いわ。」
・・・真凛。お前って言う奴は。
「・・・楽風君。私があげた紫色のチューリップ、大事にしてくれている?」
ユーコは笑った・・・。
「あはは・・・。」
僕は笑って誤魔化した。
「あっ、もうこんな時間だ!早くお迎えしなくちゃ!」
僕は時計を見た。今日はちゃんとしている。・・・僕の好きな女の子からプレゼントされた物だ。
「楽風君!地球の皆さんが着たわよ!」
ガーネットさんは嬉しそうに叫んだ。
僕達は空を見上げた。青空の下、地球軍の艦が見えた。
「みんなーーー!行くわよ!」
ガーネットさんが言い、
ボーーーーン!
花火が一斉に打ち上げられた。
みんな歓声をあげた。
僕は花火を見て、アサルトアースの爆発した瞬間を思い出した・・・。
赤坂さん・・・。
ふと、赤坂さんが最後に言った言葉を思い出した。
「楽風・・・、お前が羨ましいよ。」
周りが嬉しそうにしている中、僕は泣いていた。
「何泣いているのよ!」
バン!
真凛に背中を叩かれた。僕は何も言えなかった。ただ泣いていた。
「私がついているから安心しなさい!この先、悲しむ事なんてないわ。」
真凛は赤い顔して言った。
僕は一生、赤坂さんを忘れないだろう。それでも僕は・・・。
僕は真凛と手をつないだ。2人の気持ちが1つになるために。
「おかえりーーー!」
・・・赤坂さんが笑った気がした。
その日、地球とウインドが平和を誓い合った。
最後まで読んで頂きありがとうございます。レッツエンジョイ。