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約束  作者: りっこ
終章 
98/111

始まりの時

「茜ー!あんまり遠くに行っちゃだめよー?」







『とおりゃんせとおりゃんせ…』


ここはどこ?私…いつも通る道を通ってきたはずなのに…。


『ここはどこの細道じゃ…』


昼と夜とじゃこんなに変わるの?あれ…道、間違えたのかな?…ううん、そんなはずはない。だってわかる。この先にあなたはいる。


『天神様の細道じゃ…』


怖い…何も見えないよ…。だけど、きっとこの先にいる人はいつもと同じように笑ってくれる。暗くて怖くても、その人に会えば…。きっといつものように笑ってくれるから…その顔が見られたらそれでいいんだ。怖くても…進むよ。


『ちっととおしてくだしゃんせ』


ほら、私の足、動くよ?怖くたって平気だよ?一緒に遊ぼうよ。


『ご用のない者とおしゃせぬ』


どうしてこんな夜に目が覚めたんだろ?どうしてあなたに会いに行かなきゃって思ったんだろ?


『このこの七つのお祝いに』


…きっとあなたが呼んだのね?寂しくって、お昼だけじゃ足りないよって思ったのね?


『お札を納めにまいります』


いいよ。会いに行ってあげる。だって私…


『行きはよいよい 帰りはこわい』


あなたに会うの嫌いじゃないよ。なんだか寂しそうに見える笑顔だって、大好き。でも…


『こわいながらもとおりゃんせ とおりゃんせ』


寂しいとかじゃなくって、本当に笑ったあなたの笑顔が


見てみたいな…








―――――

―――




「茜ー!あんまり遠くに行っちゃだめよー?」


「わかってるよー!」


おばあちゃんのお具合がよくないみたい。それでお母さんは私を連れておばあちゃんの家に帰ってきた。冬休みの間だけって、そう言ってた。


私は楽しかった。


こんなに雪が積もったところ、初めて見た!


積もった雪でかまくら作るんだ!そしたら皆に自慢してやるんだ!!


でも、人が住んでるところの雪は、雪かきで一ヵ所にまとめられて固められていたり、人に踏まれてぐしゃぐしゃだったり…私は真っ白なふわふわの雪で真っ白なかまくらを作ってみたいのに。


だからお庭に出るフリをしてこっそり抜け出した。おばあちゃんのお家はすごく広いから、すぐにばれたりすることはないと思う。


「…ふふふ。」


早く綺麗な白い世界をこの目に見たくて、わくわくする。誰にも汚されてない、まっさらな世界。その中に自分のお城を作るんだ。


「うきゃっ!?」


長靴が雪に埋まる。ここから先は誰の足跡もない白銀の世界。


わくわく、どきどき


にんまり


私は、私だけの世界を手にするんだ。誰の手も入ってない、そんな世界に足を踏み入れるんだ。私だけ…自然の中に、私だけがいる世界。





好奇心しかなかった。


戻って来れないかもしれない。


そんなことは頭の隅にも浮かばない。


とにかく、目の前にある未知の世界に飛び込むこと、それが最優先すべきことだった。





そうして私の冒険は始まった。この時まで、自分に特別な力があるなんて感じたことすらなかった。



だけど、私は…特別だったんだ。

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