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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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茜の行動

「…っ違う!私は…助けてもらうことが当たり前なんて思ってない!私は…私は守りたいんだ…。仲間を…ユウマだって!!」







私はやれる。私ならきっと…。核心なんて何もない。出来る…と信じる自分の中に、根拠なんか何もない。それでも。


それでも私は皆のために…ううん、自分のためにやるんだ。


決意をしたあの夜、私は別荘を抜け出した。皆が修行で疲れていることをいいことに。誰にも知られずにひっそりと…。






密林と言っていい程の木々やら沼やら…つーかここは熱帯雨林か!?と、つっこめるような足場の悪いところをひたすら進んだ。何度も水に足を突っ込み、服はびしょ濡れ、泥だらけ。それでも進む。力を使ってしまってはまた誰かに気付かれてしまうから。私は私の力だけで遙に真実を聞きに行かなければならない。


「ひゃっ!!」


何度目だろう。想像し得る何倍もの濃度の泥、それに足をとられる。底無し沼…前は玉木が助けてくれたっけ…。


「…っ!!違う!私は…私一人で真実を突き止めなきゃいけないんだから…何が皆を巻き込んでいるのか…私のせいなのか…」


冷静に考えれば、例え私が元凶で皆を巻き込もうが、ユウマが元凶で皆を巻き込んでいようが関係なかったのだとわかったはずだ。巻き込んでしまったことは仕方がない。それを皆が手伝ってくれると…そう意志を固めてくれているのなら、私だって腹をくくって皆を守ることに専念しなきゃいけない。人の意志は…簡単に変えられないものだって知ってる。


だけど、私は冷静ではいられなかった。遙の突然の奇行。そして彼のほのめかした真実のような…不確かなもの。


もう仲間が傷つくのは見たくなかった。それが自分を原因とするものなら尚更…。


何よりも…私自身が元凶で誰かを危険に晒すということに我慢ならなかった。例えば、ユウマに頼られたのがともちんとする。それなら私は何が何でもともちんを手伝う。彼女が苦しむことのないよう。彼女の重荷を少しでも軽減できるように。役に立ちたいと…心の底からそう思う。ともちんじゃなくてもそう。玉木でも。龍太でも。雅史でも。悠斗でも。遙でも。


大切な人のためなら、私はいくらだって頑張れるよ…。


だからこそ…


だからこそ、私のために傷ついて欲しくないという想いはある。矛盾してるかもしれない。でも…それでも、私は、誰も傷つかないで欲しい。


だから


真実が見えている…多分、見えている遙の返答次第で動こう。そう思って今、ここに立っている。


「…どうやって海、渡ろう…?」


力を使えばわけない水平線。でも…人間にはきつい水平線。


「…ここまで来て…ちょ、船とかないの!?」


一大決心をした後の考えもしない行き詰まりに焦る。こんなはずでは…。


「ユウマ…はだめだ。結局力使ったことになる挙句、返事ひとつしやしねえ…。」


じゃあ誰を頼れば…あ、私…また誰かを頼ってる…。


「…っ違う!私は…助けてもらうことが当たり前なんて思ってない!私は…私は守りたいんだ…。仲間を…ユウマだって!!」


助けて


そう言えば誰かが助けてくれた。


そんな自分は…


――――――もう、いや。


ヒュウウウウウウウウウウ!!!!!


突如、海風が私に吹き荒れた。潮を含んだ風が私の髪を右往左往にねじり上げる。


バサバサバサ…


容赦なく吹き荒れる風に思わず顔をしかめる。


『急に…何!?』


そう思わずにはいられない…急な海の荒れに焦る。


「う…何、この風…台風…?」


これ以上は進めない。あまりの風の強さに、遙に会いに行くことを断念せざるを得ない気になりかけた。


『…弱気になってちゃだめ!!いざという時には力を使ったって構わない。誰かが駆けつける前に終わらせればいいだけ。…私には、今、知る権利がある。遙の突き詰めた真相を、知る権利が…』


だから引かない。


遙…きっと、あなたが一番私に近い。私を…私とユウマのことをよく知っているんだと思う。だから…私は、あなたを諦めない!!

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