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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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茜の決意。

「…今はそっとしておくしかないわね。」







体が重い。動かない。…動けない…。


遙…お願い、無事でいて…。



―――――――――

―――――――

―――――



「…茜ちゃん、今日も…?」


龍太が心配そうに私の顔色を窺う。口にせずとも皆茜のことを心配しているのがわかる。


遙とのことがあってから二日、茜は自室に閉じこもったきり出て来ようとはしない。

毎回食事を運んでも、ほとんど手をつけずに部屋の外に置いてある。今は…私達にはどうすることもできないのかもしれない。


私達にはやることがある。遙が言った言葉。私達の力は確かに遙ほどに成長してはいない。遙のことは心配だ。茜のことだって。だからって修行をしないわけにはいかない。自分の力を高めなくちゃ…。


「…今はそっとしておくしかないわね。」


「うん…。」


「俺らは黙ってやるべきことをやろうぜ。」


「異議なし。」


「…だな。」


各々いつも通り屋敷を出て行く。ふと振り返ると、玉木が階段の奥を見つめていた。その先には茜の部屋がある。


きっと聞きたいはず。茜のことを想っている玉木は気になって仕方がないと思う。あの時二人の間に何があったのか。それでも黙っていてくれるのは、玉木のいいところだ。愛情深い人だと素直に思う。…その分玉木自身辛いだろうけれど。


「玉木。」


私が声をかけると玉木はまとっていた雰囲気をがらっと変えた。一人の男のそれだったのが、仲間としての玉木のものへと早変わりした。


「ああ、ごめん。行くよ。」


そう言って笑った顔があまりにも普段通りだったので、他人事ながら胸の奥がチクンと痛んだ。


茜…私達は信じてるから。二人に何があったかわからないけど、ちゃんと乗り越えられるって信じてるからね。



――――――――

――――――

――――




動けない。動けないよ…。私自身に問題があったの?ユウマが私を選んだのは、偶然じゃなくて必然…?皆が危険に晒されるのは私に原因があるの…?


嫌だよ…そんなの嫌。自分のせいで誰かが傷つくなんて…嫌だ。


「ねえ…ユウマ、応えてよ…教えてよ。なんで何も言ってくれないの?」


あれからずっとユウマに話しかけてる。それなのに一度も応えてくれない。


誰のせいでこんなことに…!!…って、そもそも私のせいなのかもしれないんだった…。


あ…だめだ。私、このままじゃなだめになる。何もわからない。誰も教えてくれない。罪悪感が心を重くする。このままじゃ私…



『ユウマが先輩を選んだ理由』


遙…そうだ。わからないなら聞けばいい。遙にはそれがなんだかわかったんだ。遙に聞きに行こう。それで…本当に私自身が事の発端だとしたら…その時は皆と別れよう。私に問題があるのなら、私が解決しなくちゃ。そんな個人的なことで皆を危険に晒すなんてできない。そんな無責任な奴にはなりたくない。皆を守れる自分でありたいから…。


誰にも見つからないように、遙と話をしよう。


遙の答え次第では、そのまま一人で行く。だから…誰にも見つかっちゃいけない。誰にも…。

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