茜の決意。
「…今はそっとしておくしかないわね。」
体が重い。動かない。…動けない…。
遙…お願い、無事でいて…。
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「…茜ちゃん、今日も…?」
龍太が心配そうに私の顔色を窺う。口にせずとも皆茜のことを心配しているのがわかる。
遙とのことがあってから二日、茜は自室に閉じこもったきり出て来ようとはしない。
毎回食事を運んでも、ほとんど手をつけずに部屋の外に置いてある。今は…私達にはどうすることもできないのかもしれない。
私達にはやることがある。遙が言った言葉。私達の力は確かに遙ほどに成長してはいない。遙のことは心配だ。茜のことだって。だからって修行をしないわけにはいかない。自分の力を高めなくちゃ…。
「…今はそっとしておくしかないわね。」
「うん…。」
「俺らは黙ってやるべきことをやろうぜ。」
「異議なし。」
「…だな。」
各々いつも通り屋敷を出て行く。ふと振り返ると、玉木が階段の奥を見つめていた。その先には茜の部屋がある。
きっと聞きたいはず。茜のことを想っている玉木は気になって仕方がないと思う。あの時二人の間に何があったのか。それでも黙っていてくれるのは、玉木のいいところだ。愛情深い人だと素直に思う。…その分玉木自身辛いだろうけれど。
「玉木。」
私が声をかけると玉木はまとっていた雰囲気をがらっと変えた。一人の男のそれだったのが、仲間としての玉木のものへと早変わりした。
「ああ、ごめん。行くよ。」
そう言って笑った顔があまりにも普段通りだったので、他人事ながら胸の奥がチクンと痛んだ。
茜…私達は信じてるから。二人に何があったかわからないけど、ちゃんと乗り越えられるって信じてるからね。
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動けない。動けないよ…。私自身に問題があったの?ユウマが私を選んだのは、偶然じゃなくて必然…?皆が危険に晒されるのは私に原因があるの…?
嫌だよ…そんなの嫌。自分のせいで誰かが傷つくなんて…嫌だ。
「ねえ…ユウマ、応えてよ…教えてよ。なんで何も言ってくれないの?」
あれからずっとユウマに話しかけてる。それなのに一度も応えてくれない。
誰のせいでこんなことに…!!…って、そもそも私のせいなのかもしれないんだった…。
あ…だめだ。私、このままじゃなだめになる。何もわからない。誰も教えてくれない。罪悪感が心を重くする。このままじゃ私…
『ユウマが先輩を選んだ理由』
遙…そうだ。わからないなら聞けばいい。遙にはそれがなんだかわかったんだ。遙に聞きに行こう。それで…本当に私自身が事の発端だとしたら…その時は皆と別れよう。私に問題があるのなら、私が解決しなくちゃ。そんな個人的なことで皆を危険に晒すなんてできない。そんな無責任な奴にはなりたくない。皆を守れる自分でありたいから…。
誰にも見つからないように、遙と話をしよう。
遙の答え次第では、そのまま一人で行く。だから…誰にも見つかっちゃいけない。誰にも…。