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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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茜の覚悟…

「俺先に離脱するけど。でも皆より先に進んでるから。早く追いついてくださいよ。」









私は遙を殺した…そう思っていた。


だけど遙は意識を取り戻した。龍太が呼んだ救護班の手により、遙の治療は行われた。その結果、遙は死ぬことなく今もなお寝息を立てていることができる。


「…よかった…」


死んだと思った。死んでしまったと。


ともちんはずっと私の手を握ってくれていた。心配することはないよ、遙はきっと大丈夫。口にはしないものの、ともちんの温かい手は、そう言っていた気がする。


遙が無人アトラクション島から医療技術の整った本土へ移送されたのは、割とすぐのことだった。


それだけ龍太のスタッフが優秀なこと、それから遙の傷が重傷だったということ…それを物語った対応だったと思う。


私達も遙に付き添い、島を離れようとした。それを制したのは遙だ。


「俺先に離脱するけど。でも皆より先に進んでるから。早く追いついてくださいよ。」


それが遙が遺した言葉。それを言い終えた瞬間、遙は再び意識を手放した。そのまま救急車両に連れられていく。それを見送ることしかできなかった。


「…茜…」


ともちんが私を気遣ってくれるのはわかる。だけどうまく顔を作れなくて…。その日はそのまま自分のあてがわれた部屋へ戻ると、すぐに眠りについた。何も考えたくなくて…半ば無理矢理自己暗示をかけるようにして、深い眠りについた。



遙はなんて言った?ああ…だめだ。思い出せない。…私は…今の私は知っちゃだめなのかもしれない…全身で拒否してる。何故拒否するのか?それが私とユウマを繋ぐ確固たるものかもしれない。それを何故拒否するのか…考えたくない。人一人犠牲にしておいて。


…違う。人一人じゃない。私は…私たちはもっと犠牲にしてきている。皆の好意に甘えて見ないようにしていただけ。でも確実に犠牲にしてきたものがある。これを何と呼べばいいのだろう?ユウマと私の関係がはっきりしない中で。なんと表現すべきなんだろう?


遙の怪我は私に深い影を落とした。全ての始まりは私なんだと。わかっちゃいたけど、そのことで仲間に深い傷を負わせる覚悟はなかった。



私は…私は再び迷うことになる。ユウマを殺すために大切な人達を危険な目に遭わせる可能性があること。その覚悟を持てずに…ただ大事な人たちに甘える日々を過ごす罪悪感に、耐えられなくなっていた…。

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