冷静な判断=ともちん
「茜!?」
私は遙を殺してしまったんだ……。
生気の感じられない遙の顔をじっと見つめる。人を殺すということは、こういうこと。その人の命を奪うということ。その人が生きた時間を止めること。流れるはずだった時間を、出会うはずだった人を、全て奪うこと。
この手で。遙の命を。奪った。…私が?
「…嫌だ。遙…嫌だよ。」
もう遙と話せないの?もう遙って呼んでも、私を見てくれないの?もう…一緒に笑うこと、できないの?
ぎゅ…と遙の襟首を掴みあげる。
そんなのは許さない。私まだ、謝ってもらってないんだから!!
「バカ遙!!あんなことしといて一人さよならとか絶対許さない!した理由も聞いてない!謝罪も聞いてない!!このまま一人で行かせてなんかやんない…!!」
顔面蒼白の男の襟首を掴んだまま揺さぶる…なんて、非人道的なこと普段はしない。…と、思う。でも今は何が何でも私の声を遙に届けたかったから。絶対このまま行かせたくなかったから。
「茜!?」
ふいに声がした。振り返るとそこには…皆の姿があった。
「とも…助けてっ!!遙が!!遙を助けて!!」
「遙?…っ龍太窓壊して!雅史、風!!ついでに玉木!!」
空に浮かんだままの観覧車。それなのに皆が窓の外に集結している。よく見たら風の力で浮かんでいるようだった。
ともちんの一声で皆動いた。
龍太の土が地から私達が乗る観覧車目がけて隆起し、窓を打ち破る。その破片が飛び散らないように風で威力を止める雅史。もしもの時のために私と遙に結界を施してくれる玉木。
「派手にやったな~。肋骨折れてる、これ。」
…冷静に遙を診る悠斗。(なんでわかるんだろ、そんなこと…)
「雅史、風で遙揺らさないように別荘に運んで。玉木、あんた仮にも防御系なら治療系もできなさいよね。茜、あんたも早くこっちに来な。とりあえず皆別荘戻るわよ。」
「んな無茶な…。」
無理難題を申し付けられた玉木がぼやいたが、目は真剣だった。
「とりあえず応急処置だけしとこっか。あとは医療班呼ぶよ。」
「おー、多分俺できるわ。翔しっかり手伝えよ?」
「勿論!」
「お前ら邪魔だ。そこにいたら通路が塞がる。」
ともちんが的確な指示を出してくれる。
皆それに従い、別荘へと戻る。
誰も…誰も何も聞かないでくれた。
なんで遙と私が一緒だったのか。なんで観覧車の中でこんなことになったのか。正直ありがたい。今聞かれてもきっとうまく答えられない。
今は遙の無事だけを祈っていたい。
…遙…!!