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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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観覧車の中

「ユウマが先輩を選んだ理由。」








ぐらぐらと揺れる。観覧車。ぐらぐらと揺れる。頭の中。どうしてこんなことになったんだろう。


遙の腕の力は一向に緩む気配を見せない。


「やめ…っふ…」


私の抵抗なんか無意味だってわかってる。力で敵うわけがない。それでも抵抗せずにはいられない。抵抗を止めたら、受け入れたことになるから。


「ちょ…いい加減にしてよ!!」


遙の唇が離れる。やっとまともに言葉を発することができた。精一杯の虚勢で遙を睨みつける。


「嫌だ。やめない。」


「何バカなこと言って…っんん!!」


何度も何度も奪われる。獣が獲物を食べるように。


「抵抗していいよ。でも力、出ないでしょ?」


「はぁ…はぁ…ふっざけんな!!あんたなんか一捻りで…」


「ユウマの力は取り憑かれてもいない人間には使えないよ。だから先輩は先輩として俺に抵抗するしかないんだ。…無力だよね。」


遙が笑う。…違う。笑ってない。顔が歪んだだけ。遙の笑顔はこんなんじゃない。


誰これ?


こんな人知らない。


遙は一体どこに行ったの?


「諦めて全部俺に任せなよ。大丈夫。ちゃんと愛してあげるから…」


遙の唇が再び私を喰らう。そして私の動きを封じ込めていた手が私の体をなぞり始めた。


…嫌。


……嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!!!


「っ嫌ーーーーー!!!」


それは一瞬のことだった。体の奥の奥の…ずっと奥にある小さな扉が開いた気がした。今まで鍵がかかっていて、存在さえ知られていなかった扉。その扉が開くと、その中から今まで感じたことのない力が溢れだした。


「!?」


ガシャーーーーンッガタガタ!!!!


遙の体が吹っ飛び、観覧車の窓の部分に思いっきり体を打ち付けた。その音に我に返る。私…何して…?


「遙っ!!大丈夫!?」


「カハッ…ゲホ…て、手加減してよね…。」


ぐったりした遙の側に寄る。窓にはヒビが…もしかしてすごい怪我なのかもしれない…と思ったけど、意外と平気そうだった。その様子に安堵する。


「ごめ…いや、あんたが変なことするからでしょ!!自業自得だっての!!」


遙の頭を小突く。と言っても本気で叩いたわけじゃない。遙にされたことは許せないけど、私のせいで起き上がれない遙に追い打ちをかけることはできない。


「ふっ、言い返せないや。でも…これではっきりした。」


「は?何が?」


「ユウマが先輩を選んだ理由。」


「…は?」


遙が真剣な目で私を見てくる。ユウマが私を選んだ理由って…たまたまそこに私がいたからじゃないの?


「どういうこと?…ねえ、遙。……遙?」


遙の瞼は閉じたまま、ぴくりとも動かない。


「…遙、冗談やめてよ。さすがの私も怒るよ?」


反応は…ない。赤、青、ピンク、黄色、緑。人工的な光が遙の顔を照らす。顔色なんてわからない。わからないはずなのに、遙の顔から血の気が失せていくのが見えた。


「遙…遙!!」




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