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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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葛藤、のち、結果

『「私」にできるだろうか?』








…私、確かに先生に恵まれていました。


雅史、ともちん、悠斗…皆さん、学校の先生よりも「先生」でした。



『お前…小学生からやり直せ。いや、生まれてきた瞬間に戻った方が身のためだ。一から人生をやり直すがいい。それが世の中のためにもなる。』


『…今の話聞いてた?聞いてたらこんな解答にならないはずよね?茜…バカとは思ってたけどここまでだったとは…。はい、やり直し。…ふふふ、腕が鳴るわ!!今日は帰さないわよ!!』


『うっそ?マジ?茜これもわかんないか~…じゃあこれは?……わお、マジか…。俺基本的に女の子には優しくがモットーだったけど、それ返上☆…覚悟してもらおうか♡』


…罵詈雑言、こんなもんじゃありません。(←大したこと言われてないけど、雅史に教えてもらった難しい言葉をどうしても使いたかったので)



そんなわけで、私の一夜漬けならぬ三日漬けの日々は無事終わり(満身創痍ですよ!…これも雅史に教えてもらったのであります)…いよいよ追試を迎えることとなったのです。


「それじゃあ始め~。」


モッチーの気のない合図で始まった追試。今こそ地獄の三日間の成果を見せる時!!


……………

………


「どぅふ~~~………」


なんとか終わった…。ほとんど付け焼刃でしたけど、いつもよりかはかなり手ごたえある気がする。あとは採点を待つのみ。


「ちょっと待っててね~。採点してくるから。」


「え?そんなすぐ追試の結果って教えてもらえるんですか?」


「だって追試一人だけだったもの~。すぐ採点できるし、補習の有無、私も早く知りたいしね~。すぐ終わるから。じゃああとでね~。」


…ということで、一人教室でモッチーの帰りを待つ。誰もいない教室で何をしていようか…。暇だ。暇過ぎる…。


特にやるべきことが思いつかなかったので、一人ボーッとすることにした。勉強勉強勉強でこういう何もしない時間ってとれなかったし、久しぶりに微睡んでみるか。


と思ったのに、眠気はやってこず。…眠いはずなのに。


…夕暮れの教室に一人でいると、なんだかいろいろ考えてしまうな。夕日の色が…ユウマの髪を連想させる。私がユウマにしてあげなきゃいけないことを考えると、心が沈む。普段考えないようにしているだけに…こんな時は辛い。小さい頃の私、なんでこんな約束をしてしまったんだろうって、そう思わずにはいられないよ…。


最近じゃとんと姿を現さなくなったユウマ。力が弱まっているっていう話だから、力の温存のためかもしれない。だけど…正直ありがたかった。ユウマを見たら、ユウマと交わした約束が重く肩にのしかかるようで…。わかってる。約束は守る。…だけど正直重い。人…じゃないけど、それでも仲間を殺してしまうんだから。


『「私」にできるだろうか?』


『できるできないの問題じゃない。約束してしまったんだ。彼を解放してあげなきゃいけない。』


『でも「私」は彼が好きだ。仲間だと思ってる。かけがえのない仲間だと…』


『じゃあお前は彼をこの世にとどめておくつもりか?彼がそれを望まないのに?彼にとって、この世は地獄でしかないのに?』


『それでも生きていて欲しいと願うのは間違いなのか?』


『…彼がそれを望まない以上、「私」は約束を果たすべきだ。』


幾度となく繰り返された葛藤。頭はユウマの望む通り、彼を消すことをよしとしている。でも心がいつだって問いかけてくる。本当にそれでいいの?と。答えは…出ない。


一人だと無限ループに陥ってしまう。やるべきことはわかってるのに、心が追いつかない。


気分を変えよう。このまま落ちていても結局答えなんて出ないのは目に見えてるし。そう思ってバッグにしまっていた携帯を手に取った。


「あ…」


未読が何通も来ている。その一つずつを確認していく。


「…みんな…。」


それぞれ思い思いのメッセージを送ってくれていた。


『追試どうだった?勿論クリアだろ?☆』


『茜ちゃーん!夏休みの計画たてるよ♪補習セーフ?』


『自己採点付き合うわよ。』


『補習、勿論回避したんだろうな?』


『追試お疲れ様です。夏休みどこ行きます?何したいか教えてください。』


『追試パスしないと鬼教師たちがまたなんかやらかすだろうから気をつけろよ…!頑張れ!』


…暗くなってた心が、少し浮上する。うん…どうなったとしても、私は一人じゃない。皆がいてくれるんだから。…暗くなってばっかじゃだめだよね。何かいい方法が見つかるかもしれないんだし、希望は捨てない。捨てちゃいけない。


「…弱気になるのはまだ早い!!」


両の頬を引っぱたく。気合入れなきゃ。私がこんなザマじゃ皆に心配かける。そもそもシリアスは苦手な性分だもの。事が事なだけに、悩むのは仕方ないよ。人の命がかかってんだもん。だけど…こう、マイナスになってばっかりもいけないよね。うん。…そうだ!そうに違いない!!


いつもの調子を取り戻した私は皆に返信をしようと携帯に向かった…ところでモッチーが教室に戻ってきた。


ドキドキしながらモッチーを見るけれど、表情に変化は見られない。いつも通りのふにゃっとしたモッチーだ。


…結果は、どっち!?

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