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約束  作者: りっこ
第6章 気付かぬ想いに気付いた時
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雅史の優しさ

「いや…お前も苦労するなと思って。なんだ…あー…あれだ。利用できるものは全て利用しろ。変に罪悪感とか感じてる暇はないんだからな。」







追試を控えたこの身…スパルタ教師に囲まれることとなりました。


「お前は…アホなのか?いや、ここまでくるとアホ以前の問題だ…。」


雅史のイヤミが耳に響く。イヤミっていうより本音?…なお嫌だ。


英語は悠斗、化学はともちん、数学は雅史が教えてくれることになった。国語と歴史は暗記で頑張れって丸投げされたんだけど…不安だ。


とにかく今日は一番やばい数学のお勉強の日。…雅史さんのため息が耳に痛いです。


「なんっでこうなる?初歩の初歩だ。この公式を当てはめればいいだけじゃないか。」


…その公式がわかりません。公式のαとかに、問題文のどの数値をあてはめればいいのか…とかさ。ちんぷんかんぷんなんです。


「…………数をこなすしかないか。」


呆れ気味の雅史だけど、ちゃんと付き合ってくれる。…しっかりしなくちゃ。私のためにやってくれてるんだもん。数字見たら眠くなる…とか言ってる場合じゃないよね…。


「……お?こうか?これで…こうだ!!」


「…やっとか。そういうことだ。」


雅史が根気よく勉強をみてくれたおかげで、少しだけ公式の当てはめ方がわかってきた。よっし!なんとなく理解できた気がする!


「じゃあこっちの問題やってみるね!」


解けるとおもしろいものだな。いつもは考える前に睡魔に襲われてわけわかんないもんな。


「……ん?これは…違うよね?βってなんだ?これ何の話だ?」


「お前は…見せてみろ。」


「う、ごめん…。」


雅史は私から問題集を取り上げると、ルーズリーフにすらすらと数式を書き綴って行った。…一度も迷うことなく。


「………マジか。すごいね、雅史…。」


「当然だ。お前…授業中何を学んでる?」


「…返す言葉もありません…。」


こんな調子で雅史との勉強会が進んでいく。無駄口が一切なく、時間が過ぎるのがやたら遅い。


「……………。」


「………お前、寝てただろ。」


「っは!?いやいやいや、何を言ってるんですか!めっちゃ起きてますよ!?」


「完璧落ちてただろう。」


「…すいません。」


雅史がため息とともに眼鏡を外し、眉間を片手で押さえる。完全に呆れられちゃったかも…やばい。


「お前、今回の追試な…悠斗に感謝しろよ。」


「え?」


「追試交渉、悠斗だろう?」


「あ、うん。…そういや、なんでモッチーはすんなり追試OKしたんだろ…?」


「だから感謝しろって。持田の弱みを握ってたんだよ。」


雅史が不穏な言葉を口にして少なからず驚く。…弱みって。


「めっちゃ気になる…何それ?」


雅史はげんなりした表情で再び眼鏡をかけた。


「あれ、持田のキャラな…作り物なんだよ。」


「………え?」


「あの年で素であのキャラの方がおかしいだろう。計算だ。そしてまんまと成瀬を手玉にとっている。」


「………は?」


マジで目が覚めた。何何?人の恋路とか勝手にすればって思うけど、この話は面白すぎる!!


「あれ作ってるの!?すっご…まんまと騙された…。」


「騙される方が稀だろう。しかも成瀬以外にも男がいる。悠斗はある情報網からそれを掴んで、今回持田を強請ったんだ。」


強請るって…穏やかじゃないな。でも悠斗のおかげで私に夏休みがもらえるかもしれないんだよね…。悠斗に足向けて寝れない。


「すごいね…モッチー。悠斗もどこでそんな情報を…。」


「それは聞いてやるな。いろいろあるんだろう。」


眼鏡の奥の雅史の目が怪しく光った気がした。…気になるけど聞かないでおこう。うん。


「無駄口はここまでだ。集中しろ。」


「…はい、先生。」


今の話で眠気がどこかに吹っ飛んだ。今度はちゃんと眠気に打ち勝って勉強しよう。じゃないと、悠斗にも雅史にも申し訳が立たないもんね。


両手で頬を景気よく叩いていると、雅史から向けられる視線に気付く。


「?何?…あ、もう寝ない!大丈夫!!」


「いや…お前も苦労するなと思って。なんだ…あー…あれだ。利用できるものは全て利用しろ。変に罪悪感とか感じてる暇はないんだからな。」


「うん?おー…?ごめん、何の話だ?」


雅史の言わんとすることが理解できません。罪悪感?利用?あ、これ?追試対策で皆が教師になってくれること?


「勉強みてくれることに対しては本当にありがとうと思ってるよ。私に時間割いてくれてごめんって…」


「そうじゃなくてだな…あー…いい。とりあえずこの問題解け。」


ぐしゃぐしゃと髪をかいた雅史。…?何が言いたかったんだろう?そんな私の疑問は解決することなく、今は新しい問題に頭がいっぱいになるのでした。

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