追試対策。
「お前さ…先生に恵まれてること自覚した方がいいよ。」
遙とのデート…どうするかなー…とか考えてるうちに、あっという間に期末テストの時期です。はい。…もうっ!!なんだっていろんなこと考えなきゃいけない時にテスト!?ユウマのことは勿論未解決だし、遙のことだってはっきりさせなきゃいけない。私の頭は一つなんです。しかも頭悪い。一つのことを考えたら一つのことしか頭に残らないのです。
…御託を並べたものの、つまりはテスト勉強なんかしてないってことで…。
「白田さ~ん…わかってると思うけどぉ夏休み、補習。するしかないわね~。」
期末テスト、終わってからモッチーに呼び出された。そして言われた一言がこれだった。
テストが始まる前日になってようやく期末のことを思い出した私。…致し方ないと思います。
自分の非を認め、頷きかけた時。誰かが派手に職員室のドアを開けた。
ガラガラ…ピシャン!!
「先生方…ちょっと失礼しますよ☆」
…場違い。その言葉が脳裏に浮かんで萎んでいった。女性職員の醸し出す空気が、バレンタインの時校舎全体を覆った空気のようにピンクに染まったから。悠斗は職員室ですら掌握していたのか…。
「ああ、モッチー!茜の件だけどさ~…大目にみてもらえない?追試って形で☆」
なんて流し目炸裂の悠斗。…ほんっとにチャラいな。こんなのに騙されるのかな?大人だし…騙されるよりも悠斗まで怒られるんじゃないのか?
「だめよ~。だって全教科赤点なんだもの。さすがに目はつぶれないわ~。」
「マジ?うっそー…じゃあさ、交換条件でどう?」
悠斗がモッチーの耳元に口を寄せる。最初の方こそ余裕の表情で聞き耳を立てていたモッチーだけど、悠斗の話が終わりに近づくにつれて…その表情は強張っていった。
「…OK?」
「……………敵わないわ~。じゃあ夏休み一日目に追試をします。全教科期末の平均点以上をとること。それをパスできなければ、夏休み中補習ってことでいい?」
「さすがモッチー!話がわかるねー♪いいよ。じゃあそういうことで☆」
話が見えないまま、悠斗に引きずられるようにして職員室を後にした。
「ちょ…どういうこと?私補習でなくていいの?」
「それは追試の出来だな。茜がまた平均以下とるようなら夏休みはパー。」
「う…平均以上…。今回のテスト範囲の半分以上理解できてないんだけど…。」
実情を白状すると、悠斗はニッと不敵な笑いを見せた。
「お前さ…先生に恵まれてること自覚した方がいいよ。」
…ということで、追試までの残りの三日間で地獄の追試対策が始まったのでした。